第26話 太陽と月の復活!

 ソラの両手がそれぞれ発光していた。

 右手は赤く炎のように燃え出し、左手は白く柔らかい光を放っていた。


 少女はその神々しさに目を奪われていた。

 ソラはと言うと、モンスターと対峙していた。


 完全に動かない少女を庇うためだ。

 けれど自分の体も女の子になっていたので、如何やら能力を発動するとこうなってしまうらしい。


「負けない? 私でも勝てなかったのに? それに如何して貴女が戦う必要があるのかしら?」

「そんなこと言わないでよ。それにさ、喋ってる暇があるなら自分のことだけ守ってね」


 ソラは厳しいことを口にした。

 それからモンスターへと視線を送り、距離を取り警戒されている隙を見逃さなかった。


「さっきの炎で警戒してるね。……今ならいけるかも」


 まだ能力がはっきりとは掴めていなかった。

 しかし、ソラがヘリオスから受け継いだ能力は少しだけ理解できた。


 だけどまだ足りなかった。

 何故なら火加減が全く調整できない上に、凄く熱いのだ。


「あ、熱い……手は熱くないけど、外気で熱いんだけど……はぁ、やっぱり向いてない能力なのかな?」


 とは言えコレしか攻撃手段が無い。

 そこでソラはモンスターに攻撃する。


「とりあえず攻撃して時間稼がないと。せーのっ!」


 ソラは走り出した。

 するとモンスターが威嚇して「ワフッ!」と牽制した。


「う、うわぁ!」


 ソラは怯えて立ち止まった。

 体に急ブレーキが掛かり立ち止まってしまうと、モンスターは刃を叩き込む……はずだったが、ソラの右手から炎が出た。


「うわぁ、勝手に出た!」


 ソラが攻撃を食らいそうになると、炎が勝手に出た。

 如何やらソラの精神エネルギーに反応しているようで、勝手に防御したらしい。


「ワフッ!」


 モンスターの刃が引っ込んだ。

 ソラはその瞬間を見過ごさず、懐に拳を叩き込む。


「そりゃぁ!」


 ドンッ!


 強烈な一発が入った。

 ソラは右ストレートを食らわせて気分を良くしてしまい、一瞬注意が散漫になる。


「気を付けなさい。ソイツの炎は振動して……」

「えっ?」


 ソラはつい忘れていた。

 振動が刃を短くしたことで重たくなり、ソラを直撃した。


 全身がひりついて痛かった。

 目を大きく見開くと、左腕を庇うようにして右手を前に出す。


 炎が燃え広がり、振動を受け切ろうとしたが無駄だった。

 所詮炎は炎で、振動を防ぐことはできないのだ。


「あ、熱い!」


 ソラが叫ぶと、突然左手が光り出した。

 淡い光がソラの周りを包み込むように展開する。


「今度は左手? えいっ!」


 ソラはカーテンでも開けるみたいに左から右へと左手を振った。

 すると本当にカーテンが展開したみたいな光のベールが包み込み、熱を遮った。


「あ、熱くない? な、何で!?」

「貴女の能力でしょ! 自分の能力の全容くらい把握しておきなさい」

「そ、そう言われても……」


 初見の能力を如何扱えって言うんだ。

 ソラは言われたものの、戦い方が未だに掴めないのだった。


「えーっと、剣を使ったら炎が出なくなるでしょ? それじゃあ如何したらいいんだろ。あー、もう分かんないよ!」


 ソラはモンスターに攻撃のチャンスを与えてしまった。

 案の定左腕の鎧を刃に変化させ、襲い掛かる。

 刃渡り一メートル越えの斬撃が降り注がれた。かと思えば……。


「仕方ないわね!」


 少女が叫んだ。

 すると当然ドン! と畳に押し潰されたような音が聞こえた。


「えっ?」


 顔を腕で隠して守っていたソラは顔を出した。

 モンスターの刃が押し潰されてペッキリ折れていた。


 折れているとは言うものの、地面に落ちていなかった。

 切断されることはなく、上からの圧力で押し潰されている。


「な、何が起こっているの?」


 モンスターの動きが鈍っていた。

 しかし重力が操作されているわけでもなく、モンスターは着実に近づいて来ていた。


「ど、如何しよう。とりあえず攻撃……」

「駄目よ。貴女も押し潰されるわ」


 少女は警告する。左手が地面に触れていた。如何やらもう熱くないようで安心した。

 しかしながら何が如何なっているのか分かっていなかった。

 とりあえず少女の安全が保たれたので安堵した。


「良かった」

「ちょっと安心している場合じゃ無いわよ」

「な、何で? 攻撃が止まっているんだよ?」

「止まっているんじゃなくて、ゆっくり動いているのよ。そのうち上からの圧力・・・・・・も元に戻るわ・・・・・・

「い、意味が分からない」


 ソラは頭を抱えた。

 とりあえずこの状況は長くは続かない。


 そうと決まればやれることは決まっていた。

 この短時間で能力を完璧にコントロールすることはできないので、ソラは右手に全力を乗せた。


「とりあえずこの一撃を叩き込むしか今の僕には……」

「ちょっと待ちなさい。あのモンスター、魔通武者まがつむしゃは!」

「そりゃあ!」

「行っちゃ駄目!」


 ソラはパニックになっていた。

 少女は忠告したのだが、モンスター魔通武に向かって突撃した。


 しかし突然刃がプルプル震えていた。

 そしてソラが近づいた途端、圧力が解けてしまい、刃だけが迫って来る。


 魔通武は振動を起こせる。

 一瞬足止めした程度ではその動きを鈍らせるだけで、十五秒止めるのが精一杯なのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る