第15話 新生活の始まり
一回目のアタックから一週間後。
2回目のアタックのハイドラの巣穴はRTAの目標をクリアできた。
一回目は全く見てもらえないという不安があった。
一回目の成功でそれはある程度解消されたが、二回目は失敗できない、という別のプレッシャーがある。
ここで凡ミスをやらかすと期待を裏切ってしまう形になるので視聴者が減る。
成功すれば成功の波に乗れる。分水嶺と言ってもいい。
こんな感じで俺はプレッシャーを感じていたが、アストンたちはその辺は全然分かってなかったらしい。
とはいえ、一回目で自信がついたのと要領がつかめたのか、3人ともいい動きだったのは良かった。
変に意識しすぎて固くなる、なんてことにならなくて良かったな。
さらに一週間後。
3回目の配信の
目標にした28階層30分は際どいところだったが、どうにかクリア。3回目のRTA配信も上手くいった。
そして3回目で報奨金は500,000越えを果たした。
なんでも3回目ではこれもギルド新記録らしい。
どうもギルドが集計する報奨金が視聴者数っぽいな。
あと、各酒場からの特別な応援金みたいなのも貰える。これはまあ
そして、星空の天幕亭からはかなりの額がもらえた。廃課金してくれてる奴でもいるんだろうか
◆
三回目のアタックも上手く行って結構な額がもらえた。
とりえあず固定の視聴者もついて懐が潤ってしばらくは稼ぎの心配はしなくていいっぽい。
そんなわけで、前のぼろ宿から星空の天幕亭の女将さんが紹介してくれた店に移った。
アストンと俺の部屋とマリーチカとオードリーの部屋の2部屋だ。
「凄いね、こんな広い部屋に住んでいいのかな?」
ドアを開けたところでマリーチカが聞いてくる。
「いいんじゃないか?」
今まで住んでいた宿の部屋の倍以上の広々とした部屋で天井もそれなりに高い。
大きく取った広い窓からは明るい太陽の光が差し込んできてた。
白い壁にはタペストリーが飾られている。机や椅子、クローゼット、それに鏡台とかもある。
部屋の隅には2台のベッドがあって、白いシーツと布団が敷かれていた。
太い柱に木で貼られた床もしっかりしたつくりで、ギシギシいったりもしない。前の部屋はマジで床が抜けそうで怖かったが。
掃除も行き届いていて快適だ。前の部屋は埃っぽかったからな。
それにどうやらこの世界は生活魔法的な魔法のアイテムがあって、水道とかコンロとかトイレとか風呂のインフラもある程度は整備されている。
部屋の隅には洗面台みたいなのがあった。
流石に風呂とトイレは部屋にはないが、なんと大浴場もついている。
日本の三ツ星ホテル並みとは言わないが、ちょっとしたビジネスホテル並みと言ってもいい。
思い返すとミッドガルドの世界観設定でもこの辺の設備はあるということになってたな。そういえば。
あの時は何とも思わなかったが、こんなことになるとこの辺の設定は有難い。
ここへの引っ越しは俺の希望だ。
3週間もいるとなんとなくなじんだ、と言うか馴染まざるを得なかったが……やはり元日本で生活してた人間とすると生活インフラが整っているほうがいいに決まっている。
特に水回りの清潔さは快適さに直結すると思う。
「じゃあボクたちも荷物置いてくるね」
「また後で」
そう言ってオードリーとマリーチカが隣の部屋へのドアを開けて向こうの部屋に行った。
ドアの向こうから何か楽し気な話し声が聞こえてくる。
今まではプライバシーもあったもんじゃない環境だったしな。
「いいのかな、こんな贅沢して」
「まあ稼いだから良いとしようや。それにきちっと休める拠点は大事だぜ」
アストンはなんとなく緊張した感じで椅子に腰かけている。
まあ昨日まで暮らしていた宿とは全然環境が違うからな。
ただ生活環境は大事だ。
ゲームのRTAで動かすのは指先だけではあったが、それでも疲れている時は操作ミスが多発したし、普段ならまずやらない凡ミスをやったりもする。
コンディション管理は結果に直結する。断じて軽視してはいけない。
ベッドに寝転がると洗い立てのシーツが肌に触れた。
もう硬いベッドもわらのにおいがする布団には戻りたくないぞ
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