アッシュのオシゴト

月夜野ルオ

第1話

「今日はよろしく、灰原プロデューサー」


 あの、先生……僕、なんで面接室にいるんですか……?


 ていうか……なんで、””面接官側””に座らされてるんですか……?


 すみません、誰でもいいから説明ください。


「あ、あの……僕、なんでここにいるんですか……?」


 本当に意味が分からないんですが。


 白い壁に囲まれた狭い面接室。


 無機質すぎてマジで怖い。


「さっき説明したよな?」


 先生が淡々と説明してくる。


「今から10人の候補者と面接して2人を選出する。Eスポーツ枠からの1名を加えて合計3人をデビューさせるプロジェクトだ」


「いきなり言われて納得できるわけないでしょ!!」


 突然メンション飛ばされて呼び出されて、ちょろっと説明されただけでここに連れてこられたのだ。まだ納得も何もできていない。


 先生は資料に向けていた目線をこちらに向けてくる。


「けど好きだろ? Vtuber」


「大好きです!!」


 脊髄反射だ。


 すぐに我に返る。


 だけど先生は静かに口角を上げた。


「じゃあ大丈夫だな」


「何がっ!?」


 先生、この状況楽しんでませんか!?


 と言ってやりたくなったが、先生は面接室の扉の向こうの人影に声をかけた。


「どうぞ」


 先生の低い声に応じて扉の向こうの人影はドアノブをひねった。


「し、失礼します!」


 明らかに強張った、いわゆるショタボ。


 その刹那、僕は急に視界が広くなった気がした。


 すごく特徴的な声だなぁ……Vtuber映えしそう。


 さっきまで脈打っていた心臓がだんだん落ち着いてくるのを感じる。


 ――――スイッチが入る、音がした。

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