第11話 油断
「いや〜よかったなラルフ!これで3人揃って学園に入学できるな!」
「みんなで学園、嬉しい。」
スティーブンスとの面談を終えた俺は、宿屋へと戻っていた。
あの後、スティーブンスから転移魔法で送って帰ろうと持ちかけられたが、自分も転移魔法が使えるので結構だと伝えたところ大層驚かれた。
やはり、無属性魔法である転移魔法を使える者は相当限られているらしい。
話を聞いたところ、スティーブンスも相当な修行を経て、使えるようになったようだった。
そして宿屋に戻ってからは、ニアとケントからの質問の嵐だった。
やれ面談の内容はどうだったとか、何かされてないかとかな。
その中で、ケントから学園長はどんな人物だったかと聞かれたのだが、実はスティーブンスが学園長だったと伝えたところ、2人とも馬鹿みたいに声を上げて驚いていた。
なんというか、俺はそんな2人の15歳の青年らしい純粋なリアクションが、とてつもなくかわいらしく感じた。
決して変な意味ではないぞ?
今現在の俺は、前世と合わせると精神年齢が51歳にもなってしまっている。
そんな年齢にもなると、やはり心の純粋さという部分では15歳の癖にだいぶ枯れてしまっているのだ。
だから2人には友情と同時に、親心のような気持ちも湧いている。
2人を守りたいという強い気持ちは、こういった背景からも影響を受けているのかもな。
「俺も無事に2人と一緒に入学できそうで嬉しいよ」
とりあえずは、アンリの使者が来るまで村でゆっくりさせてもらおう。
こうして俺たちの入学試験は、無事に全員合格という形で幕を閉じた。
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「ん〜、やっぱり自分のベットが一番だな」
俺たちは入学試験を終えて、ソルバ村へと帰還していた。
帰還して早々、両親に俺とニアの合格を報告したところ、まるで自分のことのように喜んでくれた。
ちなみにニアが首席で合格した事も報告したところ、ソルバ村の宝だと両親は号泣していた。
案の定その日の夜は、家族で俺たちの合格を祝ってお祭り騒ぎで大変だった。
それから一週間、俺は久々に村のゆったりとした空気を満喫していたところだ。
しかし一週間ものんびりしていると、何だかソワソワしてきてしまっている自分もいる。
そういえば、そろそろアンリからの使いが来てもおかしくないんだが……
と思っていると
「ラルフー!王都から来たっていう方がいらしているのだけれど、何か知ってるかしら?」
扉越しに母が俺に呼びかけてきた。
つくづく自分の勘の鋭さが怖くなるな。
「あぁ!今行くよ!」
俺は部屋の扉を開け、玄関へと向かう。
「僕がラルフです」
「突然申し訳ありません。私はグランハイム王国、第二王女アンリ様の遣いの者です。第二王子との謁見の準備が整いましたので、ラルフ様のお迎えにあがりました」
おそらく王国の兵士であろう人物が、右手を額にあてた見事な敬礼を披露しながら俺の家に来た理由を説明する。
「遠いところありがとうございます。すぐに準備します」
俺は兵士にそう伝えて、家族に説明をしたあとすぐに準備を整えた。
「それでは、こちらの馬車にお乗りください」
俺は軽く返事をして、兵士に言われるがまま馬車へと乗り込む。
「それでは出発いたします」
すると、兵士の合図と共に馬車が動き出した。
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馬車に乗ってから5.6時間ほど経過した。
ようやく馬車特有の尻の痛みにも少し慣れてきた頃だ。
これからまた6日かけて王都へ向かう訳だが、馬車に乗った直後、俺は大変な事に気づいてしまったのだ。
「ハッキリ言ってもう転移魔法で王都まで一瞬で行けるんだよな……」
ただ、彼はアンリからの使者だ。
無下にすることはできない。
「はぁ……」
これから6日間、知らない人間との2人旅はキツすぎる……
ニアとケントと王都へ向かってた時は、楽しかったんだがなぁ……
そんな事を考えていたら、自然とため息が出てしまった。
気づけば外はもう真っ暗だ。
そろそろ野営の準備に取り掛かる頃だろうか。
「兵士さん、今日はもうそろそろ休んだ方がいいのでは?」
「……」
「兵士さん……?」
何故か遣いの兵士からの返答がない。
すると突然、兵士は先ほどまで走っていた国道を逸れて森の中へと馬車を進ませだした。
「こんな森の中で野営するのは危険ですよ!?兵士さん!?」
馬車のスピードがどんどんと増していく。
揺れがとても強くなり、とても立っていられない。
何なんだこいつは……
俺をどこへ連れていく気だ?
まさかとは思うが、俺を殺す気か……?
いやいや、彼はアンリの使者だぞ?
そんな訳な……
いや、待てよ?
そもそもこの兵士は、本当にアンリの使者なのか?
普通は事前に迎えに上がる日時などを、手紙で伝えたりするのではないか?
俺は数秒考えた後、自分がまんまと騙された事を悟った。
完全に油断していた……
まぁ、敵と分かったのであれば容赦はしない。
だが、一体誰が何のために俺をハメたんだ?
そんな事を考えていたら、目的地に到着したのか馬車がゆるやかに停止した。
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