九州大学文藝部のオリエンテーション 作:クラリオン
さて、時間も良いところですから、そろそろ二〇二三年度九大文藝部のオリエンテーションを始めようと思います。質問がある場合は途中でも構いません、適宜遠慮なく気軽に手を挙げてください。
まずは、九州大学へのご入学おめでとうございます。そして文藝部の新歓オリエンテーションへようこそ。我々はあなた方を心より歓迎します。私はオリエンテーションを担当させていただく者で、ペンネームはクラリオンと言います。
軽く自己紹介をすると、二〇一七年度入部、現在は化学専攻の修士二年生です。まあ特に覚える必要はありません。数多居る先輩の一人、くらいの認識で結構です。
はいどうぞ──担当している大した理由はありません。強いて言えば、まあ私のように院生の部員もいて、日々研究に励む傍らでも部活をしていることを示す、くらいでしょうか。
はい──いいえ、別に構わないのですが、私はこれでもそこそこ忙しい身です。直接会う機会と部誌でペンネームを見る機会どっちが多いか悩む程には。なのでまあ、本名を覚えてもらう必要が現時点では無いですね。存在そのものと、強いて言えば学年を知っているくらいで良いんじゃないでしょうか。知りたければ後で個人的にどうぞ。
次は、あなたですね──いいえ、別にペンネームを公開する必要はありません。私も積極的に喧伝しているわけではありません。今名乗っているのは私が入部以来、大体の部誌に寄稿していて、現役の後輩が大体既知であるから、です。勿論クラリオン以外のペンネームもいくつか持っていますし、其方は、まあ同期とか、部内での仕事の関係上仕方なく、を除いてあまり知られていないかと思います。私も、同時期在籍のペンネームの中の人を全て把握しているわけではありません。
さて、これから皆さんには我々文藝部がどのような活動を行っているのかについて説明しようかと思います。
ただ、実際のところ皆さんは、個人個人である程度文藝部について案内されていることと思います。なのでまあ、基本的には一度聞いたことがあるであろう説明を軽くしていくので、それに対して質問をしていく時間になります。砕けた言い方をすると、説明を問題が無い程度に端折りますので、気になったところで挙手とともに質問をお願いします。
説明会のタイプとしては私が一番苦手なタイプですが、先程の積極性を見る限りでは要らぬ心配でしょうか。
さて、皆さんが今手元にお持ちなのは新入生歓迎号、年度で最初に発行される部誌です。普段の部誌に比べ掲載される作品は少ない傾向にありますが、大凡どんなことをやっているかの一種の見本だと思ってくれて構いません。
部室に来たことのある方は御存知でしょうが、部誌に掲載される作品は様々です。個人的には公序良俗を考えて欲しいところではあるのですが、腹立たしいことに私の同期が大体のことはやらかしてくれているので先達としての私からは何も言えません。
はい、どうぞ──はい。短歌、俳句、詩、散文、随筆、ノンフィクション、評論、小説。何でも良いです。小説のジャンルも問いません。二次創作、ももちろん構いません。
ただ、注意すべきことが一つあります。現在我々は小説投稿サイトでの部誌の公開を行っています。これらの投稿サイトにおける二次創作の投稿は禁じられており、いくつか認可された作品を原作とする二次創作のみ可能です。
投稿サイトでの部誌の公開については確か何かしら区分を設けていたと思うのでその辺りは編集や部長と話し合った方が良いでしょう。
さて、文藝部における部誌の発行は、この新歓号を合せて年に五回です。締切がいつかは覚えていませんが、大体夏までに新入生号が出ます。この部誌から──もちろん希望者がいればの話ですが──あなた方のうち誰かの作品が載ることになるでしょう。夏なので締切は梅雨頃までです。
その次は学祭号です。そして冬に合せ初冬号──はい、はい、え、無くなった? ああ、確かに昨年度初冬号に作品を出した記憶は……ええと、つまり、次は、年度末の追い出し号、ですか。すみません、もう部誌は新歓、新入生、学祭、追い出しの年四回になったらしいです。これだから老人はいけませんね。ともあれ、これらに寄稿したい方へいくつかの注意点があります。
一つ、締切は厳守です。特に学祭号と追い出し号は行事と連動しています。もちろん編集側もそれを考えて余裕を持った設定をしていますが、部誌の作製において、寄稿という初期段階で猶予を使い切るのはあまり賢い選択ではないことは分かるでしょう。まあ、斯く言う私も数時間程度は誤差だと思っていますが、編集が先程から怖い目で此方を見ているので厳守でお願いします。
