猟奇的な犯罪者家族の異世界渡航
yuraaaaaaa
第1話 〜犯罪者家族の異世界渡航〜
ここに一つの家族が住んでいた。
「おはようございます」
「「おはようございます」」
近所の人に朝から爽やかな挨拶を交わすのは家族の大黒柱の
「あら! 皆さんお揃いでおはようございます」
「おはようございます! 佐藤さんも今ゴミ出しですか?」
たった今ゴミ出しで挨拶をしたのが母の
舞は超がつくほどの美人で近所では有名だった。美人なのに,周りからの評判は良く,一切嫌味を感じない完璧に近い女性だった。
「お母さんいってきま〜す!!」
「いってきます」
「いってらっしゃい」
家族には双子の子供が居た。二卵性双生児で一人は男でもう一人は女の子だった。
二人は今年で中学二年生になる。男の子の方の名前は
悠介はイケメンで元気で人懐っこい性格からか,近所のお母様方から可愛がられて,よくおやつなどをご馳走になっている。
もう一人のあやの方は,家族の中では唯一大人しい性格だと思われていて,あまり周りと接点を持たないが,家から聞こえているピアノの音やヴァイオリンの音が近所の人々の耳の刺激と安らぎを与えていて,将来はピアニストかヴァイオリニストになるわねともっぱらの噂だった。
傍から見たら完璧に近い仲睦まじい家族だが,この家族には秘密がある。
それは,全員全く血がつながっていない赤の他人だという事。
そして全員が凶悪な犯罪者だという事だ。
父親の哲治は快楽殺人者で土曜日はファミレス行こうか? というような感覚で人を殺している。何故捕まっていないかと言うと,完璧な犯罪をしている事と,怪しいと思われるような経歴もなければ評価もないからだろう。
母親舞は詐欺師で幾多の男を騙しお金をむしり取ってきた悪女である。自分の美貌が最大の武器だと理解している彼女は若い時しか出来ないと自覚しているがゆえに,数々の男性を魅了しお金を奪っている女性だった。
悠介は近年最も残虐だと言われた小学生五人をバラバラに殺した事件があった。バラバラになった部分をバラバラに組み替えてくっつけてマネキンのように並べられていた事件あった。何を隠そう犯人が悠介なのだ。
最後にあやはというと,あやは超天才のギフテッドだった。IQは180を超えている。プログラミングに長けていて,あやは様々な企業をハッキングして奪ったデータをライバル企業や裏組織に高値で売りさばいていた。有名な裏サイトの運営者でもあった。
全員がそれぞれ凶悪な犯罪者で血も繋がっていない,全員偽名で何故か同じ屋根の下で暮らしている。家族としてのルールは一つだけ。金曜日の夜は全員で食事をすること。これだけはルールとしてある。
今日は金曜日で全員が夜の食卓のテーブルに着く。食事は父親の哲治が全て作っている。
皆が席に座ったので哲治が感謝を込めて,
「いただきます」
「「「いただきます」」」
すると突然テーブルの下から目を瞑りたくなるほどの光が差した。
魔法陣のようなものがテーブルの下に出現している。全員が魔法陣に吸い込まれていく。
全員の姿,形が消えた……
家族皆が目を覚ました。
「あれ? ここはどこかしら??」
舞が一番最初に口を開いた。
全員が辺りを見渡した。中央に噴水が見える。地面は石畳で敷き詰められている場所で,辺りには花壇や木々などがあり,人が座るベンチもあったりと,憩いの場のような場所に家族は居た。
周りの家や風景だけ見ると中世ヨーロッパのような造りをしている。通り行く人達が家族全員の事を不思議な目で見ている。格好が明らかに場違いだからだ。
よく見ると,人間じゃない生き物も通りかかる。ゲームなどで見たことがあるような風貌をした人や特徴的な人。爬虫類の二足歩行の生物も歩いている。
「ここはそもそも地球じゃないのか?
