第9話 この方
目が覚める鮮やかな朱、ヴァーミリオンの髪は、癖毛なのかふわふわと
ロゼは一度瞳を伏せたあと、
目の前の男、僅か19歳にしてメルドレール
一回目の人生では、フリードリヒとは比較的親しい仲であったような、気がする。そうでなければ、ロゼを庇い死すことなどないだろうから。
フリードリヒと視線がかち合う。アジュライト色とタンザナイト色が混じり合い、さらなる深みのある夜を生み出した。
「第六皇女殿下に
ユークリッドがそう言って頭を垂れる。ロゼもそれに続き、深々と頭を下げた。
「かしこまらなくていいと何度も言っているのに……。相変わらず真面目な性格ね」
アンナベルは、どこか困った様子で笑みをこぼした。それを見たロゼはようやくアンナベルに視線を向ける。
青色の髪と瞳と統一されたドレスは、まさしく「お姫様」であった。デコルテは控えめだが、どことなく色気を漂わせる。スカートは腰元からふわりと広がっていた。帝国一美しい女性と言われても大いに納得できる風貌は、数多くの令息方を
アクアグレイの目と視線が合わさった。
「ユークリッドの姉君にあたるドルトディチェ大公家のロゼ嬢、ですね?」
「はい。ロゼ・ヴィレメイン・リーネ・ドルトディチェと申します。第六皇女殿下にお会いできたこと、心より光栄に思います」
完璧に挨拶をして見せたロゼに、アンナベルは度肝を抜かれながらも、微笑みで返した。ロゼは微笑み返すことはしない。色味のない無表情でアンナベルを
「ロゼ嬢、お初にお目にかかります。フリードリヒ・ゲルト・エルレ・メルドレールと申します。以後、お見知り置きを」
フリードリヒは、胸に手をあて頭を下げた。腰に携えた剣の
「ロゼ・ヴィレメイン・リーネ・ドルトディチェと申します」
ロゼはそう言って、手袋に包まれた手の甲を差し出す。フリードリヒは、可愛らしさを感じさせる大きな目を瞬かせる。ロゼの意図に気がついたユークリッドが口を挟もうとするが、それよりも先にフリードリヒが
近くに寄ったフリードリヒから、甘い
「あら……。随分とお熱いわね?」
アンナベルは口元に手を当てて、ロゼとフリードリヒを交互に
ユークリッドはロゼとフリードリヒの間に入り、ロゼを背に庇った。
「失礼、メルドレール公爵」
ブラッドレッドの双眸がフリードリヒを静かに見下ろす。フリードリヒは、一滴とて血を飲まされていないのにも関わらず、錯乱してしまう錯覚を覚えたが、なんとか自我を保ち、立ち上がる。
「姉上。参りましょう」
ユークリッドはロゼの手を取る。エスコートとは無縁、半ば強引に歩き始めた。ロゼは彼の大きな背中を見つめたあと、フリードリヒに視線を向ける。フリードリヒは、呆気に取られた様子であった。その隣、アンナベルが
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