余談8 美大という道を選んだ君へ

 音大と違って美大ならまだ偏差値45~50付近の学校もあるし2教科+実技試験だ。これなら大東亜帝国行くよりもカッコが付くぞ!


 しかし親はこの判断に大激怒。それを振り切って美大に行きます。なんといっても君は中高で美術の成績がほぼ5(10段階なら9か10しか取ったことが無い)だったからです。


答え:就活で爆死or就活そのものをしない & 20~30年後は母校が持たないかも?


 音大よりはまだ就職状況がいいと言っても所詮就職率は半分。しかも就職がいい学科は建築学科などの実学系なんだ。


 そうなんだ。建築って「アート」なんだよ。その建築学科分を抜いてみよう。音大と変わらない。よって親が何で大反対したのかよくわかる。下手なFランよりも就職が絶望的にない。そして例によって就職の面接官が……。


 「君、4年間芸術と称して遊んできたんでしょ?」


 これだよ。最近東京藝大の練習用ピアノを撤去するくらいに芸術に理解の無い国。この国の国民が腐ってるのは耳だけじゃない。目もだ。


 そもそも彫刻・油絵・絵画などに経済需要があるか?よく考えてみい?


 昔は美術というのは宗教勢力がパトロンだったんだ。近代は宗教勢力から大企業にパトロンが替わった。特に文明開化した日本は西洋の芸術に追いつき・追い越せという感じだったんだ(じゃないと西洋の列強国から野蛮人扱いされるからね)。でもね、大正に入ると日本は列強国になったから「西洋芸術? 要らないや」となったし関東大震災で震災恐慌が起きて芸術支援は打ち切られる。さらに昭和に入ると世界恐慌・昭和恐慌が発生して企業はそれどころじゃなくて企業も芸術に対してないも同然の扱いにして……戦時中に不要不急事業は打ち切られ芸術家たちは戦場に送られた。戦後は戦争への反省という点から細々と芸術支援されて行くが……バブル崩壊以降は芸術に好意的なメセナ事業もほとんど支援を止めてしまったんだ。よって平成以降に芸術の道を進むと特に悲惨。


 答え:この国の世間が芸術に理解を示してくれたのは大正の初期まで


 親が必死に美大行の人生を止めようとしたのは特に男で美大に行くと君の人生が終わってしまうからだ。美術教師に仮になっても教職はブラック。以下省略。


 美大はスパルタ式の音大と違って極めてフリーダム。昔の和光大のような本当の自由・アングラな世界に入れる。発達障碍者にとっては天国のような世界だ。本当に美大生活というのは大学生活の充実に関しては保障する。


 しかし、そこまで。アートに興味も感心もない日本企業は君たちに冷たい。なんせプロダクトデザインという実業美術にすら冷たいのだ。日本製品ってデザインが「ダサイ」ことで有名なのに。


 そして余りの学生生活の自由さに……この狂ってる日本社会に疑問を覚える。


 「なんだ、この狂った社会は?」


 本当そう思う。私もそう思う。君は賢い。賢すぎるんだ。そういう芸術系インテリを徹底的に潰しにかかってくるのが日本という社会だと思え。愚民じゃない奴は潰しに来る。覚悟はいいか?


 なお美大の演劇・舞踏の道に進むと高確率で「ピーターパン」だ。永久に精神が少年になってしまうと思え。


 情報デザイン? でもそんなのは普通のWEB技術者で十分だしねえ……。この国はITデザインもゴミである。だから君の価値に気が付かない。PG・SEさえ育成出来ればいいと思ってる。本当この国はゴミだね。ただし情報デザイン系でかつ一部の学生のみゲーム企業に行ける。キャラクターデザイン・コンピューターデザインという奴だ。ブラックで体壊すが。


 ここで一句


 現代日本は 美術を捨てた 社会だと思え


 美術も「趣味」の世界でとどめておいた方がいい。


 ※2023年4月20日追記:なんと日本の最高峰の芸大、東京藝大は2023年に電気代も賄えずにとうとう「電気代チャリティーコンサート」を実施しました。東京藝大ですよ? 東大よりも入るの難しい大学ですよ? そんな大学に日本という国はこんな仕打ちをしてるのです。だから日本の美大に未来があるわけありません。東京藝大はデッサン(実技)入試中に彫刻棟で天窓ガラスが割れて受験生が描いてたデッサン用紙も切ってしまったなんて事件も2019年に発生していることから……本当に芸術というものに理解の無い冷たい国、あるいは「芸術なんて所詮金持ちの道楽」だと思っているとしか言いようがありません。美大に行くのはこの国では自殺行為です。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る