【1200PV突破!!】転生先で炎王になりました~身を焦がす恋の炎~

クラプト(Corrupt)/松浜神ヰ/ハ

第1話

日本、某日の東京某所。


「それでは、次のニュースです。昨日、東京都■■区にて、6時頃に1軒の住宅で火災が発生しました。その住宅に住んでいた米倉さん一家に命の別状はありませんが、米倉さんの長女を助けに住宅へ入った下田煉しもだれんさん、16歳が命を落としました。また、警視庁の発表では住宅は全焼し、煉さんの遺体は発見されなかったとのことです」


夜空が薄暗くなってきた午後6時。そこでは炎が紅く燃え盛っていて、温度はおよそ人間の耐えられるようなものではなかった。

そこには、1人の少年と少女がいた。


「煉さん!煉さんも早く逃げて!」

「まだ、まだ印鑑と通帳がない。それがないと困るのは愛梨沙ありさ、お前と家族だろ。俺がいなくたってお金があれば未来に繋げられるだろ?」

「でも、私はお金なんかよりも煉さんの方が大切なの!命はお金で買えないの!」

「ほら、愛梨沙も逃げろ!俺はお前が大切だ」

「もし煉さんが死んじゃうようなことがあったら、私も一緒に死ぬ!」

「そんなこと言うな。ほら、印鑑と通帳だ。これで俺がいなくても困らないだろ、きっと」

「何…、それ。本当に死んじゃうみたいなこと言わないでよ!もう出口はすぐそこなんだから」


すると、上から崩れた瓦礫が降ってきた。


「愛梨沙、いままでありがとう。そしてごめん。俺はここまでだ!」


俺は愛梨沙を突き飛ばして家の外に追い出した。俺が最後に感じたのは、熱く燃える重い瓦礫、その崩れる音、そして、愛梨沙が俺の名前を叫ぶ悲痛なその声だった。



どれくらいの時間が経つだろう。俺の名前…?を呼ぶ声が聞こえてくる。


「レント、レント!大丈夫か!しっかりしろ」


目を開けると、紅い髪のおっさん(俺の父さんよりは若いけど)と銀髪の綺麗な女性がそこにはいた。


「…あなたたち、誰ですか?」


そう言っただけなのに、男の人は悔しそうに俯き、女性は顔を両手で覆ってすすり泣きを始めた。

俺、そんな酷いこと言ったか?それと、なんか声高くないか?俺はもっと、ザ・主人公みたいな声をしていたはずだが…。声帯でも壊したか?


「もう、俺たちのレントは戻ってこないのか…」


なんだ、俺の話じゃない。それにしても、随分とリアルな夢だな。VRMMORPGのデータの中にでも入ったのか?


「レント、自分が誰か分かるか?」

「…俺?俺は、下田煉。高校2年生で、確かさっき愛梨沙を…」

「こ、混乱しているんだな。おんぶしてやるから、少し寝て落ち着くんだぞ」


そう言っておっさんは俺を軽々と持ち上げた。このおっさん、随分大きいな。俺でも身長は176センチあるから、このおっさんはきっと3メートル以上はあるはずだ。



やっぱりここはVRMMORPGの世界みたいだ。見たことのない生物やケモ耳、冒険者らしき人々もいた。まさか最新の医療はVRMMORPGで死者の脳を保存するものだったとは…。日本は常に国民の知らないところで進化してるんだな。


しばらくおっさんに背負われたまま移動していると、森の中に豪邸と呼ぶには程遠いかもしれないがいい感じの屋敷が現れた。


「さて、お昼寝の時間だな」


おいおい。俺は確かに休日は夜にゲームして昼間寝るが、今日はゲームすらしてない。あと、これが医療用のVRMMORPGなら微妙な赤ちゃんプレイはやめてもらおうか。


「それにしても、もうレントも5歳か。時間の流れっていうのは早いな」

「そうね。そろそろ冒険者学校の入学試験の時期ね」


…は?俺が5歳?冗談はやめてくれ。俺は確か…死んだんだ。それで、その後の記憶がない。じゃあ、これってまさか…。異世界転生的なヤツ!?