父である哲治が発言した。
「とにかく訳がわからないな。あやはどう思う??」
「ウチも何が何やら!! 手分けして情報を集めない? 三時間後にまたここに集合という事でどう? 情報集めをしましょ」
「そうねぇ〜それがいいかもしれないわね」
母の舞が答える。
「じゃあお父さんとお母さん,ぼくとあやで別れて行こうっか」
「わかった。じゃあそれでいこう。三時間後にここにまた集合で」
哲治の一言で皆がそれぞれ分かれた。
三時間後,再び集まった。全員がこの国の服装に変わっていた。
「どうった? 何か情報は得られた?」
哲治が皆に問う。
「お父さん一つわかったのはここは日本でもなければ地球ですらないという事」
あやが発言する。
「やっぱりそうなのかしら?」
母の舞が答える。
「でもとりあえずは話は通じたぜ! それと冒険者ギルドって所に行くのがいいみたいって事はわかったよ」
悠介が
「皆もやっぱりそういう風に聞いたか?? とりあえず,冒険者ギルドやらへ向かうか」
「そうね」
「「うん」」
家族の意見が一致し,冒険者ギルドと呼ばれる場所へと向かう。
街を歩く家族達。知らない世界だから辺りを見渡してしまう。
冒険者ギルドに向かう途中途中の道では屋台や出店が並んでおり,賑わっている。日本でいうと祭りみたいだった。沢山の人々,人とは思えない人も多いが,沢山の人で賑わっている。
道を真っ直ぐに進んだ突き当りに大きな建物が見えてきた。
「冒険者ギルドってのはここか??」
「ええ,多分ここだと思うわ」
「ウチも聞いた場所だとここだよ」
「お父さん,まあとりあえず入れば分かるんじゃない?」
「まあそうだな! 入るか!」
哲治を先頭に西部劇に出てきそうなウェスタンドアを開けて中へと入る。
ギルドの中は天井が高くかなり広い場所だった。あちこちにはテーブルと椅子が並べられて屈強そうな男の人や杖を持った魔女のような見た目の女性や街のあちこちで見た人間ではない生物も一緒になって座っていた。
皆騒ぎながら食事やお酒を嗜んでいた。
「いらっしゃいませ〜!! 食事の方はテーブにどうぞ! 冒険者の受付やご依頼などの方は奥のカウンターへどうぞ!」
明るいウェイトレスに言われたとおりに奥の方へと向かう家族。
テーブルに座っている彼ら彼女達は,家族の方を見ている。子供を連れているからなのか? ただ珍しいという感じなのかは分からないが,注目を浴びている。
哲治達はそんな事も気にもしないでカウンターへと進んだ。
「いらっしゃいまぜ〜! 冒険者ギルドファースト・ライトへようこそ! どういったご用件でしょうか??」
「え!? あ〜そうだな……」
哲治が困惑した表情を浮かべている。すると後ろからあやが出てきて話し始めた。
「お姉さん! ウチ将来冒険者になりたくて! でもお父さんとお母さんはまだ早いって言われて……でもウチも弟も諦めきれなくて。そしたらお父さんが雰囲気と話しだけ聞き行くのはどうだ? って事になって,色々とお姉さんから話しを聞けたらと思うんですが,大丈夫ですか?」
「あら? そうなんですか?」
「ええ! まあ……後は俺達自身もせっかくですからお話を聞かせてもらえないかと」
「なるほど! そんな事を思ってくれてる市民の人なんて初めて来ましたよ。市民の皆さんに理解してもらうのも一つですから。では私から説明させていただきますね」
受付のお姉さんの話によると,ここはアルベート王国という。冒険者ギルドとは国や街,町や個人から受け付けた依頼を紹介し,仕事を斡旋してくれる場所だという。
簡単に言えば,日雇い労働に仕事を斡旋してくれるような場所だという事だ。
この世界は街の外に出ると,モンスターが出現するという。中には凶悪なモンスターも存在して命も落とす事も多々あるという話しだった。モンスターを倒したり駆除したりするのも冒険者の仕事の一つだという。他には荷車の護衛や薬草などの採取など,街の外に行かなければ出来ない仕事を依頼される事も多いそうだ。様々な仕事や依頼を全て請け負っているのが冒険者ギルドファースト・ライトのようだ。
冒険者はモンスターを倒し,倒したモンスターの素材などを換金する事で生計を立てている冒険者が多いみたいだった。換金も冒険ギルドが請け負っている。盗賊や野党,もしくは裏の組織や犯罪者など懸賞金が懸けられる場合があり,そういった人達を捕まえたり,殲滅したりすることでもお金がもらえたりするようだ。
冒険者として成功すれば,富も名声も手に入り,爵位までもらえる事もあるそうだ。
有名な冒険者は街にドラゴンが襲ってきて,撃退したことで爵位をもらい,貴族の仲間入りを果たした冒険者も存在している。
命を懸けた仕事も存在するという事だ。
黙って皆聞いていたが,父親がいきなり目をランランとさせ始めた。
「お姉さん!? 質問いいですか?」
