甲
エリー.ファー
甲
「高度璃館殺人事件の関係者ですね」
「はい」
「あなたの名前を教えて下さい」
「田出誠一郎と申します」
「職業は何ですか」
「音楽家です。ピアノを演奏しています」
「高度璃館を訪れた理由は何でしょうか」
「高度璃総裁の誕生日パーティということで、呼ばれていました。時間が余ったら演奏をしてほしいとの依頼も受けていました」
「事件発生の瞬間、どこにいらっしゃいましたか」
「書斎です。高度璃総裁に書斎で待っていてくれ、と言われていましたので」
「それを証明することは可能ですか」
「高度璃総裁の秘書の方と一緒にいましたので、証明はできます」
「事件について、どのように感じていますか」
「余りにも、その。悲しいというか。はい」
「高度璃館では、過去にも同じような事件が発生していたと聞いています。その点についてはいかがでしょうか」
「知りませんでした。すみません」
「一部では高度璃館は呪われている等の噂もあります。その点についてはいかがでしょうか」
「全く、知りませんでした。というか、私、その、そういう怖いの苦手なんです」
「事件後、高度璃館にある高度璃籍という書物が消えていますが、何か御存知ですか」
「あぁ、高度璃籍ですか。高度璃総裁が書いていたとされている本ですよね。確か、政界の裏側について、詳細に書いたとか、なんとか」
「犯人の目的について、どのようにお考えでしょうか」
「分かりません。犯人ではないので」
「疑わしい人物がいらっしゃいましたら教えて下さい」
「外部犯じゃないでしょうか」
「理由をお願いいたします」
「集まった人たちの中に、殺人を行えるような方がいるとは思えません」
「高度璃会についてご存じですか」
「はい。その、高度璃会についても御存知なんですね。あぁ、なるほど」
「あなたは高度璃会においては、どの地位にいますか」
「一番下です。キャリアが短いもので」
「高度璃会存続のために多くの人が犠牲になったと聞いていますが、その点については如何でしょうか」
「詳しいことは分かりません」
「今回の事件と高度璃会の関係について、どのようなお考えをお持ちですか」
「高度璃会を潰してしまえば、こんな凄惨な事件は起きなかったと思います」
「高度璃会には、年に一度、殺人の予告状が来ていたとの情報があります。こちらは事実ですか」
「はい、聞いたことはあります」
「今までに、その予告状通りに殺人が行われたことはありましたか」
「いえ、分かりません。そもそも、高度璃会のメンバーを全員、把握しているわけではないので」
「高度璃会のメンバーの命を狙う者について心当たりはありますか」
「分かりません。なんとも、言えません」
「事件の解決が、結果として高度璃会を敵視する組織を逆なでする可能性があります。それでも、探偵である私に事件の解決を依頼しますか」
「はい。覚悟はしています」
「承知しました。それでは、よろしくお願いいたします」
「はい、よろしくお願いいたします」
「最後に一つだけ、よろしいですか」
「はい、なんでしょうか」
「高度璃総裁は、非常にピアノの上手な方であったと聞いています。あなたの見立てでは、どうでしたか」
「非常に上手でした。お金を取れるレベルであったと思います。ただ、不思議なのは高度璃会を作る前はそこまで上手くなかった、という噂があることです。詳しいことはよく分からないのですが」
甲 エリー.ファー @eri-far-
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