第9話 ヴァイオリン練習
-side オーウェン-
「ふーー。疲れたな。ああ、そうだ。家の花に水をあげないと。[ウォーター]」
俺がそう唱え、手をかざすと魔法陣から水が出て来て、花壇の花に水がかかる。
「とりあえず、寝ようかな?いや、ほんの少しだけ、ヴァイオリン弾いてからにすっか」
どんな事でも継続は大事な事だ。それは、ヴァイオリンも同じ事で、1日でも、弾いてないと左手--弦を抑える手が、訛っているような感覚になるのだ。もう少し、具体的に詳しく説明すると、ヴァイオリンは、左手で、弦を押さえ、音階を決める……のだが、これが中々に厄介で、押さえている指の位置が、1cm……いや、1mmでも違うと、もうそれは違う音になってしまう。
それだけでない。右手--弓(ボウ)と呼ばれる、を操作する手の使い方もまた重要である。ボウとは木材(一般的にはパーネンバコまたはブラジルウッド)の棒に、馬の尾の毛(一般的に白馬のもの)を緊張させたもので、これを弦に擦りつけることで、弦楽器から音を出す。
演奏者はボウを使って、音の大きさ(ダイナミクス)、音色(トーン)、そして特定の演奏テクニック(ストローク)を制御する。
例えば、スラー(つながった音)やスタッカート(切り離された音)などの表現は、ボウの使い方によって変わるのだ。
だからボウの使い方は、弦楽器を演奏する際に非常に重要であり、これまた、テクニックと繊細さを必要とする。
優雅なヴァイオリン奏者の演奏の裏側には、一切音が狂わないように、左指を押さえ、一切音のタイミングがズレないように、ボウを引くという大変な作業がある。
1mmのズレ、1秒のタイミングの違いが、メロディー全体を左右する。
……とまあ、長々と説明はしたが、それでも、ヴァイオリンを弾くのは楽しい。
思い通りに、カッコいい曲を上手く弾けたら、気持ちがいいのは、当然だろう。
時間を忘れて没頭する事で、日々のストレスを軽減にも繋がっている。
「ここからだと、あのヴァイオリンは、取りに行くのめんどくさいな……。仕方ない。[ヴァイオリン召喚]」
俺がそう呟くと、魔法陣が現れ、ヴァイオリンが浮かび上がる。[ヴァイオリン召喚]は、俺が独自に開発した魔法で、登録しているヴァイオリンをそのまま、呼び出せる。
流石に、爺さんの形見だと、万が一の事があってはいけないから、ワンランク落ちる練習用のヴァイオリンだが、誰に聞かせるわけでもないし、今日はこれでいいだろう。
〜〜♪♫♪
この世界に来て、楽譜っぽいものは自分で書くしか無かったから、かつて、ヴァイオリニストだった時に自分がしていたウォーミングアップから始める。
次第に、テンションが上がっていき、気づけば、あっという間に時間が過ぎていた。
--そう、5時間くらい。
「ん??5時間?」
ググーー。
気づいたら、もうそんなに時間が経っていたのか。お腹が空いてきたみたいだ。
「--って、あーー!そう言えば、俺、食材系、携帯食のまっずい干し肉しか持ってないし、色々買いに行かなきゃだな」
色々、やるべき事はあるのに、没頭してしまっていた。エリーゼさんから、商店街の地図は受け取っているし、ギルドカードも使ってみたいし、まずは、試してみるか。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
〜side ???〜
オーウェンが去った後、2つの光の玉がふわふわと、力なく浮いていた。それらは、オーウェンがいた場所をあてもなく彷徨う。
『うおーー。俺も、飯が欲しいぞ。って、さっきのヴァイオリンに聴き惚れていて、気づかなかったが、なんだこの魔力は!うおーー。魔力うめーー!魔力』
『ほんとですわーー!ひっさびさにこんなうっめえ魔力食べましたわ〜!力が漲りますわ〜!』
『仲間達にも、知らせようぜ!この魔力だったら、あいつらも回復できるかもしれねえ!』
『そうですわね!!すぐに、国に戻って、知らせるのですわ〜!すっげえ奴が現れましたわ〜!大ニュースですわ〜!』
オーウェンの魔力を食べて、元気が出たのか、輝きを増した光の玉は、そのまま、屋敷の裏庭に入って行ったのだった。
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