「どうそ!! 私の名前はララって言います。よろしくお願いします」
「ララさん盗賊とか野党とか人間を殺しても罪に問われないんですか?」
「え? 問われる訳ないじゃないですか!! 殺してほしいって依頼ですから。たまに生きて捕らえてほしいって事もありますけど,殺しても大丈夫ですし,懸賞金も出ます」
「なるほど! それは嬉しい事ですね」
ララの話を聞いて目を輝かしていたのが,父親の哲治と悠介だった。
冒険者として登録出来るのは十八歳からのようで,悠介とあやにはまだ登録出来ない事を知った。
「ですので,まだ登録は出来ません! 登録が出来るまで冒険者として様々な知識や鍛錬をする事を勧めます」
「なるほど,お姉さんありがとうごございます」
あやは丁寧にお姉さんにお辞儀をした。
「この世界では魔法というものが存在します。しかしこの能力を持つのは人間だとかなり稀で運が良いと適正があります。魔法を使うほとんどはエルフという種族で,エルフは生まれながらにほぼ全員が魔法を使う事が出来ます。皆さんももしかしたら,魔法を使う事が出来るかもしれません。こちらの宝玉に触れてみてみてください」
全員一人ずつ言われた宝玉に触れてみた。しかし何か反応という反応は見られなかった。
「残念ですが,誰も魔法の適正を持った人はいなかったみたいですね。人間で魔法の適正を持つ人は本当に稀ですから残念がる事はないですよ」
「お姉さん俺が冒険者として登録します!」
「え!?」
ララは目を見開き,驚いた表情を浮かべている。
「登録料として3万ギメルかかりますが大丈夫ですか?」
すると家族全員どこからともなく袋を取り出した。その中にはお金が入っていた。
「これで足りますか??」
「ええ! これで足りますよ。ではこちらの装置に少しの血を流し込んでください」
哲治は言われた装置に血を垂らす。すると中からカードのようなものが出てきた。
「こちらが冒険カードになります。あなた自身の名前と現在のランクが書かれていると思います。書かれたランクもしくはランク以下の依頼しか受ける事は出来ません。ランクをあげる事で,より難しい依頼や高報酬の依頼を受ける事が出来るので,頑張ってください」
「ランクはブロンズ→シルバー→ゴールド→プラチナ→ブラック→レジェンドという順番で上がって行きます。今は最低のブロンズだと思いますが,まずはシルバーに上がる事を目標に頑張ってみてください」
「なるほど,なるほど! わかりましたありがとうございます。じゃあ早速なんですが,ブロンズでも受けられる盗賊退治などの人間を相手にする依頼はありますか?」
「え!? ある事はありますが……いきなり初心者の人に勧める事は出来ません」
「何故ですか??」
「ランク不問という依頼なんですが,ゴールドのパーティーメンバーで挑んで失敗に終わった盗賊団のアジトの殲滅という依頼なんで,たった今登録したしかも一人の人に勧める事は出来ません」
「俺は大丈夫ですから,その依頼受けます」
「それは無理です! そんな死地に送り込むようなものは出来ません」
「な〜んか揉めてるなぁ。どうしたんだ??」
「あ!! ギルドマスター! この方が今登録して,このランク不問の盗賊団の殲滅の依頼を受けたいと言い出してるんです」
「あぁ!? この依頼は初心者が出来るもんじゃねえぞ」
「そう言ってるんですが……」
横から入ってきた男性はギルドマスターと呼ばれている。身長は170センチ程でそれほど高くない身長と,鍛えられてはいるが,相手を威圧するほどの肉体を持っているわけでもない。
雰囲気は軽い感じがする人で,ダルそうにこちらの方を見ている。
「俺はこのギルドのマスターをやっているランベルクだ。おたく名前は?」
「哲治だ」
「そうか。哲治,この依頼はランク不問だが難しい依頼で,ソロで行うようなものじゃない。わざわざ死に行くようなもので,それをギルドが承認するわけにもいかない」
「ではどうすればこの依頼を受けられますか??」
「普通なら実績を積み上げて,実績を考慮した上で判断するもんだが……まあいい。俺が訓練場で相手をしてやる! それで俺を認めさせたなら,この依頼を受けさせてやる」
「な〜んだ! それなら話が早いじゃあさっそくやりましょうランベルクさん」
「ちょっと! ギルドマスター本気ですか?」
「ん?? 本気も本気! いきなりこんな依頼受けたいとか言い出すやつの実力見てみたくてな」
「手加減してあげてくださいね」
「ねえお姉さん!! あのギルドマスターって強いの?」
祐介がララに聞く。
「アルベート王国で一番強いのはあの人だと言われる位には強いわ。魔法も剣も体術も使える天才中の天才と称されているわ」
「へぇ〜そうなんだ!」
全員で訓練場へと向かう。
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