第42話 混沌の申し子

 瞼が重い。

 それでも強引に目を開けると、ボロ屋の天井が出迎えてくれた。

 俺の家らしい。

 ベッドの感覚が背中に伝わると、俺は僅かに安堵した。

 生きているらしい。

 ふと左手を見ると包帯がぐるぐる巻きにされていた。

 上腕から先がなかった。

 覚えてはいたが、やはり喪失感はすさまじかった。

 手はないのに感覚はあるという不思議な状態。

 自分の相棒が失われたという人生で感じたことがない落胆。

 言葉にしようがないほどの負の感情。

 けれどそれを補って余りあるほどの達成感もあった。

 カオスソードではクリアできなかった序盤の負けイベント。

 それを俺はクリアしたのだ。

 ゲーマー冥利に尽きるとはこのことだろう。

 左手のことは一先ず置いておこう。

 考えれば鬱々とした気持ちになりそうだった。

 そんなことを考えていると、不意に玄関の扉が開いた。

 バチッと目が合ったのはロゼ。

 そしてその後ろにいたエミリアさん。

 二人は目を大きく見開き俺を見ていたが、すぐにくしゃっと顔を歪めた。


「「リッドッッ!!」」


 二人同時に跳ねるように駆け出すと俺に抱き着いてきた。

 二人の体温と柔らかさが伝わってくると狼狽えてしまう。


「うううっ! リッドリッドリッド!! 心配したんだからぁ!」

「よかった。本当によかったわ。もう起きないかと思ったのよ!」


 見ずとも二人が涙を流していることはわかった。

 俺が心配させたのだ。

 その事実に胸をチクリと痛んだ。

 ついでに体中も痛い、けどその事実を俺はひた隠しにした。


「……ごめん、二人とも。心配かけたな」

「本当だよぉ……! ずっとずっと怖かったよぉ……!」

「あなた、一週間も寝ていたのよ……無事でよかった……」


 二人は俺から少し身体を離して、顔を見ながら話してくれた。

 目の下の隈が色濃い。

 毎日、俺の看病をしてくれていたのだろうか。

 本当に申し訳ないことをしたと思うも、大事な友人が俺をそこまで心配してくれたと思うと嬉しくも思った。

 俺は苦笑し、思わず二人の頭を交互に撫でた。

 ロゼは慣れたように目を細め、エミリアさんは一瞬だけ驚いたようにしていたが、俺の手に身を委ねた。

 二人とも猫のように気持ちよさそうにしている。


「あー、ごほん」


 声に思わずびくんと身体を動かすロゼとエミリアさん。

 見ると玄関には気まずそうにしているカーマインが立っていた。

 俺が苦笑すると、カーマインも同じような表情を浮かべた。

 ロゼはかなり、エミリアさんは僅かに恥ずかしそうにしながら俯いてしまう。


「目覚めてよかったよ。ロゼさんもエミリアさんもずっと君の看病してたんだよ」

「カーマインちゃんも手伝ってくれたんだよ」

「それに村の人たちも、みんな心配してたわ」

「そうか……ありがとう」


 全員の気持ちが嬉しかった。

 俺はもうシース村のはみ出し者ではないと実感できた。

 それが何よりも嬉しかった。

 当初の俺の目的はすべて達成できた。

 序盤で滅ぼされるはずのシース村を守ることができたし、ロゼもエミリアさんも村人も誰一人死ぬことなく、魔物の襲撃イベントをクリアできた。

 大団円という奴だろう。

 まあ、腕はなくなっちゃったけども。

 僅かな沈黙が生まれ、三人共が俺の腕を一瞥する。


「……まあ、これは勲章って思うよ。村を守れたんだ。これくらい安いもんだ」

「安くなんかないよ……! 安いわけがないもん……」

「ごめんなさい、リッド。あなたにすべて背負わせてしまって」

「ボクがもっと強ければこんなことには……本当にごめん。ごめん……ごめんね」


 空気が重くなってしまった。

 せっかくみんな助かったのにこれでは俺が頑張った意味がないじゃないか。

