第18話 家族編(五)施設
達也は、アパートの近くの介護事業所に行って相談することにした。その介護事業所は、団地の一階の一室に事業を
達也が机の前で事務所のなかを覗き込むように立っていると、事務所のなかから眼鏡をかけたインテリじみた女性のケアマネージャーが出て来て、笑みを浮かべながら達也に尋ねた。
「どうなされましたか?」
「母親が認知症になってしまって、昼夜を問わず大声で叫んでいます。徘徊も頻繁にするようになって困っています」
達也は、困惑した
「とりあえず、デイサービスを利用してみてはいかがですか。様子をみてショートステイを利用することもできますよ」
ケアマネージャーは慣れた口調で話しはじめた。達也は、会社を辞めてアパートに引っ越して、ひとりで母親の介護をしていることを説明した。ケアマネージャーは、だいたいの状況を察したようで、割と料金のかからない施設を三ヵ所達也に紹介した。
「あらかじめ、デイサービスの施設に行って見学してみて下さい」
「わかりました」
と達也は返答した。
翌日、
その次の日は、同じ方面であったため
細田の施設は、廃業した銭湯をデイサービスとして利用していた。施設のなかに入ると、浴場独特の香りが漂ってくる。銭湯であったこともあって、責任者は目を輝かせながら入浴について念入りに説明していた。この施設の利点は、看護師が常駐していることと、リハビリが組み込まれていることである。ただ、他の施設に比べて料金が割高なことが難点であった。
最後の奥戸の施設は、デイサービス用の建物を新しく建てたらしく、内装もバリアフリーになっている。他の施設との違いは、利用時間の延長が出来ることと、あらかじめ予約しておけばお泊りも可能なことである。責任者も感じのいい方で、「連絡していただければ車で迎えに行きましたのに」と愛想よく話していた。
ちょうど散歩の時間であったようで、施設の中には利用者は二人しかいなかった。食卓の上ではお婆さんが、折り紙をちぎっては
部屋のなかを見渡せば、幼児用のおもちゃやお絵描き帳といった遊び道具ばかりが豊富に揃えてある。ここは幼稚園そのものだ、と達也は思った。
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