マーレの思い出

うたたねプリン

リセット

高校。

地元の頭のいい高校に行ければ良かったけれど俺はそうはいかなかった。受験した高校には全て落ち、ギリギリ二次選考で受かった高校は離島だった。どうしても高校には行っておくべきだといいたげな周りの目がどうも気になって、一人暮らしで島に住んで高校に通うことにした。正直言うとめんどくさかったけれど。

明日は出発の日だった。新しく買ったキャリーケースに必要な物資を無造作に詰め込み、ふとスマホを見た。

メールが何件も来ていた。どれも友達からで、島へ行っても元気にしてろよとかいうメールだった。

いいよなぁお前らは。頭のいい高校に行って青春を満喫するんだろうなと少し苛だちながら適当にメールを一つ一つ返信する。

すると、メールの通知音と共にスマホの上から新居についての連絡が来た。 

どうやら俺の住むアパートは二階建てで、海沿いにあるらしい。地図を確認するともうほぼ海の隣だった。

本当に行く気にもならないこの気持ちを抑えて無糖の缶コーヒーを凄い勢いで飲み干す。

未だにまだ慣れない舌を焼くような苦い味で脳をリセットさせた。

俺のスマホはまだずっと通知音が響いている。

関係の無い広告やら友達のメールやらウザったくてしょうがなかった。

だから電源を切って、島の生活に慣れるまで使わないことにした。

机の上に置きっ放しになっていた卒業証書も通知表も自室のアルミのゴミ箱にぶち込んで中学校生活での未練も無くした。これで本当にサヨナラだ。

清々するとともにキンキンに冷えたレモンスカッシュを飲んだ後のような心地よい開放感を感じた。

もうさっきの苦味は残っていなかった。

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