第20話 あきらめ

-side オーウェン-




「……?」



 次の日、寝て起きると、辺りの様子が変だった。なんとなくだけれど、昨日よりもどこか、空気が澄んでいるようにも思える。



「キューーン、キューーン」



 昨日は聞こえなかった可愛らしい動物の声も、外から聞こえる。

 それにしても、起きた時に違和感があったのだが……、これはシルフがいないからか。昨日一緒に寝ていたシルフの姿が見えなかったのだ。

 外は明るいし、探しに行こうかと外に出る。すると、ちっちゃい狼とシルフが会話をしているのを見つけた。

 声をかける前に、シルフがこちらに気付いて声をかけてきた。



『オーウェン。まーたやっちまったか』

「シルフ……?」



 シルフが呆れたような表情をしてこちらを見てそう言ったので、まだ、寝起きの頭をフル回転したまま、必死にやらかした原因を考える。思い当たる節は特にない。

 シルフの方を向くと、リトルフェンリルを指さしてこう言った。



『どうやら、昨日のお前がヴァイオリンを弾いた時に、外に漏れ出た澄んだ魔力を嗅ぎつけてね、聖獣のリトルフェンリルがこちらへ来たようなんだ』

「リトルフェンリル?聖獣?」



 聖獣は、神聖な存在な存在だ。世界を守護したり、人々に幸運をもたらしたりする生き物よ言われている。



『リトルフェンリルというのはね、成長するとフェンリルに進化する聖獣なんだ。君たち人間の間では、精霊の1種とされ、信仰対象にもなっている』

「ほほう」

 


 フェンリルといえば、伝説の生き物だ。この可愛い見た目の狼が最強の生物になるのか。

 それにしても、魔獣にも進化があるのか?とは思ったが、それは聞いたことがない。おそらく、進化するのは魔獣ではなく、聖獣だからだろう。



「キューーン、キューーン」

『リトルフェンリルが君に挨拶をしたいらしい。昨日の魔力のお礼だって』

「分かった」



 リトルフェンリルに近づき、目の前にしゃがむ。すると、顔を擦り付けてきた。俺の肩に乗れるくらいのちっさいサイズだが、結構な力の強さだ。



「よーしよしよし!」

「キャン!キャン!」



 可愛かったので、撫でていると、甘えてきた。こんなペットがうちにいてくれたら、幸せだろうな。



『オーウェン……』

「ん??」

『その子、君の従魔になってる!』

「キューーン、キューーン!」

「え!?従魔!?」

『そう!精一杯、お守りします!だって!』

「え、ええ!?ま、まあ……よろしくな!よろしくだけど……、シルフの時も思ったけど、従魔が従魔契約の文言なしで、従魔契約出来るって、学園の従魔についての授業でも、聞いたことがないんだけど!?」

『そりゃあそうだろうけど、高位の生物は無詠唱従魔契約くらいはできるよ』

「そういうものなのか」

『そういうもんだよ。諦めて』



 色々悟ったので、大人しく諦めた。



♢ ♢ ♢ ♢ ♢



「それじゃあ、行こうか!」

「その前に、それ説明してくれませんか?」

「これか?新しく従魔になったリトルフェンリルのフェルだ」

「リ、リトルフェンリル様!?」

「キャンキャン!」

「よろしくだって!」

「はっ!誠心誠意努めさせていただきます!」



 意外だ。もっと驚くかと覚悟していたが、落ち着いている。その事を疑問に思って聞いてみると、「もう諦めました!」と言われた。冷静を保つためには、やはり、諦めが大事らしい。



 気を取り直して、西の森2日目。昨日はスライムとゴブリンを倒せたので、今日は、オークを見つける事から開始している。今回はどんなお肉と出会えるだろうか?



『よだれ垂れてるぞ』

「これは、食い意地張ってるだけ」

『君、仮にも一応貴族だよね?』

「真面目な貴族として振る舞うのは、もう諦めた」

『いや、一応大事だと思うし、そこは諦めないで欲しいんだけど』



 でもなあ、人には、適材適所があるし、時には諦めも肝心だ。

 それに、俺は自由に生きる事が出来るということを知ってしまった。正直、以前の生活に戻れと言われても無理な気がする。

 その時は、その時で諦めて我道を進もう。



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