ナラトロジー(物語論)、批評理論、日本語、私的ファンタジー史、そのほか色々な論考

笠原久

ジャンルの役割とジャンル批評

1/2 ジャンルが果たす三つの役割

※ジャンルについて、大雑把にまとめたものです。

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 ジャンルには三つの役割があります。一つ目は読者の便宜を図る――つまり、読者の好みをわかりやすく示しておくということです。


 読者には好みがあります。ファンタジー好きもいれば、ミステリ好きもいますし、恋愛小説が読みたい人、時代小説や歴史小説が読みたい人もいます。


 こういうとき、「この作品は○○というジャンルだよ」と示しておけば、読者は自分の好みに合った作品を探しやすくなります。


 二つ目は文学史の作成です。つまり、ある共通項を持った作品をすべて○○というジャンルにまとめます。


 すると、そのジャンルがどのように発展・変化してきたか、ある作品が別の作品にどのような影響を与えたか、といったことがわかるようになります。


 いわゆる古典が重要視される理由でもあります。


 当たり前ですが、どのような作品であれ、なんの影響も受けずに作られた作品など存在しません。別の作品になんらかの影響・刺激を受けた上で作られているわけです。


 ある日突然、まったくのオリジナルが降って湧くわけではないのですから、文学史というものは重要なのです。


 そして三つ目はもちろん、その作品をどう読めばよいかという指標です。


 ジャンルの指定によって、作品の読み方はある程度定まります――もちろん読者は作品をどう読んでもよいわけですから、指定されたジャンルを無視する(あるいはジャンル批評以外の読み方を選ぶ)こともできます。


 しかし「ジャムの法則」や「選択のパラドクス」を思い浮かべればわかりますが、あまりにも多すぎる選択肢は逆に読者を困らせます。


 実際、なんの指定もなしに、とにかく好きに読んでよいとなれば、読者は主体的に自分で読み方を選択しなければなりません。


 ですが、もしジャンルの指定があれば、とりあえずはそのとおりに読めばよいとわかっているわけですし、自分で読み方を選ぶ場合も、一般的な読み方から外れているのかどうかの区別がつきます。


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