第28話 惜別編(五)追惜
母親の葬式は至って
参列者は、母方のいとこの京子さんとその息子さんだけで、中山家の本家とはすでに縁を切っていたので連絡すらしていなかった。
火葬炉から母の遺骨が出て来ると、ひとり一つずつ骨を
京子さん達とはそこで別れ、骨壺を持ってタクシーを拾い、かつて母を介護していた部屋に遺骨を運んだ。達也は遺骨を前にしてひとりぽつんと座っていた。線香に火を
けたたましいサイレンの音ともに救急車が到着し、三名の救急隊員が部屋にあがりこんで来た。
―あっという間だった。救急搬送してからもうすでに二年も経っている。ただ部屋を出てまた部屋に帰って来ただけなのに、母さんの体がこんな小さな箱のなかに入ってしまった―
母親が使用していた介護用のベッドは、レンタル業者がすでに引き取りに来てなかったが、ベッドが置いてあった畳の部分は、引っ越して来た時のまま青々としている。達也は、その青々とした畳の上に仰向けに寝て母親のぬくもりを感じようとした。
―母さんはいつも天井を眺めていた。何を話しかけても、天井のある一点に視線を向けていた―
達也も仰向けに寝ながら天井を眺めた。
―天井を覆っている木の木目を眺めながら、母さんは何を思っていたのだろう―
達也は母親のことについて、英子伯母さんから聞いていた話を思い出していた。英子伯母さんが言うことには、若い頃母親は兄弟五人と一緒に富山から上京した。他の兄弟達は母親が中学しか出ていなかったため、一緒に上京することを反対していたが、反対を押しきって強引に東京に出て来たらしい。
―東京になんか出て来ないで富山にずっといればよかったんだ。富山で親兄弟達と一緒に、
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