第32話 精霊門を開こう!

-side オーウェン-




『ここが精霊門ケロ!』

「助かる。……って、シルフ達がいない。探してきてくれないか?」

『大丈夫ケロ!兄貴達なら、追ってきているケロ!ちゃんとこっちに向かっているから、大丈夫ケロ!もうすぐで、着くケロ!』

「分かった」



 精霊門があると言う場所は、呪われていた。辺りの花は枯れ、門は黒い霧がかかっている。

 すぐにでも、浄化魔法をかけたいところだが、下手な事をして、シルフを困らせたくないから、彼らが、ここにくるまで、待つことにする。

 しばらく待ったのち、シルフ達も見えてきた。無事、全員来たみたいだ。



『主人!ケロ!良かった〜!』

『兄貴!久しぶりケロ!』



 良かった。トラブルはあったものの、無事に合流できたようだ。



『というか、流石主人だぜ!もう試練に突破したのか!』

『すごいですわ〜!』

「それが……」



 俺は、ここへ来ることが出来た経緯をみんなに説明する。



『なるほど、試験突破する前に、ケロベロスから気に入られて、連れて来て貰えたと』

「あ、ああ。一応、試験内容はそれっぽく伝えられたんだが」

『違うケロ。試験をする前に、オーウェンが僕の能力を、見破ったケロ!シルフ兄貴の主人だった事もあり、そこで試験は終了ケロ!』

『『『ああ〜!そういうことか!』』』



 精霊達は勝手に納得している。

 俺たち人間にも、説明求む。



『本来、フェアリーケロベロスの試験は、ケロが相手の心を読んで、正直さを見るものだ。つまり、心を読まれている事を気付いたらその時点で、試験の効果が半減してしまう』

「ほーー!」

『そうなったら、ケロが感覚的に、この人は精霊の国へ入る事を、相応しくないと思えば、その場で元の世界へ飛ばすか、疑わしいだけだったら、戦闘を挑む』

『そうケロ。戦闘していると、その人の人柄が良く出るケロ!それで見破るケロ!』

「ほうほう」



 試験と補欠試験があるのか。

 中々よくできている。



『だけど、主人の場合、戦闘になったら僕を召喚して、力を借りる事ができるだろう?だから、フェアリーケロベロスも勝てないと判断して、自動的に試験パスしたってこと』

『そうケロ!決して、テキトーに試験を行なったわけではないケロ!むしろ、ほとんどの者は精霊の国へ入れないように、試験の難易度を調節しているケロ!』

『そうだね!いつも助かっているよ!よーしよし!』

『わふーーーん!』



 そこは、犬みたいなんだ……。

 ケロは、お腹を出して、シルフに撫でられている。随分と信頼関係があるようだ。

 俺は、まだフェルにお腹を見せて貰えてはいない。これから、頑張りたいところだ。



『キャンキャン!』

「フェル。お前もここに来れて、偉いぞ!よーしよし!」

『ニャーニャー!』

「お前も……、お前とは初めましてだな。』



 確か、フェルと仲良くなった、闇の精霊だったよな?森の住人からは、こいつだけ、着いてきたのか。

 ああ……!そっか。おそらく、あそこの住人の中でも、精霊は珍しいはず。……となると、自然と不思議な国へ来れたのが、目の前にいる黒猫だけだったのかもしれない。



『ニャーーーゴ』

「おう。よろしくな」



 黒猫は、頭を下げてきた。知能がかなり高いところを見るとやはり精霊のようだ。



『さて、みんなが無事集まれたところで、精霊門を開けたいと思う』

『『おおーー!』』

「ついにか」

『うん。精霊門の開け方を説明するね』

「頼む。」

『まず、主人がやる事は、門に向かって、浄化魔法をかけること』

「了解」

『僕は、それが終わったら、精霊門の鍵を作る。そうしたら、門が開くはず!』

「ほうほう」



 俺が行うことは、結構簡単だな。

 シルフによると、精霊の鍵は高位精霊にしか作れない特殊な方法で作るものらしい。

 作るのに、結構な力を使うそうだ。そちらが大変なのだろう。



『だから、終わったら、ヴァイオリンを弾いて、主人の魔力ちょうだい!』

「それくらいだったらお安いご用だ」



 それを聞いて、ケロベロスが驚く。



『なんと……!オーウェンは、噂の魔力大爆発ヴァイオリンピーポーケロかー!』

「……?噂の……?というか……」



 どんな呼び方やねん!



