第15話 〜充実した異世界生活〜

 そして家族が集まる日を迎える。

 各々が宿屋ガイヤに集合した。初めてここに来た時よりも全員明らかに身なりが変わっていた。


 哲治は立派な冒険者で,腰に双剣を携えて,強者の雰囲気を纏っていた。

 舞に関しては明らかに浮いてる綺麗で美しい格好だった。

 あやと悠介は街にいる子供と比べたら遥かに綺麗な姿をしていた。

 食事の量も質も変わっていった。

 「それでは頂きます」

 「「「頂きます」」」

 普段と一緒で近況を報告している。


 「あやが頼んでいた,シャーキーズのボス倒しといたぞ。でもまたボスだって確認が取れてないから確定ではないがな」

 「え!? 本当に? ありがとうお父さん!」


 「私は,貴族の人達と交流が増えてきたから,あや達に仕事を振れると思うわよ」

 「お母さんそうなの? お願いするわね!」


 「ガイヤのご飯ってやっぱ美味しいなぁ〜」

 悠介が頬張りながらさらにおかわりをしていた。


 「あやお店の方はどうなんだ?」

 「順調そのものよ! 商品もこれから増やしていくけど,化粧品やシャンプーなどのこの世界にはない商品を取り揃えるつもり」

 「食材も新しいものを作ったりするつもりで,大きくしていこうと思ってる」


 「なるほどな! あやなら出来るさ! まあ無茶だけはするなよ!」

 「うん分かってるありがとう」


 「悠介! あやの事頼んだぞ。もし何かあれば,お前が守ってやれ!」

 「ほぉがった!!」 

 モリウスが作った美味しい食事を食べおると,各々の居住へと戻った。


 「じゃーな! また来週な」

 「また〜」

 「「またね!!」」


 時が少し経過した。

 

 哲治は今日もギルドに居た。違うのはギルドマスターの部屋に居ることだ。ランベルクに呼ばれて部屋のソファに座っている。

 「ランベルクさんどうしたんですか??」

 「王宮からお前宛に感謝状が届いてな! シャーキーズのボスの討伐と魔神の討伐の功績が認められて,お前はさらにクラスが一個上がる事が決定した。王宮からのお達しだよ。お前は今日からブラッククラスだ」


 「そうなんですか……」

 「なんだ? 嬉しくないのか?? もっと嬉しがると思ったのに!」


 「王宮からっていうのが……俺に直接依頼とか嫌ですよ? 王宮の命令だからとか言って強制参加の依頼とかは無しでお願いしますよ?」


 「あ! ブラックはそういった依頼はある……」

 「街に危険が迫った時はブラックランクは街を守ってもらう役目がある。逃げる事は出来ないって規制はあるけど,他は普通の冒険者と変わらないさ!」


 「本当ですか〜??」

 「ああ! 本当だよ!」

 「なら良いんですけどね……それで他には用はなんですか? ないなら行かせてもらうかと」


 「哲治お前はモンスターの討伐は絶対にしないのか??」

 「そうですね。したくはないですね!」

 「そうか……出来るならお前に手伝ってもらいたいモンスター討伐があったりするんだが,やはり無理そうか」


 「ええ。単独のソロだと難しいと思いますし,それに俺はパーティーとやらで上手く立ち回れませんから!」

 「まあそうだと思ってからいいんだけどさ。一応聞いとこうと思ってな」

 「では俺は下で依頼でも受けてきます」


 哲治はいつものようにララに見繕ってもらい依頼を受ける。

 ギルドに居る冒険者達は哲治を人喰いだと言う。最初は馬鹿にしているような所ははあったが,ブラックランクの哲治を笑う者はいない。むしろ通り名のようなものになっていた。 


 そしてその通り名はアルベート王国だけに留まらず,外にも広まっていた。安易な理由で悪い事をする奴らは減った。街の近くで盗賊などを行うやっかいな奴らも減っていった。哲治が居るだけで,街の治安に一役買っていた。


 舞はいつの間にか貴族の中で有名人になりつつあった。一つは社交界に出た事で貴族との繋がりが出来たこと。ドリアン公爵とミケランド伯爵と仲良くしている事で,貴族の中で知名度が上がっていった。


