第2話 異世界?
私は制服のポケットを探った。
……あれ!?スマホがない!!
そういえば、カバンも見当たらないし制服を着てる以外荷物が何もない!
私は椅子に座り何やってるんだこいつと言いたげな顔でこっちを見ているアイザックをチラリと見た。
「あのー…私のスマホとカバンは…」
「すまほ?カバン?いや、お前はそんなもの持ってなかったぞ?……そう言えば手には気味の悪い人形を握っていたな。」
そう言ってアイザックは棚の上から見覚えのある人形を取り出した。
「あ!それはランラビ!」
ランラビとは女子高生の間で今流行っているキャラクターだ。特徴はピンクのウサギのキャラで走っているポーズをしている。
アイザックはランラビを私の手にヒョイと置いて言った。
「そいつはなんなんだ?呪いの人形か?ワシがそいつを掴んだ時恐ろしい音と気持ちの悪い物が出おったぞ。」
ランラビの特徴はもう1つあって、お腹の部分を押すとギャァァと断末魔とともに目が飛びだし、さらに口から内臓が飛び出る仕掛けになっていた。
「なんで私はランラビを持っていたんだろ……他に荷物は……」
まさかこの人が……いや、疑っちゃだめだ。この人は私が倒れているのを助けてくれたと言っていた。
(……私の記憶では学校でヒカル君に告白してフラれて制服で雨の中を走っていたはずだ…でも制服は濡れてないし、本当に何があったんだろう)
とにかく外を見てみよう。
私はランラビをポケットに入れ、ドアを開けて驚愕した。
「え…?なんで!どうなってるの?!」
そこには生い茂った草や木が一面に広がっていた。まさに森の中だった。
「だから言っただろ?ここはシッドウーヤの森。お前はワシが森の中で山菜を取っている時、倒れているのを見つけたのだ。お前こそ変な服を着ていったい何をしていたんだ?」
「私は…雨の中を走って……」そうだ。私は泣きながら家に向かって走っていた。
もちろん周りは森なんかじゃなかったし、住宅街のど真ん中だった。
本当にどういうことだろう。
…まさか、私は死んだの?
事故?それとも、フラれたショックで自殺でもしてしまったの?
…いや、それはない。私は自殺なんかしない。
でもここが、天国という可能性はあるかもしれない。
何より荷物が何もないし、このアイザックって人も不思議な雰囲気がする。神様か何かなのかも。
「あの、私は死んだのですか?」
アイザックはビックリした表情でこっちを見た。
「何!?お前死んでるのか!?」
どうも話が噛み合わない。
胸に手を当ててみるとドクドクと心臓の鼓動を感じた。
いや、私は生きてる。死んではいない。
他に考えれるとすれば………………転生した?
あのよくあるような異世界ファンタジーに勇者やモンスターとして?
まさか。
私はドキドキと少しワクワクしながら顔を手で触ってみた。んー、変わってはないかも。
「アイザックさん、鏡はありますか?」
「鏡はないが…」
私は部屋を見回して窓があるのを見つけた。
窓の反射で自分の姿を写してみるとそこには見慣れた制服を着たモンスターが立っていた。
……いや、私だ。紛れもない。窓に写っていたのは人間とは思えないレベルのモンスターのような顔をした自分が立っていた。
うん。いつもの自分だ。
私は少しガッカリしながらアイザックの方を向いた。
……。
アイザックは私が窓に写ってないんじゃないかと心配になり後ろから覗いていたようだった。
「アイザックさん、あの、説明お願いします…」
グゥー。
「うむ。とにかくお前は生きてるようだし、生きていれば腹は減る。飯でも食べながらここの話でもしようか。お前のことも聞きたいしな。」
そう言ってアイザックは棚から皿を用意しだした。
私はこの人はいい人なんだと直感的に思った。
とにかく、今はご馳走になろう。
出てきた料理はとても料理と言える物ではなかった。見たこともない山菜を鍋で茹でて塩などで味付けしただけの物と、パンが一つだった。
一応助けてもらっといて食べ物に文句を言うわけにもいかないのでありがたく頂いた。空腹のせいかとてもおいしく感じた。
食事を頂いている間にこの国、世界のことを色々聞かせてもらった。
この世界は先ほど感じたとおり、異世界のような場所だった。そこら中にモンスターなどが徘徊しており、私はアイザックさんに見つけてもらわなければ危険だったらしい。他にも、城があったりダンジョンがあったりまるでRPGの世界だ。
私はやはり異世界のファンタジーの世界に来ているようだ。
しかし、転生したかどうかはわからない。見た目もそのままだし…つまり死んでここに来たのではないみたいだ。
私は生きている。
私は些細なことでは死なない。
今私がいるのはシッドウーヤの森。
シッドウーヤの森はグラインドンという国の中にある。
そしてグラインドンを現在統治しているのがクルス王だ。
クルス王に関してはアイザックは多くは語らなかった。(何かあったのか…)
にわかには信じられないが元の世界?に帰るにはとにかく色々情報を聞いて帰る道を探すしかない。
この人が嘘をついているとは思えないし…
そもそも私は家に帰れるのだろうか。
アイザックさんにも私の話をした。
私の世界の話、ここに来る前の記憶。
アイザックさんが私の話を信じてくれたかどうかはわからないがなんだが嬉しそうに聞いてくれた。
それよりも私には私自身に何があったのかが気がかりだった。雨の中走って……それから…
だめだ全然思い出せない。
アイザックさんはゆっくり思い出すといいと言ってくれた。私は森を彷徨うわけにもいかなかったため甘えることにした。この人はいい人そうだし、しばらくここにいよう。
記憶と帰る道が見つかるまでは。
「そうだ。」アイザックさんが言い出した。
「お前の名前を聞いてなかったな。名前はなんと言う?」
「私は……サト子っていいます!よろしくお願いします!」
私はこれから何が起きるのか、いつ帰れるのか不安だったが、少しワクワクしていたのだった。
あんなことが起きる前までは…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます