第4話 見知らぬ奴らの因縁
ダンジョンアタックと言うか、配信が終わった。
画面の中で今まで戦っていたパーティが挨拶している。
よく見ると画面の端にタイムまで出ていた。1時間28分15秒。結構短く感じたな。
最終的には15階層の中ボス、クリスタルゴーレムを倒したところで彼らは撤退のスクロールを使った。
黒水晶の迷宮は45階層でまだ先は長いが、最高難度のSSランクだけあって難しい。15階層まで行けるだけで大したもんだとは思う。
それとルートどりを見た感じ、最速ルートを行っているという感じではなく、意図的に戦闘が多いルートを選んでいたな。
そういうエンターテイメントなんだろうな。
「いいもの見たぜ。15階層なんてな」
「すごかったな。あの12階層のドラゴンゾンビとの戦闘が熱かった」
「分かってないね、9階層のセイレーンが一番きわどかったよ。矢が当たらなかったら崩れてたかもよ」
まわりのギャラリーがビールのジョッキを片手に感想を交し合う。
この辺もスポーツと同じだな。しかし満席ってわけではないが……凄い熱気だった。
良く見ると天井からつり下がっているフラッグの紋章はさっきのパーティのものだ。
応援グッズ的なものなのか。
「アトリさん、どうでした?」
「いや、面白かった……」
やっていることはゲーム実況にかなり近いんだが、生身の人間がやってるとなるとかなり緊張感がある。
それと家のPCで観戦してるのとは違って周りに人が居ると盛り上がりが違うな。
eスポーツとかを観客席で見てる感じだ。
ありがとう、といいかけたところで。
「おお、アストンじゃないか」
横から不意に声が掛かった。
いかにもいい奴なアストンがちょっと顔をしかめる。マリーチカとオードリーが嫌そうに声の方を見た。
そこに立っていたのは、アストンたちと同じくらいの年の男4人組だった。
◆
真ん中にいるリーダーっぽいのは金属鎧を着ている。見た感じ、
金色の短い髪に今一つ似合ってない口ひげ。がっしりした体で背が高く威圧感がある。
そして装備が豪華だ。レア度の高い装備をつけている。
その後ろには
歳は全員アストンより少し上くらいだな。
「相変わらずしけたものを食べているなぁ。この店にはお似合いかもしれないが」
テーブルの上の皿を見ながらその
「ところでどうだ?アストン。一つくらいはダンジョンアタックはしたのか?」
「いや……入ってない」
アストンが嫌そうに答える。
「ほう、そうなのか。俺はもう5回目だよ。時間枠もいいし、視聴者も付いてくれてな、俺達の前途は洋洋だ。お前とは違ってな」
その騎士風の男が厭味ったらしい口調で言う。
「ズルいよ!だって、あんたたち……ギルドからも宣伝されてるし、いい時間を貰ってるじゃない!それってお父さんの力でしょ」
不意にマリーチカが怒ったように言った。
その騎士風の男が小ばかにしたように首を振る。
「相変わらず世間知らずなお嬢ちゃんだな。まあそういうところも可愛いがね。
いいか。俺は優秀でしかも将来有望と評価されている。だからこそ、良い時間を貰えているのだ」
「良いアタックを見せれば評価されるさ。そう、俺達のように」
「俺達だって最初は苦労したんだぜ」
パーティのメンバーが口々に言うが。
配信をどの時間にするかは大事だ。当たり前だが深夜とか真昼間に配信しても見ては貰いにくい。
いい時間に視聴者を集められるのは圧倒的に有利だ。
良い物を見せれば評価される、というのは正しいように見えるが、そんな風に上手く行けば苦労はない。
それは身に染みて分かっている。
「で、いいアタックは出来そうかね?」
「いやいや、噂によるとカリュエストールの滝壺で練習中に相変わらずなことをしていたと聞いたぞ」
「そう、お人よしを発揮していき倒れを助けたらしいな。金を払って練習してるのにすぐに出るとは、まったく余裕があってうらやましいことだな」
男たちが口々に言葉を交わして笑う。
「そんなだからアレックスにも逃げられるんだぞ、なあ」
「ええ、もうこいつのお人よしに付き合うのはうんざりでしたよ。ミハイルさんのおかげでアタッカーデビューも出来ましたし」
「まあそれ以上言うな。当事者がそこにいるようだぞ」
そう言って、ミハイルが俺の方を見た。
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