その四二 果物王国閉幕

 今年の果物王国が閉幕した。

 クワ、ブドウ、イチジク、ポポー、小玉スイカ、ミニメロン……。

 これらすべての収穫が終わった。さて、その結果は……。

 まずまず、と言ったところだろうか。

 小玉スイカは根っ子食いにやられて花を咲かせるまでもなく枯れてしまった。ポポーは花は咲いたのだが実はつかなかった(ポポーは雌しべと雄しべの成熟時期がちがうので人工授粉してやらないと実がつかないのだが、それがうまく行かなかったらしい)。

 このふたつは残念だったが、他は悪くなかった。ブドウは毎年、着実に成長して多くの房をつけてくれている。クワも――四季成り性の品種のはずなのに――春にしか実をつけないが、その春にはちゃんと実をつけてくれる。

 そして、イチジク。

 こちらもブドウ同様、着実に成長し、前年よりも多くの実をつけてくれた。木から自然にはなれるまでしっかり熟したイチジクはやはり、おいしい。やわらかな食感でとろけるような甘味がある。ただ――。

 前にも書いたがこのイチジク、なぜか、いきなり、すべての葉っぱが枯れてしまった。その後、新芽が伸びる気配もないのでやはり、完全に枯れてしまったのか。

 この不自然な枯れ方。やはり、カミキリムシか。春先に見かけたしなあ。

 しかし、イチジクを植える前はカミキリムシなんて見なかったのに突然、やってくるようになった。あいつら、どこで、どうやって、イチジクの在りかを知ってやってくるのだ?

 しかし、こうなるとどうしたものか。

 イチジクはたしかにおいしいし、受粉する必要もないから確実に実をつけてくれる。その意味では大変にありがたい果樹ではある。しかし、こうも簡単にカミキリムシにやられてしまってはなあ。町中のベランダ菜園で農薬なんて使っていられるわけもなし。

 別物に切り替えるべきか。しかし、なにに?

 ブドウなら我が家のベランダ菜園でも着実に成長することはわかっているし、夏の日差し除けとしても適している。しかし、ブドウばかりあっても仕方ない。

 そもそも、ブドウにしてもイチジクにしてもスーパーに行けばいくらでも売っている。売っているものをわざわざベランダ菜園で量産するのもなあ。かと言って、店に並びにくいトロピカルフルーツだと冬を越せないし。

 あと、スイカとメロンはやはり、効率が悪い。小玉品種とは言えひとつの株からひとつふたつしか収穫出来ない。栽培面積が圧倒的にせまいベランダ菜園ではこれは致命的だ。幾つもの実をつけてくれる果樹の方がずっといい。

 かと言って、果樹の場合、一年中、プランターを占拠されてしまうからシーズンオフに別の野菜を育てる……というわけには行かなくなるし。これはこれでベランダ菜園には向かない。

 では、どうしたものか。

 とりあえず、これから店をまわってどんな果樹苗が出回っているかを確認して、それから決めるとするか。

 願わくば、店で売っていなくて手間のかからない果樹を売っていますように。

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