『当然だケロ〜!ヴァイオリンピーポーといえば、夜中に、ヴァイオリンに載せて大量の魔力を、精霊界に送り込む神如き力の持ち主だと話題ケロ〜!』

「い、いや、それは、流石に人違いではないか?俺にそんな力はないのだが……」

『いや、あるよ?』『ありますわ』『あるぞ!?』



 まじかよ。精霊達だけでなく、エリーゼさんや、長老まで頷いている。



「薄々気付いていたんですが、あたしが驚きすぎな訳ではなく、やっぱり、オーウェン君が、すごすぎるだけですよね」

「それはそうですね」

「そもそも、精霊王とリトルフェンリルを従えている時点で、一般人ヅラはやめて、もう少し自分の力を自覚して、欲しいものです」

「やっぱり、そうですよね!あたしが悪いのかと思っていました。安心しました。良かったー!」

「「ですです!」」

「キャンキャン!」



 ロン、トム、レムが後ろでそんな事を話している。えっ……、俺って結構普通に生きてきたつもりだったんだが、これだけみんなに言われるって事は、そんな事はなかった?

 前から、ユリウスは、俺のことをロン達と同じように風に言っていたが、他の人たちは、そんな事は無かったしな。

 お世辞か、冗談だと思って聞き流していた。まさかとは思うが、本気で言っていた?



『ふむ。主人には、一度普通の魔法使いというものを知っておいた方がいいらしい』

「いや、一応学園に、通っていたから、普通の魔法使いは知っているはず……」

「あっ……!そっか!だから、オーウェン君基準がおかしかったのですか!」

「……?」

「おそらく、学園に通っている魔法使いが基準になっているっぽいさねえ。そもそも、あの学園に入れる時点で、超一流の魔法使いさ」

「なるほど……。それに、その後、来たのは学園よりもさらに強い魔法使いがゴロゴロいるリオンシュタット。感覚が狂うのも当然なのじゃ」

「貴族という閉鎖的な環境で生きてきた弊害があるのかもしれませんね!」

「ふむ……。一度、ブランに頼んで、一般、庶民の事を体験してもらう1日を作ってもいいかもしれないね。領主殿の今後のためにも」



 そうだったのか。確かに、今までの俺は、閉鎖的な環境で、前世の知識を持ちながらも、なんの疑問も持たずに、異世界だからこんなものかと、生活していた。

 よくよく、考えれば前世の普通の感覚がこの世界での、普通の感覚なのかもしれない。

 だとしたら、今まで、やっていた事は相当やばいかもな。



『紛れもなく、やばいやつなのは、間違いないぜ!』

『控えめに言っても、狂人ですわ〜!』

『すごい通り越して、ただの化け物なのは間違いない』

「流石に、言いすぎでは?」



 最後の方シンプル悪口では?と思わなくもないけど、確かに、これは一般庶民の生活を学ぶべきなのかもしれない。とても興味がある。詳しく話を聞きたいが、まあ、それは、今ではないか。



「とりあえず、浄化の魔法をかける」

『おっと、そうだったね。お願いしるよ』

「[収集][浄化]!」



 収集の魔法をかけると、門にかかっていた黒い霧が一ヶ所に集まり、浄化の魔法をかけると、黒い魔法が破裂して消える。

 収集は本来、掃除に使う魔法だが、こういう魔法をかける対象がよくわからない時に使うとても便利な魔法だ。



『よしっ!みんな離れて!』



 シルフはそういうと、魔法で作り上げた大きな神々しく光った鍵を掲げる。

 門は、鍵に呼応するように光り、俺たちは、精霊の国へ入る事が出来たのだった。



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[コメント]

近況報告にて、オーウェン、ロン、シルフのイメージ画像を追加致しました。

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