勇者と魔王

半場あぐ

勇者と魔王①

世界は魔王軍に滅ぼされようとしていた。

人々が諦めたかけたその時、空から光が地上に降りてくる。

その光の先にはコトルという小さな村があった。

村の一角にある畑の真ん中には1人の少年。

光は明らかに少年へと目標を定めて落ちてきた。


光に照らされた少年は勇者になった。


勇者は驚くべき早さで成長した。

どんな敵も勇者には敵わなかった。


そしてとうとう魔王軍を討ち滅ぼし、再び世界に平和が訪れたのだ。



「勇者様!万歳!」


「勇者様に栄光あれ!」


しかし全てが終わっても勇者が休める日は無かった。

魔王軍についた残党を倒し、魔物を倒し、終わりの見えない討伐の日々が続く。


やがてそれも収まっていき、勇者にも休息の時間が取れるようになっていった。


「もうすぐ村に帰れる」



そんな時だった。


コトル村が魔物に襲われていると伝令が届いたのだ。

馬を走らせ、勇者は村へ急いだ。


大事な物は全てそこにある、騎士達も留守中に守ってくれているはずだ。




遠くから村が燃えている事が解った。


火の手は村全体を焼き尽くし、何かが崩れる音と炎の異様な音しか聞こえない。

呼べど返事は無く、生きている者は誰もいないと悟った勇者はその場に膝を落とした。



どれくらいそうしていただろうか、背後に悲しげな騎士達が立っていた。

自分を追って来た騎士達が追い付いたのだろうか。


だがその手には抜き身の剣が握られている。


勇者は村に倒れている者の中に『騎士』がいない事に気付いた。


「みなあなたが怖いのです」

「あなたが消えれば世界は平和になります」


勇者は恐怖の対象となったのだ。

騎士達が一斉に勇者に斬りかかった。





数日後、都ではまだ戻らない騎士達の安否を確認するべく援軍がコトル村に送られた。

しかしそこには騎士の遺体があるのみ、村人達の遺体は1つも無かった。


勿論、勇者の遺体も・・・。




報復を恐れた各国の王は、勇者が乱心して村を襲って逃亡したと布令をだした。

騎士を殺し、自分の村を襲った勇者は追われる身となった。


お尋ね者にする事で早い内に勇者を見つけ、終わらせる事が出来る。

勇者にはもう逃げ場は無かった。



そしてついに各国に伝令が走る。





≪魔王 現れる 勇者を探すべし≫

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る