#22 暴かれるマウンテンサイクル
中学時代、俺はとある分野に傾倒していた。
自分はいつかその分野で
所謂、黒歴史というやつだ。
「お、おおおお、おい・・・何故それを!?」
「机の上に置いてあった」
「なにぃぃぃ!そんなハズはない!!!隠していたハズだ!いや、それよりも何故勝手に見るのだ!?他人が勝手に触れては良い物ではないのだぞ!」
「友達、だから?」
ぐぅ
何とも便利な言葉だ・・・
友達と言えば何でも許されると思ってるかのような発言。
友達とはココまでプライベートに踏み込んで良いのか?
イヤ良くない。
「と、とにかく、速やかにそのノートを返して貰おうか」
「このグリモワール?」
ミヤビちゃんはそう言って、ノートを
そこには『青の魔導書(ブル・グリモワール)』と書かれていた。俺の字で。
「あばばばばば」
「これ、面白い。あんみつくんはやっぱり凡人とは違う」
「うぐぅ、や、やめてくれ。 これ以上俺の心を抉るのは・・・」
「続き、読みたい。ホグワーツ魔法学校に入学してから、どうなるの?」
そう、中学時代の俺が傾倒していた分野とは、魔法だ。(金曜ロードショーで視聴したハリポタの影響だな)
友達がいなくて中学校に自身の存在意義を見出せなかった当時の俺は、近々魔法の才能を開花させてホグワーツから入学招待状が届くと信じて疑わない極ありふれた中学1年生男子だった。
因みに青の魔導書が1冊目で、紅の魔導書、緑の魔導書、黄の魔導書、紫の魔導書と続き、高校からは白の英雄譚(サーガ)となり現在は黒の英雄譚で、サーガになってからは学校には持っていかないようにしている。
「まて、待つんだ。それは俺にとって超プライベート的歴史の産物であり、他人に見せるような物ではないのだ。君にだってそういった探られたくない過去の記憶が1つや2つはあるだろう? いくら友達とは言え、これだけは勘弁してくれないか」
「でも、気になる」
「そんな物を気にするでない!」
俺が強く拒絶の意思表示を示すと、ミヤビちゃんは唇を尖らせムスっとした表情になった。
なんなんだコレはいったい。
友達とはこんなにも厄介な者なのか?
普段は優しくて大人しいミヤビちゃんの我儘ぶりに困惑していると、部屋の扉が開き、母さんが顔を覗かせて「ミツオ、ちゃんと聞いたの?ミヤビちゃん、お昼食べてくの?」と聞いてきた。
そうだった。
俺の黒歴史の産物を突き付けられて動揺してしまい、母さんから言われていたことを忘れてた。
「どうしたの?二人で喧嘩でもしてたの?」
「いや、ちょっと・・・」
「あんみつくんのノート見たくて、お願いしてました」
「あ~やっぱりソレに気付いたのね?ちょー笑えるでしょ? 他のノートは机の一番下の引き出しの奥に入ってるからね」
「オイッ!!!」
慌てて
「ま、待ってくれ・・・それだけは・・・」
まだ全身に痛みが残る体で四つん這いになり、右手を伸ばして悲痛な声で訴える、俺。
「友達だから」ニヤリ
口元を緩め、勝者の笑みを浮かべる、ミヤビちゃん。
「もはやその言葉に正当性を感じないぞ・・・」
「で、ミヤビちゃんもお昼食べてくでいいの? 冷やし中華ね」
「頂きます」ぐふふ
絶望しながらも母さんとミヤビちゃんのやり取りを聞いていて、分かってしまった。
青のグリモワールを机の上に出していたのは、たぶん母さんだろう。
恐らく理由は、俺の黒歴史でミヤビちゃんを笑わせて俺に興味でも持ってもらおうとしたのだろうな・・・そんなにも俺に友達が出来たことが珍しくて、親としては舞い上がってしまうというのか・・・確かに俺自身も初めての友達が出来て、数日は浮かれていたが・・・
しかし、だからと言って実の親なのにやり口がエゲツないな!
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