余談26 文系卒なのに大学院に行くと……

 この国はね、本当に……「昭和」で止まってるんですよ。よその国はね徴兵を1年終えて海外旅行に1年ぐらい行ってそこから大学を6年ぐらいかけていったん就職して数年後にさらに大学院に3年くらいかけて通って修士号を取ると幹部候補採用だし教養がない奴は幹部候補採用お断りって世界なんですよ。アメリカと日本と韓国だけ違うんですけど(リーマンショック前まではアメリカもそうだったが最近のアメリカは反知性主義が横行している)。


 そんな世界でも例外中の例外に属する日本。普通の国は大学院に行くと文系でも幹部候補です。ですが日本の場合……。


高確率で就活で爆死。がり勉君と同じ扱い。


 もっと下手すると大学院は甘くないので11月に行われる修士論文中間審査(公開審査ですので公開処刑になります)に落ちて24歳では卒業できなくて25歳になって就活新卒年齢を逃し就活自体がゲームオーバーになります。平気でこの世界は修士4年での卒業がいるからね。日本企業という世界は文系院卒は学部卒と同等扱いなので25歳に行くと就活上限年齢に引っかかって人生がゲームオーバーになるんです。あれ?その割には短期離職とか第二新卒だらけですけどね。本当、変な国だろ?


 ちなみにホワイトカラーサラリーマンを1年~3年くらいやってもよその会社でも全く使い物になんかならないよ。この国はどこまで職業に幻想持ってるんですかね?だったら文系でも24~25歳の修士卒を取ったらどうですか?よその国のように。傷物大卒よりも変に心が歪んでないだけ修士新卒は相当マシな人材に見えると私は思うのですが。もしそれでも社会人としての常識がねーとか言うのなら修士専用のインターンをやったらどうなんですかね? 貴方の会社が25歳付近の第二新卒を採る理由って何??? 第二新卒はほぼダウングレード就職になるけど。


 なお君が院生になると大学教授陣はいきなり「本気」を出すしお客様扱いからいきなり徒弟関係になるしパワハラが当たり前の世界になります。今時修士で大学講師や短大講師になってる奴なんていねえよボケが。教授陣が優しい顔を見せてたのは大学4年までは君はお客様だったからにすぎません。表の顔と裏の顔があるわけ。


 なので文系修士進学には何のメリットもないので就活に失敗した場合……ほとんどの人は「計画留年」をするんです。つまり大学5年となって留年を食らったことにした方がまだマシなのです。1留年ならまだどっかのブラック企業に拾ってくれるかもしれないから。下手に修士に行くとブラック企業ほどコンプ炸裂で「来るな!」ってなるんで。本当、変な国だろ?


 そうなんだよ。音大の項目でも紹介したようにこの国は教養コンプ、学問コンプ、芸術コンプの世界なわけ。文化的オムニボアと言って高学歴だろうと文化所属枠は低学歴に水準を強制的に落とすという妬みの国なんです。日本はブルデューが言う「文化資本」が無いという珍しい国なんです。コンプと妬みの塊です。だからクイズゲームの世界で終わる大学入試までしかこの国は評価されない。それは「教養」じゃないんでね。理系修士は新開発商品研究のために「仕方なく」君を採用するけどね。でも最近は理系の研究職ですら怪しくて企業は突如中央研究所を閉鎖したり突然研究職の君を営業職に左遷したりする(なお理系の場合でも博士はもろに差別して新卒市場から追い出す)。だから理系の技術者・研究者って日本企業に見切りをつけて韓国企業や中国企業に転職してるのにねえw 技術流出ってのは日本企業がアホだから起きてる事なんです。ということは文系採用の世界はもっとアホの世界ですからお察しください。だからいまだにこの国はFAXが現役の衰退国なんです。


 どこまでもバカの国、日本です。文系院卒を「ハズレスキル」とか思ってるわけ。


 この国の文系の学業に関してはもう昭和30年代水準で止まってて文系で大学院に行くという事は「大学講師の道を選んだ」とみなされて民間企業は修士2年の君を「就職の意思なし」とみなして落とすんですよ。最近では公務員試験でもね。


 フランスなんていまや同期の41%(2022年)が大学院修士に行くんですよ? そういうのを「リスキリング」って言うんですけど。ちなみにもう欧州諸国の大学院なんて文系専攻でもITを駆使するから企業側も「文系の院卒は使えねえなあ」にはならないんですよ。ちゃんと職業人としても活躍できるわけ。まあ欧州・オーストラリア・カナダとかってそうやって人生で何度も学校に身を置いて国全体の失業率を下げているという部分もあるんですけどね。その代わり最先端の技術を文系卒でも何度も修得できる。だから日本みたいに「失われた30年」なんてあほな国にならないのはそういう事なんです。リスキリングという言葉の意味は「もう一回スキルを習得する」って意味です。


 そうなんです。ここでも日本は「リトライ」とか「再チャレンジ」を許さない国なのです。


 ただし教職を目指す方は修士を出ると専修教員免許状と言って最高級の免許状になりますが……何度も言う通り学校という場所は「脳筋」に支配されていてもう滅茶苦茶です。教職採用ですら院卒教師に逆差別します。ただ修士課程で専修幼稚園教諭免許状を取って勤務5年を経過するともしかしたら大学講師の応募枠に応募できるかも。その代わり「院卒逆差別」で幼稚園そのものに就職出来ないかもしれないけどね。保育園は超絶に人手不足だから保育士職なら採用されるかも。だからねらい目は認定こども園だね。幼保一体型教育施設なんで。

 文系修士卒で有利になるのは僧侶や神主や牧師や神父ぐらいです。聖職者は神学理論とか修得しないと大変なことになるからね(プロテスタントの場合は宗派にもよりますけど学部卒だと牧師資格が取れないぐらいです)。あとは心理学ぐらいかなあ。でも修士で臨床心理士という資格を取るんだけど臨床心理士職は非常勤採用が基本だからワーキングプア―まっしぐらです。本当、この国はアホの国だろ?


 まあだからこの国中卒、高卒、短大卒、文系院卒が進路として選べない。ますます学部卒に一本化されるという狂気の国で多様性が失われているんだよ。専門も最近は潰れてるしね。生き残った専門学校も「専門職大学」と言って4大にどんどんに改組してるしね。


 なので例えば文系の学部が大東亜帝国卒で修士をMARCH卒にしても修士論文は2年ストレートでは通らない可能性大だし仮に2年で修論が通ってもこの国の企業は「修士差別」があるのでほとんどの人は大学院入試でリベンジしないのです。しかも「学歴ロンダリング」とか言ってズルした扱いになります。


 中学・高校と違って大学というのは研究する場で研究の面白さに目覚めて大学で知性を開花する奴がいる。理系の場合は内部進学で評価してそのまま学校推薦で就職という人生大逆転ルートなんだけど文系はそういう事をしてくれないしそもそも日本の文系の教授陣ってのはIT機器は扱えねえわ、プログラムは組めないわでいまだに「紙と鉛筆」の世界の上に教授陣が査読論文実績ゼロが当たり前の世界という世界の高等教育の中でもド底辺なわけだよ(つまり、文系の大半の教授陣は査読なしの紀要論文と紀要論文を寄せ集めた単著図書しか実績がない。したがって学術指導能力もない)。よその国では褒められる人は日本だと奇人変人扱い。文系の場合「あいつ、大学で勉強してるぜ、きもーい!」とかそういう世界になる。

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