 死ななかったのが奇跡みたいなものなのだ。

 これくらい本当に安いものだと思っている。

 そもそも序盤であんな高レベルの化け物と戦って勝てるはずがないんだよ。

 負けイベなんだから。

 それを知識と技術と下準備と運で強引にクリアしたのだ。

 これくらいの被害は想定内なわけで。

 そんなこと説明できるわけもないんだけども。

 俺は三人を見つめた。

 そして。


「ありがとう」


 そう言ったのだ。

 みんながはっとした顔を見せた。


「俺が頑張れたのはみんなのおかげだ。ロゼはずっと俺の傍にいてくれて、優しくしてくれた。エミリアさんは俺を支えて、励ましてくれた。カーマインは俺と一緒に戦ってくれた。村のみんなは俺を信じてついてきてくれた。そして全員が最後まで諦めずにいてくれた。それが嬉しいんだ。だから謝らないでくれ。俺は……今、最高に幸せなんだから」


 俺は本心から満面の笑みを浮かべた。

 みんなに笑ってほしいという思いからの笑顔だったのだ。

 三人は俺をじっと見つめ、徐々に表情を曇らせた。

 そして不意に泣き出してしまう。

 え? ちょ!? な、なんで泣くんだ!?

 俺はただ感謝を告げただけなのに!?


「リ、リッドは……優しすぎるよぉ……」

「……本当に、優しすぎて……泣けて来ちゃうわね」

「……あはは……本当に君はすごい人だね……」


 三者三様の表情を浮かべ、それでも同じように泣いていた。

 俺にはその感情が理解できず、ただただ狼狽えてしまう。

 俺の想定では、みんな笑顔になり、こちらこそありがとねとか言って、がははと笑い合うはずだったのだが。

 うーん、どうも俺は他人の感情の機微に疎いらしい。

 まあ、悲しい感じじゃないからいいか。

 そう考えた時。

 俺は無意識の内、本当に何も意識しない内にベッドの横にあった純白刀を手に取った。

 そして次の瞬間。

 ロゼとエミリアさんが気絶するようにベッドに倒れてしまう。

 二人は無事だと理性的な俺が考える。

 同時に俺は刀を鞘から抜き、玄関近くに立つカーマインに向けて構える。


「え? え!?」


 カーマインは俺の行動に反応できず、狼狽しているだけだった。

 何が起こったのか理解できていない様子だ。

 それもそのはず。

 俺が警戒しているのはカーマインじゃない。

 彼女の後ろにいる人物だ。

 不意にその人物はカーマインの横を通り過ぎた。

 カーマインはその人物の気配を感じ取れず、ただ漫然とその様子を見守ることしかできない。

 おいおいおいおいおい、マジかよ。

 まさかこのタイミングで来るなんて。

 俺は警戒を最大限に引き上げる。

 こいつを俺は知っている。

 真っ黒なローブを身に纏い、フードで頭部を覆っている。

 顔も四肢も見えず、幽霊のようにその場所に存在している。

 あれこそが。


「お初にお目にかかります。選択者たち。妾は災厄の魔女。ゼフィー」


 くぐもった声が室内に響く。

 それは女性とも男性とも判断できない声音だった。

 同時に空気が重く肩にのしかかってくる感覚に襲われた。

 視界は明瞭なはずなのに、もやがかかったような錯覚がした。

 カーマインがようやく事態に気づいたらしく、慌てて腰の剣を抜いた。


「敵意はありませぬ。剣をお納めいただけますか?」


 何か言う前に、俺たちは剣を納めた。

 俺たちの意思ではなく、勝手に身体が動いたのだ。


「なっ!? ど、どうして!?」


 カーマインは驚きのあまり声を張り上げていたが、俺に動揺はなかった。

 こうなることは知っていたからだ。

 そう、俺は知っている。

 だから焦ることはない。

 俺は僅かに深呼吸し、ゼフィーの動向を探った。


「……その怜悧。宣託には見えなかった存在、異物。それがあなたなのですね」


 異物?

