第20話 一つの結論
「私もちょっとだけ調べたの。海外の美女達は育った場所が今ひとつはっきりしない。それは、わからない人達が世界中にはまだ大勢いるから仕方が無い事だわ。でもこの国はそうじゃない、全ての人に基本戸籍があって、無くても小学校に行く時に作成される。流暢な日本語だったからこの国で育ったんでしょう。そしてあれだけの美女だったら、幼い頃はスカウトが来るほどの美少女だったはず、それなのに全く記録に無いんでしょ? 姫ちゃんが美少女コンテストを調べても出てこなかった、そうなのでしょ? 」
「はい、噂も・・・」
「おかしいわよね、あれだけきれいなのだから。女性に生まれて
「自分は相当な美人」と分からない人はいないし、情報があふれているこの時代、写真は載せられなくても文章で書けば良い、それなのに全く情報が無い」
「母は、組織的かなって」
「そうね、私も考えたの。でもそれも違うと思ったわ」
「どうしてですか? 」
「胃袋を先につかもうとしていないから」
「え? 何の事ですか? 」
「あ、そうか、高校生だもんね、姫ちゃんは頭も良くてしっかりしているから全部知っていると思っちゃった。旦那の胃袋をつかめって言うのよ、食事の美味しい家に夫は帰ってくるって言うの。心をつかむより胃の腑をつかめとも言うかな」
「確かに料理は最初出来なくて、でもすぐに上達したって」
「すごいわよね、そんなにすぐに上達する? 」
姫は思い出した。行き当たりばったりで店に出した新人ホステスが、すごく上手にお酒をついだこと。確かそれもこの県の話しだった。
「そうか、この人、一般人なのに美人の情報を数多く知って、きっと唯一色白美人と、普通に話しをした人だった」
久々に完全に冷静になれた。
袋小路に追い詰めたあの日から、姫はその場所に通いつめた。
禁止されているパルクールで屋根の上に登ったり、工事用の防炎シートの隙間を、その日の朝に確認したにもかかわらず何度も何度もチェックしたりと、あの場所に行かない日は無かった。
そして案の定、色白美人は「あの時刻」を境にいなくなってしまったので
「通いつめてはだめだ! 俺たちのせいだとばれたらどうする! 」
「止めなさい、姫! 簡単にはわからないと思うけれど、繁華街の人はお父さんをよく知っているし、あなたが娘だとわかれば面倒なことになるんだから」
「お父さんもお母さんもおかしいと思わないの? 人が消えるはずなんてないのよ! 絶対どこかに裏道あるのよ! どうして探さないの! だからだめなのよ!! 」
「姫!! 何てことを!!! 」
家に帰っても。無言で食事をして部屋に戻るだけの日々、そしてとうとう、警察に通報されてしまった。
「姫ちゃんがパルクールをしたいのはわかるんですけどね」
知っている警官だったので、やさしく言ってくれたが、その一件から、姫は学校だけは行くが、自分の部屋から出てこなくなった。
「娘のためにと安易に引き受けた仕事でした、その結果が最悪なことになってしまったんです」
夫人は色白美人の調査結果をかなり詳しく知らされた。彼にとっては、娘が元に戻って欲しいと言う切実な願いからであったが、実は夫人にとっては「突拍子もない持論」を強固に固めるものでしかなかった。
だがそのことにはむしろ触れず、素人の自分が導き出した答えは、藁で出来た家のように、ふんわりとやさしく、頼りないものと映ってくれた方が良いのだと夫人はわかっていた。
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