第25話 オークの村

-side オーウェン-




「シルフ。なるべくなら、俺から離れないでくれるとありがたい」

『分かっている。主人の命が何よりも大事だからな』

「キューーン!キューーン!」

「フェルも戦いたい?そうだなー」



 実は、フェルも弱くは無い。

 ステータスを見る限り、攻撃力は結構高いし、スキルも優秀。進化前とはいえ、一般の冒険者よりは全然強いだろう。



◯ステータス◯

名前: フェル

種族: リトルフェンリル

年齢: 5歳


基本ステータス:

- レベル: 30

- HP (体力): 500

- MP (魔力): 50

- 攻撃力: 120

- 防御力: 80

- 知識: 30


特殊スキル:

1. かみつき: 鋭い歯と強力な噛みつき攻撃を行う能力。

2. 高速移動: 高速で移動し、敵の攻撃をかわす能力。

3. 狼の嗅覚: 臆せぬ嗅覚で敵や獲物を探し出す能力。

4. 自然の連携: 自然界との強力なつながりを持ち、森林や自然の力を利用できる。


装備:

1. 鋭い牙と爪: 強力な攻撃力を持つ天然の武器。

2. 優れた毛皮: 防御に役立つしっかりとした毛皮を持つ。

◯END◯



 だが、オークはBランクの魔物だ。まだ子供のフェルに勝てるだろうか?万が一、傷付いたらと思うと、不安も残る。少し考える。



『心配になる主人の気持ちもわかるよ。フェルは愛らしいからね』

「ああ」

『そんな迷える君に、僕が結界魔法をかけてあげる!これなら、安全に戦えるよ!』

「そ、そんなことも出来るのか」

『うん!主人とラムとレムにもかけてあげるよ!多分、オークキングの攻撃でも、3回くらいは耐えられるんじゃ無いかな?』



 それはすごいし、ありがたい。

 もっと早くに聞いていれば、よかった。

 知っていれば、迷わず頼んでいただろう。

 シルフに風の結界を張ってもらってから、オークの村への戦闘を仕掛ける。



 奇襲する時のセオリーとして、最初に攻撃をする相手は、なるべく強い魔物がいい。不意を突いて、1撃で倒す。

 理由は強い魔物ほど、真正面から倒すのは大変で、弱い魔物は奇襲しなくても簡単に倒しやすいからである。

 というわけで、今回は今見えている範囲で一番強い敵、2匹いたオークジェネラルをシルフと俺が狙うことにした。



『オークジェネラルが2匹いるということは、オークキングがいる可能性がかなり高いだろうね。気を抜かないように』

「分かった」



 やはり、いるのか。オークキング。

 さっき、探査をした時に1匹だけ、桁違いに強い反応を感知した。おそらく、それがオークキングだろう。



 開始の合図とともに、オークジェネラルに奇襲をかける。



『[ウィンド]』

「[身体強化]」



 --ビュオオオオオ!と風が吹き荒れ、オークたちを襲う。明らかに[ウィンド]の威力では無い風に、オークたちが目を瞑っているうちに、オークジェネラルを倒す。

 オークジェネラルを失い、混乱しているうちに、トムとレムが、オークナイトとオークマジシャンを倒していく。

 フェルは高速移動というスキルを発動して、俊敏性を生かし、相手を翻弄してくれている。俺にとってはある意味一番助かっている助っ人かもしれない。



「順調だな」

『ああ……、そろそろ出てきても、おかしくは無い頃だが……』

「ああ。意外と部下がこれだけやられても出てこないものなんだな」



 もう既に8割方オークの村は壊滅している。

 念のため、特別に、参戦してくれた、トムとレムの仕事が思った以上に早かったからな。流石Aランクの冒険者だ。



『……っと噂をすればお出ましか』



 --ドシンドシンと、大きな音を立てて、オークキングはやってきた。

 確かに、あれはオークジェネラルとは比べ物にならないくらい強いだろう。王者の風格を漂わせる。



 --グオオオオオオオオオ!



 俺たちと倒れている部下たちを見て、オークキングは怒り出す。おそらく、デバフ系の威圧スキルを持っているのだろうか?若干体が重くなる。



「シルフ!」

『分かっている![ストーム]!]



 --ゴオオオオオオオ!



 ストーム。風の上級魔法。

 上級魔法なんて、使っている生き物、生まれて初めて見た。

 空が曇り始める。

 ん??あれ……?おかしい。

 どう考えても、おかしい。天気を操作しているように思える。魔法で天候変えれるは普通に考えてやばく無いか?



 --グア?



 ほら、さっきまでの威勢はどこへやら?オークキングも混乱しているし。

 逃げる反応が遅れて、死を悟った雰囲気を出している。



 --ゴゴゴゴゴゴ!



 そのまま、オークキングを飲み込んで行った。その後に雨が吹き荒れる。

 事前に結界を張っていたおかげで、俺たちは大丈夫だった。

 というか、普通にやばすぎるだろ。上級魔法。

 今ので、完全に放心状態のオーク達を倒して、終了した。



「討伐完了だな!」

『ああ。すまない……、デバフのせいで、手加減ができず、オークキングの素材を無駄にしてしまったかもしれない』



 どうやら、オークキングのデバフはシルフにとって逆効果だったようだ。御愁傷様。



「貴重な上級魔法も見れたし、いいって事よ!」

「そうですね!あんなすごい大技を見たのは、久しぶりです!」



 久しぶり……って事は、他にも使える存在がいるんだ……。怖すぎるだろ。魔境--リオンシュタット。



 それから、オークの素材を回収した。

 幸いにも、オークキングの素材も半分くらいは武器だったので、回収できた。

 あの風で無事って、オークキングも中々頑丈なようだ。もしも、自分で戦うことになった際には、それも頭に入れておこう。



 そんな事を考えながら、その日は今までの素材を買い取ってもらうために、一旦、リオンシュタットの冒険者ギルドに、素材を提出しに帰るのだった。



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