その五六 番外編:平和の象徴が修羅場ってた件
今回はベランダ菜園とはなんの関係もないのだが、なんともほっこりさせられる光景を見ることができたのでお裾分け。
日頃からハトがたむろしている駅前の広場。そこに、やけに仲むつまじい様子の二羽のハトがいた。お互いに調子を合わせて頭を振ったり、相手のまわりをグルグルまわったり、かと思うと嘴と嘴を合わせて仲良く頭を振ったり……なんとも微笑ましい様子なので立ち止まって眺めていた。
すると、やはりと言うべきか、一方が一方の背中に乗って交尾に及んだ。
おつむが少々、残念なハトたちにも『愛の儀式』があるのだなあ、と、ちょっと感動。
しかし、昔、うちで飼っていたインコたちにはこんな『愛の儀式』はなかったはず。いきなり、相手に飛び乗っていたと思うのだが……。
種族による習慣のちがいか、それともやはり、相手が強制的に決められる『籠の鳥』とちがい、ライバルが大勢いる野性の世界ではきちんと手順を踏んで、紳士的に振る舞わないと相手をゲットできないと言うことか。
インコたちは相手の背中の上でバランスをとるのに苦労していて、いまにも落ちそうな姿勢で、翼をバタつかせながらの交尾だったが、このハトたちはわりとおとなしく重なっていた。翼をバタつかせることもない。交尾の仕方に関しては頭の良いインコよりも、ハトの方がうまいのか。
ともかく、二羽のカップルはめでたく交尾に及んだわけだが……実は、面白かったのはここから。
二羽のすぐ側にいた三羽目、あぶれものなのかなんなのか知らないが、こいつがいきなり重なりあうカップルに突っ込んでいったのだ!
当然、カップルの合体はそこで解けたのだが、あろうことかその場に空を飛んで四羽目が乱入。三羽目と四羽目が――どっちがどっちかはわからんが――グルグルと追いかけっこをはじめるなか、カップルの二羽はあの短い時間で事が済んだのか、やけに澄まし返った様子で首をすっと伸ばしてじっと佇んでいる。
時は春。恋の季節。ハトにもいろいろあるのだなあ、と、なんとも幸せな気分になれた一時だった。
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