第33話 一方、その頃王都では……③(side ユリウス)
-side ユリウス-
「作戦を考えるか」
秘密裏に学園長になった僕は、オーウェンの罪を捏造した人たちの事について調べる事にした。
僕が学園長になったのは、とりあえず、王宮と一部の教師のみが知っていればいい。混乱が少なくて、済むからね。敵にバレたくないというのもある。
それにしても、今回の敵は、おそらく、教師、生徒、そして貴族と結構な数いるはず。
一つ一つ調べていたらキリがないので、僕は今から、調べるべき事を3つに絞った。
1.敵の動機を探る。:まずは相手の目的からだ。今の所、ソフィアの動機はわかっていない。理由なく恨んでいるように思える。
2.敵の人数を探る:これに関しては、結構な数いるという事がすでに分かっている。追放のやり方が、かなり大規模だからだ。
3.敵の後ろ盾を探す:どこかの貴族だろう。予想は上級貴族で、オーウェンを一方的に、ライバル視している人。哀れな事に、オーウェンは君のこと眼中にないよ。
そもそも、今回の追放、ただただソフィアをいじめたから追放されたというよりは、貴族の権力闘争が裏であったと思われる。
オーウェンは若くして賢者になった逸材だ。そして、王族である僕との仲が良い。優秀だったので、将来、僕と一緒に直に兄上を支える存在になると国王である父にも目をかけられる存在だった。
実家であるリーベ伯爵家が陞爵するのも時間の問題で、そんな、オーウェンに嫉妬の目が向くのは当然のことだ。
実は、オーウェンにかけられた容疑はソフィアに対するいじめだけではない。正確にいうと、まだかけられていないから、かけられそうになったか。
正直言って、今回の追放処分、ソフィアのいじめというだけで、オーウェンを追放するというのは少し重すぎる処分だ。
ソフィアも貴族とはいえ子爵。対するオーウェンは伯爵。地位はオーウェンの方が上。
しかも、ソフィアは上に兄が2人いるため、家は継ぐ事はできない。対するオーウェンは王家も期待の嫡男。
普通なら、オーウェンの方が大事だし、だから、今回の追放処分は王家に守られた形での、見せかけだけの追放処分だった。
もしも、オーウェンがあのまま王都への追放処分にならなかったどうなっていたか?
第二弾が用意されていたという情報を、僕のスパイから聞いた。第二弾の内容は、国家に関する重要機密の流出だ。確かに、本来王家のお気に入りの伯爵令息を追放するくらいだったらそれくらいの理由がいるだろう。
この時点で、上級貴族が関わっている事は確定。
もし、第二弾が起こった場合、非常にまずかった。何がまずかったって、王国の騎士団総出でも、オーウェンに勝てるかどうか怪しいから、王都中を巻き込んで、甚大な被害が予想されていたって事だ。
一度でも戦ったことがあるなら、分かるがオーウェンは、戦いの中で強くなるタイプの人種だ。いや、もはや人類ではなく、新種のバトルモンスターと言ってもいい。
学園の教師陣も、負ける事が分かっているので、オーウェンとは模擬戦とはいえ試合したくない人が大半だった。
魔法を使ったオーウェンに、国内で相手できるのだと、元学園長のロンさんか、神速の賢者エリーゼさん、そして武神ブラン様くらいではないか?リオンシュタットの冒険者は、みんな強さが別格と言われているから、出来るのだろうか?
まあ、考えたところで無駄だ。貴族同士の争いに、リオンシュタットの人間は力を貸さない。
これは、彼らが貴族を嫌っているからというよりは、貴族側が下手にリオンシュタットの人間に手を出した結果、彼らの弟子だった他の地域の冒険者達から敵対視され、その領地が成り立たたなくなったことがあった過去があり、そういう事を無くすための国家政策でもある。
貴族は冒険者を嫌っているものも多い。
理由は冒険者なくして、領地経営は成り立たないと言われるほど、冒険者ギルドの存在が大きいからである。
貴族の私兵団だけだったら、強力な魔物やスタンピートなど、予想を超える魔物の災害に、対応できない場合がとても多い。加えて、ダンジョンや豊かだけど魔物が多い森という資源をうまく活用できないだろう。
それに、私兵団は紹介制で家柄もそれなりに重視されるため、就職する敷居も高く、競争も少ないから、やる気が冒険者ほどない。
だから、貴族的には冒険者に住んでもらわなければ困る。にも関わらず、冒険者は名前の通り冒険が大好きな人たちの集まりだから、頻繁に他所の地域や国へ移動する。少しでも嫌になったら、移動する。
対策として、貴族は冒険者達に干渉しないようにしている。下手に優遇すると、税金競争になるため、それはしない。不遇もしない。大体の家系では関わらないようにという指示があるのではないかな?
僕は関わっていたけれど、オーウェンは関わっていなかったみたいだし。まあ、下手に関わっても、実力がなかったら馬鹿にされて仕返しもできずに終わるから、なるべく関わらない方が良いのは確かだろうね。
だから、今回冒険者の親玉の一人であるエリーゼさんを頼ったのは劇薬だった。普段は優しい、父上や自分の側近にすら、渋い顔をされた。
それでも、僕はオーウェンをあそこに送り込んで良かったと思っている。信頼できる仲間を見つけて欲しかったというのもあるし、彼の才能は、この国だけに留まる感じでもない。その才能を伸ばせるのも、王都には忙しいはずの学園長くらいだったから、強い人が沢山いるリオンシュタットは、オーウェンにとってもとてもあっていると思う。
それにしても、学園長、まさか、あんなだったとは……。
話が脱線してしまったが、本題である僕達の敵についての話に戻ろうか。
まずは、貴族や生徒よりは、比較的、敵を炙り出しやすいのでは無いかと思われる教師陣から探そうと思う。
学園長に人事権があるからと言って、全ての教師がソフィアと繋がっている訳ではないだろうから、全員解雇するのは無しだ。教師達も優秀な魔術師ではあるから、下手に恨みを買うのは良く無い。
幸いにも、敵にはまだこの状況を気づかれていないみたいだし、これから、じっくり証拠を集めていけば良い。
オーウェンもブラン様に弟子入りしているみたいだから、まだしばらく学校には戻って来ないだろう。
ブラン様くらいではないと、オーウェンは戦闘において、教師をすぐに追い抜かしてしまうから、弟子入りするという選択は正しいと思う。少なくとも、学園の教師くらいだと、すぐに追い抜かされていたからね。
そこで、はっ……!となる。
「なるほど……、そういう線もあるのか」
ソフィアに加担した教師は、単にオーウェンの才能に嫉妬していただけではないのだろうか?ソフィアのような、理論がよく分からないで敵対視しているようなパターンではなく。ただ、彼女に誘われたから出来心でのっただけ。こんな事になるとも知らずに。
だとしたら、敵も一枚岩ではないのかもしれない。案外こういうところから、切り崩せるかも。
「一応、その仮定も視野に入れつつ調べていこう」
うん。この仮説は結構当たってそうだ。
無罪を獲得できたら、家族の元へオーウェンに戻って貰うか、嫌だったら、ブラン様みたいに、新たに家を持ってもらう事にしようか。
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-1章完-
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