第11話 妹モノ

 未玖視点のお話


・・・・・・・・・・・



 ヤバいよ。ヤバいよ、ヤバい~


 おにぃのニオイを嗅ぎながら、素早く頭の中で計算してる。


『これは予想外。同じ学年の女子は全部、と思ってたのに、ちょー大物ばっかり残ってるじゃん』


 あらためて、おにぃの文字を目で追いながら、載ってる人達を思い浮かべてる。


『もろ、おにぃ好みの人ばっかりじゃん!』


 一人だけ、枠外の須藤キツネはともかく、高木さんと紺野さん、それに若葉会長の名前がある。他の学年を合わせても、トップクラスの美少女さんだ。


「ヤバッ。みんなキレイな上にデカいじゃん」


 男はみんなデカいのがスキだもんね。


 男子好みの胸部装甲の厚さが、私と比較になる程度に控えめなのは高木さんだけとかw


 紺野さんも若葉会長も、とてつもないモノをお持ちだというのは一年下の私達ですら知っているネタだ。


『それにしても、これだけになってるのに、してない女がいたとは…… やっぱりこの人達がライバルになっちゃうかなぁ』


 おにぃは知らないだろうけど、女子には女子のメンツがある。他の人がしてるのに、自分だけしてないって、すごくプレッシャーになるんだよね。


 だから、いつも、お互いに牽制し合ってる。


 みんながしていることをってことが、どれだけ大変なのか。ヘタをしたら自分がイジメのターゲットになり得るって知ってるんだよね。


「石田君へのウソ告」の話はウチの学年でも話題だから、少しはわかる。最初の十人くらいは、たぶん、サッカー部のトップカーストの陰謀。イジメだよね。だけど、後の方の人達は「私だけがしてないのはヤバい」ってことだけ。


 ふふふ


 おかげで、おにぃを慰めるためって言い訳で、お部屋に入り浸っても不審がられなくなったし、他の女に目がいかなくなって、大ラッキーだと思ってたのに……


「さすが大物よね。みんながしているのに動じなかったんだ。やっぱり四大美少女って言われるだけはあるのね」


 会長がそんなことをする人じゃないっていうのは知ってたけど、おにぃいとクラスが違うから、一応、良いとして……


 私は知ってる。


「おにぃの趣味は黒髪ロングの清楚系」


 ホントは乃々ちゃんののかなんてモロに好みだったし、鉄板の幼なじみ枠だ。いずれ潰すべき最大のライバルだって思ってたけど、たぶん、おにぃが勝手に自爆してくれたので助かった。しかも「変な女ののかから守る」って口実で、一緒に学校に行かれるようになったから私にとっては大ラッキー。おにぃのことが好きだし、おにぃも乃々ちゃんが好きってことがわかってたから、半分は諦めてたんだ。


 やったね!


 何があったのかはだいたい分かるけど、今さら謝ってきても「もう遅い」」だもん。ふふふ。これで、OK。アウトオブ眼中?


 紺野さんは、正直よくわからないけど、な~んか見覚えのある顔なんだよね。男の人って、何となく馴染み見覚えがあると好意を持ちやすいってどこかで読んだことがある。それに、どこかしらミステリアスで大人しい感じなのもおにぃ好みなのが心配。その上、実は美形で、黒髪がフワッと前に降りてるところなんて、おにぃの隠れた趣味にドンピシャ過ぎる。まるで、狙ってやってるみたいな感じすらしちゃうもん。


「おにぃがベッドのマットの間に隠してる薄い本にいっぱい出てくるから、間違いなく好みだもん。この子はヤバい、ぜったい、ヤバい」


 でも、転校してきてから間もないし、まだ接触がないみたいだから、今のところは出方次第かな。


 そして、合唱部長の高木さん。


 いかにも「頼りになる系の正統派美少女」だ。


「本棚の後ろの列に隠してあった18禁ゲームに出てくる、生徒会長タイプのしっかり美少女タイプだよね。こういう子も好みでしょ? おにぃは、オッパイが好きだけど微乳もイケる口なのはバレてるし」


 何よりも、高木さんは、たぶん、おにぃのことが好き。


 おにぃは気付いてないみたいだけど、合唱コンの時の近づき方はヤバかった。絶対に、狙ってるよね? もしも、おにぃが告白しちゃうと、ものすごい確率でOKしちゃうはずだ。マジでヤバい子。


 今回はおにぃ達の最後の合唱祭。年が明けてすぐだから、そろそろ練習が始まっちゃう。去年と違って、今のおにぃならパートリーダーは絶対引き受けないだろうから、そこがちょっと安心だけど、高木さんが動くとしたら、きっと、そこだよね。


 クリスマスに向けて、どうやって「絡み」を作らないようにするか、作戦を考えないと。去年は乃々ちゃんが勝手に牽制してくれてたから楽だったけど、今年は、そうも行かない。なんとかしなくちゃ。


 あれ?


 私をジッと見てる。


 ひょっとして、わたし、独り言が漏れてた?


「未玖」


 おにぃが目を見開いて見つめてる顔を近づけてきた。


 そのままキス? いーけどw 


 目、閉じた方が良い?♡


「なによ」


 あ、ダメ、やっぱり恥ずかしくて、つい、キツイ返しになっちゃう。そのまま押し倒してくれちゃって構わないんだよ♡


「最近、ベッドの下と本棚のがなくなっていたと思ったら、お前が捨ててるのか?」

「え? あ、テヘ、ペロ」

「いや、それでごまかされないからね!」

「大丈夫。机の引き出しを引っこ抜いた、その下にある分は触らないであげてるから」

「ええええ! あれだけは知られてないと思ったのに!」


 お兄ちゃんが、ガビーンしてる。か~わぃい。


「あれは捨ててないよ」


 だって、あれは「妹モノ」だもん。


 許してあげるよ♡





◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

作者よりお知らせ

第8話でも申し上げましたとおり

ウソ告とイジメシーンから、今回から徐々に反転していきます。

ちなみに、もうちょっとで明かされますが、妹ちゃんは血のつながりがありません。

定番ネタですよね。


なお、文中の「 」部分は独り言になっています。『  』部分は、頭の中でつぶいている感じの言葉です。地の文とちょっとだけニュアンスが違っています。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

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