 俺が?

 転生者であることを言っているのだろうか。

 こいつならば察しているかもしれない。


「あなたたちが対峙したあれは災厄の魔物。この世を破滅させし穢らわしき存在。災厄の足から出でし、災厄の子であり、災厄の一部。妾も同様。しかし、妾は世界の破壊を望みません。ゆえに選択者であるあなたたちの手伝いをしたいと考えております」

「ど、どういうことだ!? おまえはあいつの仲間ならどうしてボクたちに手を貸そうとする!?」


 ゼフィーの顔は見えない。

 だがなぜか笑みを浮かべたように思えた。


「愛ゆえに」


 その言葉は空々しく、薄っぺらく感じた。

 だが同時に本心であるとも思えた。

 それは恐らく俺がゼフィーのことを知っているからだろう。

 カーマインはカチカチと震えていた。

 この目の前にいる異常な存在の言葉が、彼女の平静を奪っている。

 俺は冷静だった。

 すでにゼフィーがここにいる理由も見当がついていたからだ。

 そもそもカオスソードのゲーム内でゼフィーが現れるイベントはある。

 それはカーマインが初めて災厄の魔物を倒した後だ。

 本来、シース村の魔物襲撃イベントは負けイベントであり、ゼフィーは出てこない。

 だが俺たちがモーフィアスを倒したことで、前倒しでフラグ立てができたのだろう。

 考えてみれば大した問題ではない……はずだ。


「……それで? 何をしに来たんだ? 俺たちと戦う気はないんだろう?」

「手助けをしに。次の災厄がイシュヴァに堕ちる前に、お教えしようかと思いましてね」


 ふむ、これもゲームと同じか。

 やはりゼフィーとは協力関係になるらしい。

 めちゃくちゃ胡散臭いし、ヤバい相手だけど。

 カーマインは動揺と恐怖から動けずにいた。

 そりゃそうだ。

 本来、シース村での負けイベントを終え、しばらく一人旅をして精神的にも肉体的にも強くなってから、最初の災厄の魔物を倒し、その後にカーマインはゼフィーと会うのだ。

 つまり相当な実戦経験と強さを手に入れた状態になっているということ。

 だが、今のカーマインはほぼ初期レベル。

 高レベルのゼフィーを前に堂々とはしていられないだろう。

 俺?

 俺はほら、全部知ってるからさ。


「……泰然。その姿は勇ましきもの。あなたは……ですが選択者ではない。いえ……しかし、おかしい。その星は輝きを増し始めている……? 異物は異物ではない……? あるいは、真贋は実を以て定まる?」


 ……何を言ってるんだこいつ。

 こんなセリフ、ゲーム本編じゃなかったぞ。

 まあ、俺という存在自体がゲームにはいなかったわけで。

 いや実際にはいたけど、クソモブが。

 でも中身は俺じゃなかったし、全員に嫌われていたし、そもそもすぐに死んだしなぁ。


「面白い存在です。ゆえにあなたはこの世のワイルドカードにもなり得る。いいでしょう。混沌(カオス)こそが、災厄に対抗しうる唯一の存在なのですから。あなたの存在はより混沌を強くする。ならば、むしろ好都合というもの……不浄なる剣を手にしなさい」

「な、なんのこと?」


 カーマインが戸惑う中、俺は迷わずにベッドの横に横たわっている、ロゼのお父さんから貰った長剣を手にした。

 そして一気に引き抜く。

 現れたのは僅かに黒く染まった刀身だった。

 刀身の表面を這いずる黒い何か。

 それは刀身を穢す存在に見えた。


「その剣は不浄に染まり、ゆえに災厄を斬る術となる。選択者が持てばより力を増し、他者が持てば災厄を断つことができます。手放してはいけません。その剣の名は【カオスソード】。混沌たる不浄の剣であり、災厄を断つもの」


