丙
エリー.ファー
丙
「高度璃館殺人事件の関係者ですね」
「えぇ」
「あなたの名前を教えて下さい」
「教えることはできませんわ」
「職業は何ですか」
「それも、教えられませんわ」
「高度璃館を訪れた理由は何でしょうか」
「高度璃総裁に呼ばれたから」
「事件発生の瞬間、どこにいらっしゃいましたか」
「お手洗いに」
「それを証明することは可能ですか」
「いいえ。証明はできませんわ」
「事件について、どのように感じていますか」
「高度璃総裁は、事件が起きることを知っていたように思いますわ。最近は、身辺の整理もしていましたし、実際、幾つか相談もされましたし。私にできることは、悩みや愚痴、不安や心配事を聞いてあげることだけですけれど。何かしらのお役には立てていたと思っておりますわ」
「高度璃館では、過去にも同じような事件が発生していたと聞いています。その点についてはいかがでしょうか」
「初耳ですわ」
「一部では高度璃館は呪われている等の噂もあります。その点についてはいかがでしょうか」
「同じく、初耳ですわ」
「事件後、高度璃館にある高度璃籍という書物が消えていますが、何か御存知ですか」
「それは、その。かなり大きな問題になるんじゃないかしら。高度璃籍の内容は、政治家のスキャンダルですもの」
「犯人の目的について、どのようにお考えでしょうか」
「高度璃籍の話から考えるなら、盗むのが目的だったのかもしれませんわね」
「疑わしい人物がいらっしゃいましたら教えて下さい」
「料理人さん、かしら。今は、格闘家と仰っていましたけれど」
「理由をお願いいたします」
「トップシークレット」
「高度璃会についてご存じですか」
「あぁ。御存知でしたのね」
「高度璃会においては、どの地位にいますか」
「さあ、不透明な組織ですもの。なんとも言えませんわ」
「高度璃会存続のために多くの人が犠牲になったと聞いていますが、その点については如何でしょうか」
「高度璃総裁のお孫さんがお亡くなりになって、会は存続しましたけれど。あれが正しかったのかは、未だに分かりませんわ」
「今回の事件と高度璃会の関係について、どのようなお考えをお持ちですか」
「どうでしょうか。なんとも」
「高度璃会には、年に一度、殺人の予告状が来ていたとの情報があります。こちらは事実ですか」
「初耳ですわ」
「今までに、その予告状通りに殺人が行われたことはありましたか」
「分かりませんわ」
「高度璃会のメンバーの命を狙う者について心当たりはありますか」
「おそらく、高度璃会の内部の者だと思いますわ。勘ですけれど」
「事件の解決が、結果として高度璃会を敵視する組織を逆なでする可能性があります。それでも、探偵である私に事件の解決を依頼しますか」
「他の方に聞いて頂けますか」
「承知しました。それでは、よろしくお願いいたします」
「はい」
「最後に一つだけ、よろしいですか」
「えぇ、構いませんわ」
「高度璃総裁が亡くなることで、喜ぶ方について心当たりはありませんか」
「心当たりがありすぎて。その、難しいですわね。ただ、高度璃総裁が本当に、この国のために動いていたことは事実です。そして、そんな高度璃総裁を影ながら応援するために、高度璃会が生まれたのも、これもまた事実ですわ。高度璃総裁が、最後まで高度璃会の存在に気付いていなかったことは、不幸中の幸いと言えるかもしれませんわね」
丙 エリー.ファー @eri-far-
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