第30話

王都から帰還した俺たちは、とりあえずセラととくのいる家の裏の山へ向かった。しかし、急に尋ねるべきじゃなかった。

何があったのか、そこには裸で寝転がっているセラと、セラの体のあちこちに紫色の怪しい液体で紋章のようなものを書いているとくの姿があった。


「すいません。我は今、セラが風魔法をうまく使えるように我の一族に伝わっていたとされている儀式をやっていたところです。」

「あー、えっと、お取込み中なら一旦俺たちは帰るかその辺に隠れてるけど…」

「け、決してわいせつなことをしているわけじゃないんだ!さっきも言った通り、これはただの儀式で…」

「師匠、また口調変わった」


今更言われてみればだけど、確かにとくってたまに口調変わるな。


「とりあえず、終わり次第声をかけてくれ」

「お、おう」



それから10分後くらいだっただろうか。「もういいですよ」ととくから声がかかった。


「レント、さっきセラの裸見たでしょ?えっち。師匠以外はダメなんだから」


恥ずかしそうに、そして少し拗ねたような感じでセラは俺に言った。アリスに誤解させない為にこれ以上その話に触れないでほしい。俺は思った。


「とく、今日はお前に用事があって来た」

「我にですか?もしかして、最近になって魔物の動き方が変わってきたことの原因に関してですか?」

「まあ、多分それも関係有るとは思うけど。魔王軍幹部が5体復活したことについてだ」

「封印が解けた、ということですね。完全に殺された2体は復活しなかったとは思いますけど」

「それはそうだ。炎獄のサタン、迅雷のベルフェゴール、波濤はとうのレヴィアタン、蟲毒のベルゼブブ、聖魔のルシファーが復活した。そのうちの1体、迅雷のベルフェゴールは既に討伐しました」

「そうか。犠牲者は」

「今のところ報告無しです」

「ベルフェゴールを殺す為に使った戦力、戦略はどうですか?時間はどれくらいかかりましたか?」

「俺とアリスの2人だけで、数分で倒せたよ。アイツ、体が金属でできてたから俺たちが熔かしてやったよ」

「ま、まさかそのようなことになるとは…。我も、一度でいいので魔王軍幹部の1人と戦ってみたいです」

「それで、今日ここに来た本題に入るんだが。とくは何か魔王軍の幹部について知っているか?」

「それなら、我の同胞の住む山がかつて炎獄のサタンによって焼け野原にされた時に見たことをお話しします。

我はその日、丁度その山にいました。夜になって火炎精霊ボーマのような何者かが山に入ってきて、体から出てる炎が触れていないのも関わらず周囲を広範囲で焼き尽くしていった。ソイツを山から追い出そうと向かった時、そこいたのがサタンだった。

どんな魔法を使っても動じず、奴が口から放った火炎弾は火山が噴火した時のように大爆発してあっという間に山は火の海になった。


その事があってから、我はいつか魔王軍の幹部を1人でもいいから討伐したいと思ってきました。ここまで早く封印から目覚めるのは想定外だったので不謹慎ですが少し嬉しくもあります」

「…え?ここまで早く目覚めるのは想定外だった?つまり、あれっていつか封印が解ける前提で封印してあったってことか?」

「いや、人間の生半可な封印ではいずれ封印が解けるのはおかしくない話ですから」

「それで、もしもサタンと戦うことができるなら戦いたいか?」

「もちろんです。同胞の恨みは我が払ってやりますよ」


その時、急に雨が降り始めた。


「とく、セラ。一旦俺の家に移動してから話の続きにしないか?」



こうして、俺たちはセリオスの書斎に集まった。


「そういえば、その燃やされた山に住んでたっていう同胞は…」


俺がとくに質問をしようとすると、床にいきなり小さな魔法陣が展開されて小さく王様が投影された。


「国王様、何かございいましたか?」

「王都郊外にサタンが出現した。今すぐに来てもらいたいがよろしいかね?」

「はい。すぐに向かいますので少しだけ時間を稼いでいてください」


俺たちはすぐに態勢を整えた。とくは、誰がどう見てもやる気満々だった。


「さて、ついに夢が叶う時です。あの時やられた分、こっちもやり返してやりますか!」

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