 災厄の魔物を倒した武器は不浄となり、災厄の魔物を倒すことができるようになる。

 そしてそれこそがゲームのタイトルでもある【カオスソード】だ。

 そう言えばそういう設定があるのを忘れてたな。

 だってずっとカーマインを操作してたから、あんまり気にしてなかったんだよな。

 いやタイトルなのに忘れてるってなんだって思うかもしれないけど、そういうものなんだよ、このゲーム。遊んだ人ならわかるから。

 ってことは俺も災厄の魔物を倒すことができるってわけか。

 でもカーマインが使った方がより強くなるのなら、彼女が使った方がいいような気が。

 ま、俺の目的は達成できたんだし、敢えて災厄の魔物と戦う必要はないか。

 ばっと両手を広げて、仰々しい動きをするゼフィー。

 ゲームだとここら辺はムービーだったし、めちゃくちゃ壮大なオペラ調のBGMが流れているところだ。

 オーオー! みたいな。

 いわゆる見せ場である。


「……選択者たち。商業都市メイリュカへ向かいなさい。次の災厄と相まみえることとなるでしょう!」

「いや、俺は行かないけど」


 ピタッとゼフィーの動きが止まった。

 カーマインの震えも止まった。

 多分、BGMも止まった。


「……さあ向かいなさい、選択者たちよ!」


 再び、BGMが再生され――


「いや、だから行かないよ。俺は」


 そして止まった。

 俺はこの村を救いたかっただけだ。

 負けイベで絶対に滅ぼされてしまうこの村や村人たちを救いたかったのだ。

 だから頑張ったし、努力したし、命がけで戦った。

 でもこれからの戦いは俺の仕事じゃない。

 主人公であるカーマインがやるべきことだ。

 俺はただのクソモブで、一般人だ。

 左手もなくなったし、もう戦うのは難しいだろう。

 確かに世界を救うという目的のために邁進するのも魅力的だ。

 だがゲーマーとしての、リッドとしての目標は達成した。

 これ以降はカーマインの物語であって、俺の物語じゃない。

 もう村は救われたのだ。

 ロゼもエミリアさんも死なずに済んだのだ。

 だからもう俺は満足だ。

 満足なはずなんだけど、何か引っかかる。

 俺の役目はもう終わったはず。

 ここが俺のエンディングで、このゲームの全クリのはずだ。

 そのためにここまで頑張ってきたんだ。

 なのになんだこのもやもや。

 俺は何か忘れているのか……?


「村が滅びますよ」


 不意にゼフィーが言った言葉に俺は虚を突かれた。

 そして瞬間的にフラッシュバックした光景が、俺に衝撃を与える。

 ゲームオーバーという文字と共に、村が滅ぶ光景が浮かんでいる。

 そう、カーマインが死ねばゲームオーバーになるのだが、なぜか毎回滅ぼされたシース村が表示されていたのだ。

 ゲーム内では明示されないし、設定でも書かれていないが、カーマインが死ねば世界は滅ぶとユーザー間では当たり前のように言われている。

 なぜなら災厄の魔物を倒せるのは選択者であるカーマインだけだからだ。

 だからカーマインが死ねば災厄の魔物を倒せる人間はおらず、必然的に世界は滅ぶということだ。

 たまたま俺がモーフィアスを倒せたのは、カーマインが体力をミリまで削ってくれたからだ。

 つまりカーマインがいなければ達成できなかったということ。

 まあ、今は不浄なる剣であるカオスソードが手元にあるから、カーマイン以外の人間でも災厄の魔物にまったく歯が立たないわけでもないのだが。

 それでも一応ダメージは与えられるけど、ほんの少ししか効果はない感じだろう。

 現状ではカオスは弱い。

 もっと災厄の魔物を倒せば違ってくるだろうが。

 結局、カーマインがいなくなれば世界は滅ぶ。

 世界が滅べは村も滅ぶ。

 ロゼもエミリアさんもオリヴィアさんも村人も俺も死ぬ。

 つまり。

 まだクリアできてないってこと!?

