ヴァイオリン辺境伯の優雅で、怠惰なスローライフ〜悪役令息として追放された魔境で、ヴァイオリンを弾く練習をしていたら、精霊界隈でバズってました〜

第2話 悪役令息たる所以

－side オーウェン－

　馬車でリオンシュタットへ向かう途中俺は土地について調べながら、過去のことを思い出していた。

　当時、10歳だった俺は自分で言うことでもないだろうが、俺はこの世界の誰よりも優秀な頭脳を持ち、武芸にも秀でていると自負していた。そんな俺を恨む人物など、星の数ほどいる。だから、悪役令息と呼ばれ、ソフィア……あいつに恨まれているのも同じような感じなのだろうと思っていた。

　あの日までは……。

「おじいさん。それなあに？」

「ああ。これはな。バイオリンというのじゃ。どーせ、お前には引けないから……」

　ジャジャジャジャーーーン！

　ジャジャジャジャーーーン！

　たまたま、家にあったバイオリンを弾くと、到底子供が引いたとは言えない音色の良さでバイオリンを弾けた。

　あの時の俺は何かを取り戻すように、一心不乱にバイオリンを弾いていた。なぜこの選曲だったのかは不明だが、ベートーヴェンの運命を子供ながらにして、一生懸命弾いていたのだ。

　ちなみに、今思うと最高に恥ずかしい。

「なーんか、しっくりくるな。この楽器！

　楽しい、楽しい、楽しい……！

　うっ……！」

「ぼっちゃま！！」

　俺はその場に倒れた。

　そして、俺が悪役令息と呼ばれる所以について、思い出したのだった。

　♢ ♢ ♢ ♢ ♢

　俺－－オーウェン=テューナーという人間は、この乙女ゲームの世界における悪役令息のポジションで、転生してきた人間らしい。

　前世の俺は、バイオリニストだった。

　一般的にバイオリニストというと、ソロで弾くバイオリニストとオーケストラで弾くバイオリニストがあるが、俺の場合はソロでコンクールにでているタイプの人間だ。まあ、俺には社交性もないからオーケストラに入るという選択肢がなかっただけであるが。

　さて、そんな俺にも楽しみがあった。

　それは前世で乙女ゲームをプレイしていたことだ。ちょっと前だったら女子っぽいと呼ばれるかもしれないが、まあ、最近は男子でも結構やっている人間もいる。

　俺も暇つぶしにイケメン達の言動に突っ込みながら、プレーをするという暇人の極みみたいな事を楽しみにしていた。

　さて、そんなところに転生してしまったという事はこの世界は乙女ゲームの世界であるのだが、この世界がどう言った世界であるかを説明しよう。

　この世界は、“CHAT-GPP作⭐︎テンプレ乙女ゲーム⭐︎“の世界だ。その名の通り、AIが作った乙女ゲームである。以下がパッケージに書かれていた、AIが実際にしていたこの乙女ゲームに関する説明だ。

◯あらすじ◯

　この世界の主人公は、普通の女子高生として生活しています。しかし、ある日突然、彼女は異世界に転生してしまいます。その世界では主人公は美しい姫君として生まれ変わり、周りの人々から大切にされています。

　しかし、彼女は自分がどうして転生してしまったのかそして元の世界に帰る方法を探すため、冒険を始めます。

　途中で、主人公は異なる候補者たちと出会います。彼らは、異世界の王子や貴族、騎士など、主人公にとって重要な存在となります。プレイヤーは、主人公と彼らのロマンスを進めるため、選択肢を選びながらストーリーを進めていきます。

　候補者たちは、それぞれ個性的なキャラクターを持っています。彼らは、主人公に対して甘えたり、優しく接したり、時には強引なアプローチをすることもあります。プレイヤーは、彼らの行動や発言から、彼らがどのような人物であるかを判断し、自分の好みに合わせたルートを選択することができます。

　ストーリーの中で、主人公は異世界で起こる様々な事件やトラブルに巻き込まれることもあります。プレイヤーは、主人公や候補者たちと一緒に危機を乗り越え、真実を解明するための手がかりを探すことになります。

　最終的に、プレイヤーは、選択した候補者とのエンディングを迎えます。エンディングには、主人公と候補者たちの関係がどのように進展するかによって、複数のバリエーションがあります。プレイヤーは、自分の好きなエンディングを迎えることができます。

◯END◯

　こんな感じのストーリーである。

　もちろん、実際のゲームと現実は異なるわけで、この世界の元女子高生だった、ソフィアは乙女ゲームの世界に転生できた事に喜びすぎてしまったのだろう。

　最初の頃に比べ、調子に乗りすぎて、どんどん傲慢になっていった。

　そんな、傲慢なヒロインを止めることが出来る唯一の人間－－それがこの俺、悪役令息だ。俺が悪役令息と呼ばれる所以－－その理由は、“ヒロインの攻略者の好感度を下げることが出来る唯一の存在”だからである。

　通りで、出会った当初から、ソフィアに、やたらと警戒されているわけだ。

　ソフィアの暴走を止めるため今まで頑張った……、しかし、残念ながら、どうやらそれもここまでのようである。

　しばらくは、ゆっくり休みながら今後の事でも考えようか。俺がそうこう考えている間にリオンシュタットについた。

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