ヒョウカ

@Khinchin

「あったのかもしれない話」

私の名前は井澄氷華、17歳。やりたいことがあるわけでも、勉強をして何かを為そうとするのでもなく、惰性で高校に通っている一般的な高校生である。

そんなぱっとしない私にも、趣味はある。それは、読書だ。実際に買うのももちろん、インターネットで読むのも大好きだ。だけれど、インターネットで読むときに困ったことがある。それは、作品の評価を気にしすぎてしまうことだ。

自分の好きな作品を読めばいいことはわかっているのだけれど、コメントで指摘された作品の欠点がどうしょうもなく気になってしまう。指摘された欠点を探そうとはしないのだけれど、その作品がいやなものに見えてきて、結局途中で読むのをやめてしまう。

これじゃあだめだ、と思ってもうコメントとかを見るのをやめようと思ったこともあるけれど、結局、その作品の自分ではない他人からの評価が気になって、コメントやらを見てしまう。自分の好きなものを本当に好きになれないというのは、自分が弱い人間、他人に流されやすい人間だということを目の前に吊り下げられたようだった。


そうして、苦悩の日々を送っていたときに、変化が訪れたんです!私は、道ばたであなたにご覧に入れている本を拾ったんですよ。この本は本当にすばらしくてですね、なんと読むだけで評価が気になる癖を直すことができるんですよ。いやはや、本当にすがすがしい気分ですよ!評価が気にならないというのは!











ある居酒屋で

「…………そういえば知ってるか。あの3-2組の子、退学した後、結局引きこもったんだ。時折あいつの親御さんを訪ねるんだが、もう諦めてるって感じだった。自分の娘だけれど、もう手遅れって感じだった。」


「登校中に、誘拐されて薬を飲まされたってのは本当のことだったのか。だから退学させられたんだな。なんだか、やりきれないな。」


「……。」


「こんな辛気くさい話はやめだやめ。ほかの話をしようぜ。」


事の細部など、あっという間に消え去り朽ちていく。残るのは、大枠だけだ。しかし、それもいずれ、風に流され、消えてゆく。

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