 またミケランド伯爵と極一部の貴族の暗殺の依頼の仲介をしている事で,その貴族達から重宝されていた。なので,貴族からのちょっかいなどをされる事もなかった。ダリアは社交界では有名な夫人でその夫人と仲が良い舞は,その他の夫人からも一目置かれる存在となっていた。


 舞は貴族の中で,着実にそして確実に存在感と発言力を強めていった。


 雑貨屋トマトは凄い急成長をみせていた。あやが作る新しい商品と経営戦略とイメージ戦略を使う事で,圧倒的な売上を叩き出していた。


 トマトではあらゆる新しい商品を扱っていった。石鹸を筆頭に,シャンプーやリンス。食器を洗う洗剤。ハンドクリーム,ボディークリーム。新しい調味料などを販売した。新しい料理の考案などでも爆発的な人気を得た。


 女性をターゲットにした,いや! 主婦層をターゲットにした商品を数多く販売し,またたく間に店の評判は噂が噂を呼び連日大盛況だった。


 店の外の庭には簡易的なカフェを作り,そこでは店で販売しているもので作った料理と,お菓子,そして飲み物を提供する場所を作った。

 買い物ついでに休憩をする場所として人気が出た。新しい商品を扱う店として有名になったトマトは貴族の中でも噂になり,貴族が出入りしカフェでお茶を楽しむほどだった。


 「これで治療が完了しました」

 「おおお! ありがとうございます!」


 「レオナルド! 身体が私じゃないみたい。本当に軽くなったわ」

 「お母さん良かったよ!!」

 

 レオナルドとアンジー,カトリーヌは泣いていた。


 「リストさんありがとうございました」

 「いえいえ!」

 あやはリストに感謝の言葉を述べ頭を下げた。


 「リスト様ありがとうございました。あやもありがとう!」

 「レオナルドさんにはウチらもお世話になってますから」

 「リストさんこれは今回の治療への心付けです。受け取って下さい」

 「あやさんありがとうございます」


 「では私はこれで失礼させて頂きます。皆様に神の御加護を」

 リストはレオナルドの家を出ていく。


 「あや……今回の事は本当にありがとう!」

 「いいですって」

 「でも……神官の治療なんて高いだろ??」

 「安くはないですよね。レオナルドさんが今後もウチの店の代表として働いてくれれば治療費は安い買い物ですよ」


 「ああ。頑張って返すさ!」

 「私も! 私も頑張って働く」


 「アンジーは……もう来なくていいよ。料理番は新しい人を雇った」

 「え!? なんで!? 私じゃ駄目なの!?」


 「いや十分だよ。でもアンジーは学校へ行ったほうがいい」

 「レオナルドさんそうでしょ!?」

 

 「そう……だな。あやの言うとおりだ。アンジーは学校へ行きなさい」

 「でも店のアルや他の子供達だって働いてるよ?」


 「アルやウチらは特別なんだ。親も居なければ,居場所もない子供だから! 働かないと生活が出来ないんだ。でもアンジーはレオナルドさんが働いてくれてる。将来の為に学校に行って色々学んだほうがいい」


 「それにアル達もそのうち学校に行かせるつもりだから。今はまだ無理だけど,もう少し余裕が出来たら学校に行かせる。トマトをより発展させる為には勉強してもらわないとウチが困るからね」


 「そうなの?? わかった。じゃあ私学校へ行くよ! それで勉強出来るよになったらパパのお手伝いをする」 

 「それがきっといいわ」

 「レオナルドさん。じゃあウチはそろそろ行くわね!」


 「あや待て!!」

 「どうしたんです?」

 「一つ聞いてみたかったんだが,あやと悠介は一体何者なんだ?」

 「何者とは?」


 「アンジーより年下のあやが数々の新しい事を生み出したり,悠介は大人相手でも簡単にやっつけちまう。普通じゃない! なんなんだ??」


 「ウチらも正直分からないですよ! だけど一つ言えることは,ウチはこの世界で一番頭が良い。悠介はこの世界の子供の中できっと一番強いと思う。それだけはレオナルドさんに言えると思うわ」


 「ハハハ! それを聞いて信じさせちまう事が最も恐ろしい所だよ二人の」

 「褒め言葉として受け取っておきます! それではウチはそろそろ行きます」

 あやは店へと戻った。


 父と母,子供達。三種三様の生き方を異世界で楽しんでいた。

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