第7話 独立王国?

-side オーウェン-




「うっ……、頭が……」



 目覚めると、そこは、見知らぬ天井だった。木造だが、しっかりとした、建物の作りで、魔法でコーティングまでされている、まるで要塞のような建物。そうだ--俺。リオンシュタットの冒険者ギルド来て、慣れないお酒を飲んだせいで、酔っ払って--あれ?途中から記憶がないな。

 まあ、いい。とりあえず、この部屋から出よう。外に出て、冒険者ギルドの受付を探す。

 わいわいがやがやの声のする方に、歩いていくと、案外すぐに見つかった。



「おお!領主!!おはよう!」

「おはよう」



 道ゆく人たちが、元気に、挨拶をしてくれる。やはり、昨日の一件で、冒険者達との距離が縮まったことは間違いない。

 飲んで話してみると、見た目の割に、意外と良い人たちばかりだった。

 


「おお!来たか!オーウェン!」



 そんな中でも、俺のことを、呼び捨てにするくらい無礼に、距離を詰めてきた変な人は、ブランだ。今日も朝から、無礼な感じである。まあ、気にしたら負けな気もするが。

 正直、不敬罪にするにも、あの強さだったら、捕まえにきた騎士達みんな倒してしまうから、無理なのではないか?と思わなくもない。だから、色々スルーした方がいいな。



「おはよう、ブラン。昨日はありがとう」

「ああ、良いって良いって……誰にでもあるよな。ああ言う悩み」

「悩み--?」

「ん??ははっ……!!まさか、覚えてないのか?昨日、お前、貴族社会のことについて、怨念を撒き散らす悲しきモンスターになってたが?」

「誰が、悲しきモンスターだ、おい。だけど……」



 確実にやらかしてるな。これ。

 お酒で失敗しているパターンだ。

 一般的に貴族が本音を外で話すことは基本ない。本音を話すことは他者に対して、弱点になり得るからだ。昨日、俺がやっていたことは明らかに酒飲んで、他者に愚痴を吐くといった行為だろう。



「大丈夫だ。ここはお前みたいな、訳アリの奴が山ほどいる。王立学院で主席だったお前が、追放されている事を知って驚く奴なんかいねえよ」



 しかもなんか、追放されたこともバレてるし……!!そこまで話をしたんだ、昨日の俺は……!!



「俺、帰りますね」

「ああ。待て待て。ちょっと、まだ、やる事があるらしい。姐さんに、お前が起きたら、呼んでこいって、言われてるんだ」

「……?分かった」



 歓迎会も終わったし、何をやるんだろうか?まだ、お酒が残っていて、寝起きの頭で考える。



 ♢ ♢ ♢ ♢ ♢



「おう、起きたかい。……ハハッ!昨日はいい飲みっぷりだったからねえ。お疲れだろうから、早めに切り上げるようにするよ」

「た、助かります」



 そういえば、今気づいたけど、エリーゼさんもブランも確実に、俺以上に飲んでいた気がする。もしかして、いや、もしかしなくても、ザル?



「さて、今日の段階で、お前さんに言っとくことは、2点ある。ギルドカードについてと、屋敷についてだ」

「ああ」

「まず、ギルドカードについて。そのギルドカードは、リオンシュタットにある、ほぼ、全ての店で、使える。国の政策でそれを身につけているだけで、全品50%くらいの値引きになる。」

「まじか--!!すごいな」

「ふふっ!驚くのはそれだけではないよ。

 このカードはね。リオンシュタットで独自に、流通しているリオンという単位の貨幣を自動で利用できるんだ」

「えっ……独自の通貨?」

「ああ。王国にはバルトという通貨が既にあるだろう?」

「はい」



 ここ、バルトシュワルツ王国では、1バルト=大体100円くらいの価値の貨幣が流通している。バルトシュワルツの中央銀行が発行して、管理している。



「それとは、別に、独自で流通している貨幣があるのさ。ほら、ここは危険な地域だろう?」

「はい」

「だから、いちいち小銭を持っているのはいけないということでね。このカードをかざすと、自動で決済されるシステムを開発したんだよ。この地域に住んでいるエルフやドワーフ達がね」

「ほえーー」



 自動決済か、王国よりも、ハイテクなシステムが整っているらしい。



「あとはそう、あんたの屋敷だけど、アンデッドが住んでるから気をつけてね」

「ああ、それはもう倒しておきました。俺、一応、賢者なので」

「ああ、そうかい?--って、あの屋敷に住んでるのは、リッチだったはず。それに、け、賢者!?」



 あれ、そこそんなに驚くかな?



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