第4話 暗転

川で水を汲んだ私は小屋に戻るため道を歩いていた。

 またモンスターが出るかもしれない。だけど私はきっと勇者だから負けない!


 変な自信がついていた。



 数十分後、小屋についた私は違和感に気付いた。


「あれ……ドアが壊れてる…」


 小屋を出た時は普通だったのに……


「アイザックさん?」私は小屋の外からアイザックを呼んでみた。


 ……しかし返事はない。


 なんだか胸騒ぎがする。先ほどイモムシと戦った時とは違う胸の高鳴りがした。

 何か嫌だ。嫌な予感がする。怖い。


 嫌な汗が全身から吹き出していた。


「…アイザックさん?いるの?」


 私はもう一度聞いてみた。


「うぅ……」


「アイザックさん!?」私は恐る恐る小屋の中を見た。


 その光景を見て血の気が引くのがわかった。



小屋の中は荒れていた。

 机や棚はボロボロに壊されており、ベッドも引き裂かれ、壁や床も傷だらけになっていた。


「アイザックさん!」


「う…サト子か…」


 アイザックは血まみれで部屋の隅にいた。


「アイザックさん!なんでこんな……何が…何があったの!?………そうだ!病院!救急車!電話しなきゃ…………スマホがない!!」


 私はパニックになっていた。


「どうしよう…どうしたらいいの!」


「サト子……よく聞け…」


 アイザックは息も切れ切れになりながら話した。


「アイザックさんどうしたらいいの?!血が……」


「いいからよく聞くんだ。サト子、これはモンスターの……仕業だ……お、俺は…モンスターに襲われたんだ…」


「モンスターって………」


 私は素人ながらアイザックが強い人なのだと感じていた。

 長年修行をして強さを求めたようなそんな強さがあり、教える時もかつてそのような弟子をもっていたかのような、そんな偉大な強さを感じていたのだ。


アイザックさんが、そう簡単にやられる訳がない。


「サト子……俺は何年も前からずっと一人だったんだ。」


 ゴホッゴホッと咳をしてアイザックは続けた。


「訳あって一人にならなければならなかった。しかし……それでも時々、どうしようもない妙な…気持ちが………込み上げてくる…」


 嫌だ嫌だ。アイザックさん。死なないで。


「そ、それは…急にやってくるんだ………、胸が苦しくなり……ゴホッ。俺は……なんだろうと、思って、いた…」


 私は涙と鼻水が止まらなかった。

アイザックさんも涙を浮かべていた。



「寂しかったんだ…きっと……こ、このまま死ぬまで一人で、生きていくこと…が。だから、」



 ゴホッゴホッと咳払いをして血を吐いた。



「アイザックさん!もう、喋らないほうがいい…!」



 「い、言わせてくれ…。だ、だからお前が来てくれたこと、嬉しかったんだ……自分の娘のような…そ、そんな気持ちだった……」


アイザックさん、私も…本当のお父さんのように… 

 

「それから…お前に、頼みが…ある…」


頼み?


「…………魔王を…倒せ。魔王を…倒して世界を、救ってくれ…すべては魔王のせいなんだ…」


 

 魔王?何を言っているの?この世界には魔王も存在しているの?


「と、とにかく……こ、ここから南に行けば城がある……そこへ、行け…」


 城?なんで…?城に何があると言うの?


 「それから、……これを持っていけ…」


 アイザックは自分の胸からペンダントを取り出した。

「これを持っていれば……役にたつ、はずだ……それから最後に一番大事なことを…」


 最後?嫌だ嫌だ。死なないで。




「…………ありがとう。お、俺の、元に来てくれて……ありがとう…。お前なら…どんなに、辛いことがあっても、乗り越えれる……負け…るな…」


 


 私はアイザックの手を握りながら泣いた。

 アイザックの手の中にはペンダントが握りしめられてた。

 


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