「お父様、俺が記憶喪失って本当ですか!?」

「あぁ…。どうやら本当に記憶喪失のようだ。しかも人格まで変わるとは…」

「もしかして、俺がこの人格になった影響でそれまでの記憶がなくなったってこと!?」

「クソ!これから色々叩き込み直してたら試験に間に合わないぞ!どうすれば、どうすれば…」

「あの…。言葉は理解できるので、とりあえず文字の読み書きを教えてくれませんか」

「り、理解できているのか…。よし、新しい人格になろうとレントはレントだ。俺が1から教え直してやろう」

「はい。お願いします」


それからの過程で、俺はこの世界の色々なことを学べた。でも、まだ知らないこともたくさんある。


「お父様、何でこの家は辺境伯様の家でもないのに豪華なんですか?」

「それは、俺が元勇者だからだ!」

「へぇー…え!?元勇者様!?」


「こら、セリオス。レントにウソを教えてはいけません」

「すまん、レント。元勇者様だったのは俺じゃなくてレイカの方だ」

「え!?お母様が勇者様なんですか!?」

「はい。でも、あんまり勇者扱いされるのが嫌だったからパーティーリーダーだったセリオスに勇者の振りをしてもらっているのよ」

「そうなんですか。すごいです。俺もいつか立派な冒険者になってお父様やお母様のようになってみたいです!」

「そうか。なら、学校でも頑張るのよ」



今日は冒険者学校の入学試験だ。まずは、個人のステータスを計測して数値化するみたいだが…。

俺の番が来た。


「レント・アルグリア。前へ」

「はい」

「ここに手を当てて待っていなさい」


そう言われ、そこにあった石盤の上の紋章に手を当てた。それから数十秒が経過した頃だろう。検査員が1枚の紙を持ってきた。

項目は魔力、剣技、体術、魔法、物理耐性、魔法耐性、素早さ、体力値がある。

俺の場合は魔力と剣技と魔法と魔法耐性と素早さが高い。正直な話、物理耐性が低いのは惜しい話だ。

それと、たまにこの時点でスキルや魔法が既に発生している人が毎年のように数人いるらしい。俺の場合、お母様が勇者だし何かのスキルが発生してるでしょ。


そして、俺は期待しながらスキルと魔法の欄を見た。魔法の欄には何もなかったものの、スキルの欄には【炎王】と記されていた。

【炎王】?炎系の魔法に特化できるやつか。つまり、このスキルの影響で魔法と魔法耐性の数値が高かったのか。



俺は【炎王】について報告する為にワクワクしながら試験から帰路についた。ここまでワクワクしたのは去年の修学旅行の時以来だろうか。

ああ、たまには愛梨沙に会いたいな…。でも、きっとどこかの次元でまだ生きてるはず。俺は守り抜いたんだ、親友として、彼氏として。


家に入ると、玄関には深紅の髪を揺らす2つ上の従妹兼姉のティア・アルグリアがいた。


「ただいまー」

「おっかえり~!お邪魔してるよ」

「また来たんですか、ティア義姉様おねえさま

「それで、レントくんはスキルとか魔法って何か発動してた?」

「義姉様が知ってるかどうかは知らないですけど、一応スキルは発動していました」

「え!?どのスキル?」

「えっと…、【炎王】っていうスキルです」

「…え?じょ、冗談だよね?」

「冗談じゃないけど、何かあった?」

「え?本当だよね?その紙見せて」

「うん、いいけど…」

「ほ、本当に【炎王】が発動してる…」

「そ、そんなに凄いことでしたか?」

「凄いことどころじゃないわよ!【炎王】は人間には発動しないはずよ」

「…え?も、もうちょっと詳しく」

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