第10話 珍しい食い物がいっぱい

-side オーウェン-




 俺がお腹を空かして商店街に行くと、そこは見るもの全てが新しく、異様な様相を呈していた。



「あっちは、コカトリスの串焼き、こっちは、コカトリスのパイ、そっちは、コカトリスのフライ……って、全部コカトリスじゃねえか!!」



 通りで異様なわけだ。コカトリスといえば、Aランクの凶悪な魔物である。公爵家にいた人生17年間の中で、まだ食べた事ない。

 それが、これだけ当たり前のように売られているのは……、驚きの光景である。



「おや、お前さん。見ない顔だね。リオンシュタットは、初めてかい?」



 驚いていると、屋台の店主のおっさんが、声をかけて来た。



「え、ええ」

「そうか、そうか。ようこそ!すごいだろう?ここは。珍しいものが沢山で」

「そ、そうですね。その……、全部コカトリスっていうのが、気になりますけど……」

「あ、ああーー。そう言えばそうだね」



 そう言えば、そうだねで済ませられる事なのか?結構大事だぞ?まともな感覚を持っていたら。いや、そう言えば、ここはリオンシュタットだったか。

 そう思ったが、適当に頷いておく。



「つい最近、コカトリスの大規模な討伐があったんだよ。お陰で町はちょっとしたお祭り騒ぎさ。おまえさんも一本いるかい?

 ほれ、試食してみな。これ」

 


 コカトリスの大規模な討伐……。

 危険すぎるその話は、少し気になるが、いい香りに釣られたので、聞き流し、とりあえず、食べることにした。



 --パクリッ!



「う、うまっ!!」



 ジュワーーと、ジューシーな肉汁と強烈な旨みが噛むと、口の中に広がる。

 二日酔いじゃなかったら、絶対に、酒が欲しいところだ。待てよ……もう、酔いも冷めてるし、酒も抜けてるだろう。

 1杯くらいだったら大丈夫だろう。

 うん……、きっと大丈夫に違いない。



「おっさん、コカトリス2本と、エール1杯お願い」

「はいよーー!」



 エールとは 麦芽の風味と、ホップからくる苦味や芳醇な香りが特徴の飲み物だ。

 それが、この屋台で、売っているという事は、これはもう買えと言われていると思える。まさに、天啓。



 パクリッ!!

 ごっくん!!



「ふあーー!やっぱりあうなあ!」



 コカトリスの串焼きは、強い旨味と香ばしさを持つ特徴的な料理だから、それに対抗できるしっかりとした味わいと炭酸の刺激があるエールと、非常に相性が良い。

 あと、エールの炭酸は口の中をスッキリとさせ、コカトリスの風味が重たく感じることを防ぐことで、味の調和がとれ、食事が一層楽しめる。

 それから、しばらくの間、俺はエール片手に、屋台を巡り、コカトリスのフライとコカトリスのパイも食べたのだった。

 ちなみに、コカトリスの大規模な討伐については聞き忘れた。



 ♢ ♢ ♢ ♢ ♢



「ふう……、結構食べて、満足もしたし、もう帰ってもいいけど、食材は、いざとなった時に、必要だし、結構買っても良いよな?さっき、ギルドカードの残高も確認したし、結構使っても良いはず」



 正直、今の俺には、実家とユリウスから提供された当面の生活費のお金しか持ち合わせていなかったから、ここで使えるお金が少なくて、不安だったけれど、エリーゼさんが気を利かせてくれたお陰で、その心配は無くなったようだ。ブランにも感謝だな。

 そんな事を思い、お肉屋さん、八百屋さん、飲み物屋さんに行く。

 ここでも、魔境でしか育たない、変わった野菜が置いてあったり、普段見ない飲み物があったりと非常に刺激的で面白かった。



「よし、これだけ買えば、充分だろう。

 ふう。満足した〜〜!」



 新たな土地の、新たな食べ物に刺激を受け、大満足した、俺はホクホク顔で、家に帰る事にしたのだった。




 ♢ ♢ ♢ ♢ ♢




 特に何事もなく、家に帰ったが、家に着いた時に、ある違和感があった。

 それはもう、違和感どころか、明らかに家が変わっていたので、とても驚いた。



「おかしいな……?うーーん。花ってこんな急に伸びるものだっけ?

 あと、なんか、さっきまで生えてなかった木が新たに、沢山生えてるんだけど。

 というか、もはやこれ、森?」



 うちの広い庭に、森が出現していたのだ。

 これは、何がどうしてこうなっていたのだろうか?リッチが住んでいたことといい、この家には何かあるのだろうか?

 リッチの時みたいに、悪い気配がない分、むしろすごく神聖な気配もする分、かえって不気味だったので、とりあえず、原因を調べてみる事にした。



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