第12話 血族編(十一)遺伝
社会不安障害を患ったことにより、達也に対する会社の評価は
父親は挨拶している途中、達也の方を
「ほ、本日は、ち、父の葬式にさんえつしてくらはいまして、ま、誠に……」
驚いたことに、このぎこちない発言は、達也が社会不安障害を患った後の発言とまったく同じだった。人前で話せなくなったことも、顔が赤くなることも、遺伝が関係していたのである。大学のゼミで論文を発表していた時は、堂々と発言していたので、「話せるはずだ」と自分を
同期が栄転していくなか、営業所にとどまったまま五年が過ぎようとしていた。例え出世が出来なくても、趣味を生きがいに生きていくという考え方もあるだろう。そのようなひとは大勢いるはずだ。と自分に言い聞かせた。
病気のことを上司に相談してみようと思ったが、父親の死因が自殺であることは他人には絶対に言わないようにと、母と伯母から口止めされていた。精神病院に行くことも考えたのだが、母親の弟が精神障害を患った時に、診察を受けただけで生命保険に加入出来なかったことを理由に、精神病院には行かないように母親から頼まれていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます