第22話 黒刀
「戻ってきたぁぁぁ!」
サト子は王国の城下町の中で声を上げた。
周りの人々が変な物を見るような目で見てきた。
「……サト子、声大きい…」ニーナがボソッと言った。
「そうですね。非常に恥ずかしいです。」とノペルも言った。
「…ごめん。つい。」
マカの村から森を抜けてまた王国の城下町に帰ってきたのだ。
「ここはいつ来ても人が多いですね…僕には色々な感情が見えてしまうので少し苦手なんですよ。」
「あれ?ノペルは王国に来たことあるの?」
「えぇ、あれですよ。サト子さんと最初に出会った時、僕に道を尋ねたでしょ?あれは王国からの帰りと言うか……まあ城の中までは行ってないんですがね。」
サト子はノペルと最初に会った時、ノペルが王国の方から来たのを思い出した。
「あぁ、そういえば。ノペルは何しに王国に?」
「いえ、少し探し人といいますか。まあ気にしないでください。こっちの話なので。」
「ふーん。ノペルは隠し事が多いのね。」
ノペルにも話したくないことがあるのだろうかとサト子は思った。
「……やっぱりこの人怪しい…」小声でニーナが言ってきた。
「まあまあ、色々助けてくれてるのは事実だしね。」
「聞こえてますよ!僕は目が見えない分、耳がいいので」
サト子とニーナは顔を見合わせた。
「あらら……」
城の前につくとまた前回と同じ門番が二人立っていた。
「……ん?あ!?お前は!いつぞやのモンスター女!」
「相変わらず失礼な兵士ね」サト子はストレスが溜まった。
「王様に会いにきたのよ。ほら、私達魔物討伐してきたからさ!」サト子は自慢気に言った。
「魔物が魔物討伐か…」兵士がボソッと言ったのをサト子は聞き逃さなかった。「このアホ兵士!さっさと私達を城に入れなさい!あなたも討伐してやろか!!」
「うっ………こんな危険な女を入れて大丈夫なのか…。まあ、スベトラニャ様もお前達が来たら入れろとおっしゃっていたからな…仕方ない。入れ。」
「黙ってそうすればいいのよ!」
「……サト子…落ちついて…」ニーナが言った。
「落ちついてるよ!このアホ兵士がぁぁぁ…」
「では、僕は宿でも探しに行きますかね。」とノペルが言って城下町の方へ戻ろうとした。
「……あれ?ノペルは王様に会わないの?」
「はい。僕はこういうところはやはり苦手で…。お二人で行ってきてください。ではまた後で」
そう言ってノペルは行ってしまった。
城の中へ入って廊下を歩いていると前からスベトラニャが歩いてきた。
「あら?あなた達……無事だったのね」
「あ、スベトラナさん!無事戻ってきました!」
ニーナはサト子が間違えたのを分かっていたが指摘しなかった。
「へぇー…案外やるじゃないの、今日は王様に会いに?」
「はい!」
そう言ってスベトラニャと一緒に王の間に行くことにした。
王の間につくと王は誰かと話をしていた。
「失礼しますクルス王、二人が帰ってきました。」
スベトラニャがそう言うとクルス王はこちらを見た。
「おぬし達、よく戻ってきたな!なぁに、すでに報告は来ておる。魔物を無事退治できたようだな。」
「はい!中々強敵でしたが無事仲間とともに退治してきました!」サト子は元気よく答えた。
「ふむ。報告によると銀髪の美少女、盲目の青年、モンスターが一匹の三人で退治してきたと聞いたが……はて、もう1人は見当たらないようだな?」
おい、誰がモンスターじゃ
「ごほんっ………もう1人もいましたが今は宿を探しに行っています。」
「宿?そんなもの我に言えばすぐ手配すると言うのに……。まあよい。……あ、そうだ。褒美をくれてやろうの。いや、その前に………」
クルス王はさっきまで話していた男に目を向けた。
「この男は今この国の騎士団を率いておる。アトラスという者だ。アトラスには魔物退治や、国の村などを守る役割を任せておる。アトラス、こちらは……えっーと………あぁサト子とニーナだったな。サト子………とてもいい名だ。」
サト子は人生で初めて名前を褒められたのでさっきモンスター呼ばわりされて悪くなっていた機嫌が治った。
「どうもサト子さん。アトラスと申します。」
サト子はアトラスを見た瞬間胸がドキっとした。
すごいイケメンだ……
ヒカル君にどこか似ているが、アトラスはさらに大人の色気があるようだった。
「……ちょっと………ねぇ、サト子、どうしたの」
ニーナに揺すぶられてハッとサト子は我に返った。
「あ、あ、あれ?私…」
「サト子どうしたの?さっきからボーッとしちゃって…顔も真っ赤だけど大丈夫?」
サト子は自分の頬を触ってみた。
……熱い。熱があるのかも。
「では、クルス王。私は北東の村に行ってまいります。」
サト子がまたアトラスの方へ目を向けるとクルス王と喋っていたアトラスは帰ってしまうようだ。
「ふむ。ではアトラスよ。頼むぞ。」
「はい。失礼します。」アトラスがクルス王から離れてサト子の方へやってきた。
「サト子さん、ニーナさん、魔物退治の方くれぐれも気をつけてください。何かあれば是非私達騎士団を頼ってくださいね!……おや、サト子さん顔が赤いですが大丈夫ですか?」
そう言ってアトラスはサト子の目をじっと見ながら額に手を置いた。
サト子は「ひっ!」と小さく声をあげてしまった。
「……少し熱があるようですね。大変な戦いをしてきっと疲れているのでしょう。今夜はゆっくりおやすみください。またいずれ会いましょう…」
そう言ってアトラスはニコっとして行ってしまった。
「ではサト子よ、褒美は何がよいかな?……ん?サト子よどうした?」
クルス王の問いかけにもサト子は硬直したまま反応できなかった。
(やばい何この気持ち!!心臓がバクバクする!恥ずかしい!ヒィ!とか言っちゃったよ私!ヒィ!って何よ!魔物の泣き声みたいな感じに思われたんじゃ……)
「サト子よ………。おーい。サト子さぁーん?」
(恥ずかしい恥ずかしいきっとあの人変な奴って思ってるよね!変な泣き声する魔物だなとか思ってるよね!?こいつ新種の魔物か?とか絶対思ったよね!?)
「……サト子、ねぇ、サト子大丈夫?」
「へ!?何よニーナ!?私が魔物だって言いたいの!?」
「違うけど……クルス王が呼んでるよ?」
サト子は改めて周りを見回し状況を整理した。
「……………あ、そうね。アハハハ。えーとどこまで話しましたっけ?」
「いや、だから褒美は何がよいか聞いているのだ」クルス王は大丈夫かこいつ?的な目でサト子を見ていた。
「あ!あぁご褒美もらえるのね!!ありがとうございます!えーと……ニーナ、なにがいいの?」
「…私はなんでも。サト子が決めて。」
サト子はんーっと考えてお金がないなと思った。
「……では、金銀財宝を………」
「そうだ!お主、前に着ていた制服や武器はどうしたのだ?棒切れをもっていただろう?」
「…あの、魔物との戦いの時に……、狂暴な魔物との壮絶な戦いの末に我が愛刀、ウッドソードは破壊されてしまいました……服は村の方々がお礼にと…」
ニーナはサト子があの木の棒に名前をつけていたんだなと思った。
「なるほど……。武器がなくてはこの先も厳しいだろう。よし、サト子に何か武器をくれてやろう。ほれお前達、城の使っていない武器をいくつか持ってまいれ」
クルス王が身近の兵士に命令し、兵士はいくつか武器を持ってきた。
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