戊

戊

「高度璃館殺人事件の関係者ですね」

「あぁ、そうだぜ。よろしくな」

「あなたの名前を教えて下さい」

「ウルティルゼンターローワンズワインハウス。皆、ワインって呼んでるぜ」

「職業は何ですか」

「まぁ、無職だな。基本、いろんなところをほっつき歩いてる」

「高度璃館を訪れた理由は何でしょうか」

「高度璃総裁に相談があるって呼ばれたんだよ。ただ、相談内容については、依頼人が死んでも喋らねぇぜ。トップシークレットってやつだな」

「事件発生の瞬間、どこにいらっしゃいましたか」

「俺は、屋上だな。星を見てた。暇だったし」

「それを証明することは可能ですか」

「どうだろうなぁ。たぶん、無理じゃねぇかな」

「事件について、どのように感じていますか」

「まぁ、なぁ。なんつうか。前触れもなく起きたことだからなぁ。しょうがねぇよ。こういうことはあるって」

「高度璃館では、過去にも同じような事件が発生していたと聞いています。その点についてはいかがでしょうか」

「あぁ、聞いてはいるけどよ。でも、それ自体、かなり怪しいだろ。別に過去にも起きたって証拠があるわけでもねぇのに」

「一部では高度璃館は呪われている等の噂もあります。その点についてはいかがでしょうか」

「呪いなんてねぇよ。今どき、そんなもの信じるバカいるのかよ」

「事件後、高度璃館にある高度璃籍という書物が消えていますが、何か御存知ですか」

「はっ、それマジかよ。おいおい、それは俺がもらう予定だったんだぜ。おいおいおいおいおい、うわぁ、そういうことかよ。やべぇな」

「犯人の目的について、どのようにお考えでしょうか」

「高度璃籍を奪うために決まってんだろ。あぁ、クソが」

「疑わしい人物がいらっしゃいましたら教えて下さい」

「あぁ、そうだな。樋津輪恭介とか、かな。でも、まぁ、ありえねぇか」

「理由をお願いいたします」

「樋津輪は死んだんだよ」

「高度璃会についてご存じですか」

「おっ、なるほど。知ってんのね。へぇ。お前やるなぁ、マジで」

「高度璃会においては、どの地位にいますか」

「俺は、今のところトップだな。まぁ、直ぐに入れ替わるような組織だけどよ」

「高度璃会存続のために多くの人が犠牲になったと聞いていますが、その点については如何でしょうか」

「さっき俺が言った、樋津輪ってやつがいただろ。そいつだよ、犠牲になったの」

「今回の事件と高度璃会の関係について、どのようなお考えをお持ちですか」

「さあな。でも、関係ねぇってことはないだろうな。なぁ、お前もそう思うだろ」

「高度璃会には、年に一度、殺人の予告状が来ていたとの情報があります。こちらは事実ですか」

「あぁ」

「今までに、その予告状通りに殺人が行われたことはありましたか」

「それが、樋津話だよ」

「高度璃会のメンバーの命を狙う者について心当たりはありますか」

「俺が知りてぇくらいだ」

「事件の解決が、結果として高度璃会を敵視する組織を逆なでする可能性があります。それでも、探偵である私に事件の解決を依頼しますか」

「あぁ、やってくれ」

「承知しました。それでは、よろしくお願いいたします」

「あぁ」

「最後に一つだけ、よろしいですか」

「おう、どうした」

「犯人を見つけ次第、どうしますか」

「ぶっ殺してやる」