Neon Wave Odyssey - サイバー世界の調和と啓示 -

@junk_ike

序章

新たな目覚め

2025年8月22日 午前10時35分

”まもなく発車します。ご注意ください。”

商談前に、クライアント先の最寄り駅近くのランチを調べるのが日課だ。

午後も資料まとめなくちゃいけないし、サクッとラーメンにするか。

おお、ここはラーメン屋なのにすき焼き丼が有名なのか、いいな。

こういう少しの楽しみがあるだけでも頑張れる。

ドンッ

2号車から入ってきた、男が大きな音をたてて扉をしめた。

物価高、賃金も上がらないストレス社会、気持ちはわかる。

上京して7年、少し変わった人は腐るほど見ているから気にも留めなかった。

男は、入ってすぐに止まった。

席に座りたいから車両移動したのではないのか。

なんだ?

何かを口にあてて小声でつぶやいた。

周囲の目線も男に向く。

少し異様な雰囲気を感じ取った。

ドア付近に座っているOLは避けるように奥の座席に移動した。

”急停車しますご注意ください”

ガダンッ

”現在、緊急停車を知らせる信号を受信したため、状況を確認しております。そのままお待ちください。”

「すぐにいけるぞ!すぐにいけるぞ!ありがたいと思え!お前ら!」

男が叫び、持っていたバックからペットボトルを出し、入っている液体を頭からかぶった。

臭いからすぐに分かった。ガソリンだ。

すぐに車両内は甲高い悲鳴と怒号に溢れた。

俺も、できるだけ奥に逃げた。

「やめろ!はやまるな!」

先ほどまで向いに座っていたおじさんが叫ぶ

男がこちらに向かって何かをなげた。

シュー

缶から煙がでて、さらに別の異臭がした。

生物としての本能か。

体が拒絶したのを確認したと同時に、

みな男のいるドアに向かって走り出す。

と同時に男は、ドアの手すりと自分の左手を手錠でつなげた。

そして、右手でライターに着火した。

「これですくわれる!」

ライターをあたまにつけた瞬間にいっきに男の全身を火が包んだ。

「うわああああああ!」

絶望的な状況に、咽び泣くもの

膝から崩れ落ちるものもいた。

俺は、なぜか冷静だった。

口にタオルハンカチをあて、窓を開けた。

近くの青年に非常用ドアコックを開けるよう協力を扇いだ。

とにかく換気しないと。

火が男のもっていたバックに着火した瞬間。

ドンッ

爆弾だった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

不思議な感覚だ

-

俺は、生きていることを一瞬で理解した。が、同時に出水義人ではないことも理解した。

-

眩い光が目を刺す。どうやら俺は目を覚ましたらしい。

白い実験台のようなものに横になって、体には数々の配線やセンサーが取り付けられている。

周囲は白と銀で構成された無機質な空間が広がっている。どこかの研究所のようだ。

確実に爆発で死んだ。はずだった。

いや、むしろ瞼が眼球を這う感覚、虹彩を絞る感覚でさえも感じる。


ドンッ!!

建物が大きな揺れに襲われる。


また爆発・・・


突然、ラボの扉が強制的に開かれ、襲撃者と思われるものが現れた。黒い戦闘服に身を包んでおり、俺の元へと駆け寄ってきた。


動きたくても、うまく体が動かない。声もうまくでない。

「ハア・・・大丈夫、助けに来た」

助け出そうとしてくれているみたいだ。

俺は彼に体を託すことにした。

一回死んでるし。


深手を負っている様子だ。

壁に爆弾をしかけ、強引にここから脱出するつもりだ。


「ここだ!」

追手が来た。


爆弾から離れていたが、彼は壁に向かって走り出した。

冷静ではない判断だが、俺をここから出すことを最優先に感じる行動だった。


ドンッ!


と同時に壁に穴があき、そこから俺を抱えたまま脱出した。


川に落ち、そのまま下流に向かって進み、途中の下水で降ろされる。


彼は、苦しみながらも言葉を紡いだ。

「あなたを助けに来たんだ。だけど、私にはもう時間がない。これを受け取ってくれ。」


女性だった。


彼女は俺の首に何かを挿入した。

と同時に情報が脳に巡ってくる。

視界に地図が表示され、目的地が示された。

いきなり体が動かせるようになった。


彼女は俺に微笑んで、「大丈夫、これからはあなたが新たな人生を歩むんだ。私たちは過去の過ちを糧に、未来を切り開く力を持っている。あなたにはその力があるはずだ。」と告げ動かなくなってしまった。


「ちょっと!ここはどこなんだ!このずっと視界にでているものはなんなんだ!なんなんだよ!」


「こっちじゃないか!」

追手がまだ来ている。

助けてくれた彼女を俺はおいていきたくなかったが、

彼女に背中を押された気がした。振り返らずに必死に逃げた。

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