花火

川辺の草原くさはらに二人並んで

寝ころんだあの日

赤く照らされた空虚うつろな表情の君は

どこを見ていたのだろう



サヨナラも言わず

いなくなってしまった君は

何を思っていたのだろう




君が愛想笑いばかりするようになった

あの日

見上げた空には

数多の大輪が咲いていた

ときおり見せる無気力な表情は

何を表していたのだろう



いつの間にか

いなくなってしまった君に

何ができたのだろう




二人だけの時間を過ごしたあの日

話しかけても返ってくるのは

曖昧な相づちばかりで

投げかけた言葉は

轟音にかき消されてしまった



僕の言葉は

いなくなってしまった君に

はじめから届いていなかったのだろう




僕の想いは君のいない空白へと

どんどん流れ込んだ

空白がついに埋め尽くされたとき

君の姿が見えた気がした



君は次々と変わる色に

照らされながら

「ごめんね」

と疲れ切った表情で言う



僕はゆっくりと

君に近づき抱きしめた



夜空に浮かぶ白い筋が薄れてゆく

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