 俺はわなわなと震え、そしてゼフィーを見た。

 ゼフィーは恐らく俺を真っ直ぐに見つめ、そして緩慢に頷いた。

 こいつ結構ノリがいいな。


「選択者が死ねば、世界は滅び、そして村も滅ぶ。つまり、あなたは目的を達成していません。ゆえに……あなたは宿命から逃れられないのです」

「……い、いや俺がいなくてもカーマイン一人で」


 俺は思わずカーマインを見た。

 小動物のように震え、潤んだ瞳をこちらに向けている。

 ゼフィーを前にこんなに怯えている姿を見て、こいつこそが世界を救う人間なのだと誰が思えるだろう。

 彼女が主人公だと知っている俺でさえ思えないんだから、きっと世界中の誰も思えないだろう。

 多分、すぐ死ぬ。

 俺が助けなければ次の災厄の魔物に到達する前に、そこら辺の霊気兵とかに殺される。

 だってゲームでもそうだったんだから。

 あいつすぐ死ぬからさぁ。

 ゼフィーが顔を近づけてくる。

 近くなのにローブの中は真っ暗で見えない。

 不気味な奴だと思うのに、恐ろしさは感じなかった。


「あなたがいなければ彼女はすぐに死ぬでしょうね。そして世界は滅ぶ」

「……くっ!」


 こいつ痛いところを突いてくる!

 俺の心が読めるのか?


「し、しかし俺は左手が」

「メイリュカには優秀な義手職人がいます。そちらへ向かいなさい。行かなければ世界は滅ぶ」


 こいつ完全に先読みしている!?

 ……すぐに世界滅ぶな、おい。

 ここまでめちゃくちゃ頑張ってきたが、どうやらクリアはまだ先らしい。

 ラスボスだと思ったら、次のボスが出てきて、倒したと思ったら、また話が展開する的な、ゲームあるあるだ。

 ゲームのボリュームがあるのは嬉しいよ?

 けど、あんまり長いと疲れるんだよ!

 なんかこうほら、適度な長さってあるでしょ!

 俺は深い嘆息を漏らした。

 ま、いいか。

 正直に言えば、ここまでの日々がものすごく楽しかったのも事実。

 あらゆる努力と下準備をし、ようやくクリアできたあの達成感はなにものにも代えがたいものだ。

 嫌いじゃない。むしろ好きだ。

 だったら、続けるのも悪くない。


「……わかったよ。俺も行こう。ってか当のカーマインがどうなんだ? 話について来れているのか?」


 俺とゼフィーが同時にカーマインを見る。

 カーマインは怯えつつ、動揺しつつも、強い意志を瞳に宿らせた。


「あ、あんな魔物がまた現れるなら、ボクも戦うよ!」


 ボク『も』って。

 違う違うお前こそが主人公なんだから。

 ボク『が』って言わないといけないんだよ。

 なんでおまえが協力するみたいなスタンスなんだよ。


「リッドもついてきてくれるんだよね? だったら、うん。安心だ!」


 なぜニコニコと笑うのかわからない。

 まあ、信頼してくれているってことかな?


「……妾が言うのもなんですが、こんな怪しい人物の言葉を信じるとは」

「俺は相手が嘘を言っているかどうかわかるんでね」


 嘘ではない。

 なぜなら俺はすべて知っているからだ。

 そいつがどういう存在で、どういう意図を持っているのかを。

 だから間違いない。

 ゼフィーは嘘を言っていないし、協力関係を築ける。

 少なくとも今は、な。


「……ならば言うことはありません。楽しみですね、【混沌の申し子】、そして選択者」


 そう言うとゼフィーは空間に吸い込まれるように消えてしまった。

 混沌の申し子って俺のこと?

 まったく変な二つ名つけられちゃったな。

 ゼフィーが消えると同時に、ロゼとエミリアさんが目を覚ました。

 俺とカーマインは顔を見合わせ、ほっと胸を撫でおろすのだった。

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