二つ目、作品を白紙で出すのは止めて下さい。書きかけで出すのも避けて下さい。校閲と編集がしんでしまいます。ワードファイルを日光に当て、水をやっても作品が生えてくることはありません。絶対に。確実に。
はい──いいえ。作品の寄稿は義務ではありません。確かに、文藝部において分かりやすく代表的な活動内容は執筆ですが、実のところ部活動としてできること、であると同時にしなくてはならないことというのは他にもあります。
部誌に寄稿する作品の提出締切が早いのは、印刷と製本はもちろんですが、その前に校閲と編集、組版を挟むからです。其方の業務に興味がある、関わりたい、という方でももちろん歓迎です。
──付け加えておきますが、私の同期には色んなタイプの人間が居ましたし、過去の先輩方もそうだったでしょう。部長と編集の二人だけで部会をした、という話もありますし、私の同期にも四年間作品を書かずに卒業していった人間は居ます。部室にも来て、合宿にも来て、飲み会にも来て、でも部誌関連の活動には触れていない、そんな部員も居ました。活動は任意です。部費を払っているならば誰も文句は言わないでしょう。
そちらは──ああ、はい。かつては初冬号というものがありました。何故やらなくなったのかの詳細を私は知りませんので、後で部長にでも聞いてください。まあ、私の入部前には初夏号もありましたし、時代の流れの一環、だと思っています。
はい──ああ、確かに。ではそちらも説明しましょう。部会というのは文字通り部の会合、会議です。次の部誌の表題決めや、会計からの報告、時期によっては学祭で何をやるかのような諸々の事項もあります。大体月に一回ですね。出来れば参加はしてほしいですが勿論任意です。
あまり時間は掛からないので、その後に色んな会が付属します。三題噺執筆会やただの執筆会、部誌の発行直後であれば合評会をやることもありました。
三題噺は、三つのお題を決め、それらのお題を用いた話を書くというものです。合評会は、一つの作品に対して参加者各々が意見や感想を言うものです。大体は部員の作品が対象になりますから、例えば質問があれば作者本人から回答を得られるでしょう。
はい──そうですね。我々文藝部は大体毎年喫茶をやることにしています。部誌以外に部員所有の古本や部室の古本、過去の学祭号や、飲み物、年度によっては軽食になる菓子も販売しています。部誌も飲み物も古本もそこそこ売れます。
他になにか質問は? では──そこのあなた。
部費。確かに重要ですね。初年度は無料です。二年目から年間四千円ですね。
はい──ええそうなります。もちろん一年目で何か合わないなと感じたら辞めても構いません。その場合は何も払わなくて結構です。
今入らずに、改めて後日また興味があったら? 中々珍しいタイプの人ですね? ですがもし現時点で入部手続きが完了していないならば、例えば二年生から入ったとすれば二年生の年度の部費は無料です。入部初年度無料なので。
さて、他には? はい、どうぞ。
──ええ、もちろん、個人でインターネット上の創作活動を行っても構いません。ただし、当然の話ではありますが、部誌への寄稿と作品を分けていただく必要があります。
部外での活動、ということで付け加えますが皆さんは文学フリーマーケットというものを御存知でしょうか?
──まあ、そうですね。文学作品の即売会で──コミケみたいなものだと考えてください。出品者自身が文学作品だと思うものが出品されます。漫画とか、写真集とか、そういったものもありますね。
OBで構成された部内のサークルが二つほど存在しています。彼らはかつて部員だった頃から文フリに出展しております。ええ、もし興味のある人が居れば挑戦してみると良いでしょう。質問があれば、現役の部員とOBとの交流目的で作られたチャットグループもありますから、そちらで聞くと答えてくれるかもしれません。
大体出尽くしましたかね。
それでは以上を持ちまして九州大学文藝部の新歓オリエンテーションを終了させていただきます。最後になりますが後輩たるあなた方のキャンパスライフが楽しいものであることを祈っています。
入部希望の方で入部手続きがお済みでない方は入り口付近に居る部長に声を掛け、手続きを済ませて下さい。それ以外の方は帰って頂いても結構ですし、他の部員に質問があるならば質問をして頂いても結構です。
以上で解散とします。お疲れ様でした。
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