第11話 フランス1(パリ)

 イギリスからフランスへはSeaSpeedと言うホバークラフトで渡った。ホバークラフトはホバークラフト社製の商品名であるが、船種名のように使用されている。ホッチキスやウォークマンと同じように。一般的にはホバープレインと言うらしい。

 さて、波止場でホバークラフトに乗り込んだ。一旦浮き上がって移動し、海面に着水した。その後、海面を浮揚したまま高速で走り出した。薄い小石をアンダースローで池に投げたときみたいに、海面を小さなジャンプを繰り返しながら気持ちよく進んで行く。わずか40分でフランス入りした。

 パリまでの車窓からの景色は豊かな田園風景で、イングランドよりも丘が多く家の庭は少し広いようだ。パリ到着後すぐにフランス・フランのT/Cを両替しようとしたができない。何故か……? 分らない。追及するのも面倒なのでスイス・フランを両替した。安いホテルに荷を解いたが予想通り見事に汚い上に窓もない。取り敢えず、2泊する事にする。


 パリでの行動初日は乗り物は使わず自前の脚で歩き回った。オペラハウス経由でコンコルド広場へ。ここで方向を右に変える。見えました。あれこそ有名な凱旋門であろう。すぐ近くにセーヌ川が流れ、少し遠目にはエッフェル塔らしき塔が見える。

 流石にこの景色を見ると感激する。セーヌを見下ろした後、凱旋門目指してシャンゼリゼ通りを歩く。感無量。凱旋門からは12方向に見事に道路が伸びている。上から見ると巨大な時計に見えるのだろうか⁉


 午後から、エッフェル塔まで歩いてみた。周囲は公園になっており近くにはセーヌ川が流れ、良い構図になっている。公園を散策した後塔に登ってみる。エレベーターはなく自前の脚で。脚は平気だが眼が眩みそう。上からの眺めは素晴らしく、凱旋門もセーヌ川もきれいに見えた。


 汚いホテルに別れを告げて、リヨン駅近くの安いホテルに移った。最初のパリ駅近くのホテルと同料金とは思えぬ良い部屋だ。初めからここにしとけば良かった。明るく広い部屋で何とダブルベッドである。

 荷を解いた後、これも注目のノートルダム寺院に向かって歩く。同名の寺院はパリだけでもかなりの数があるようだが、ノートルダム寺院と言えば、『ノートルダムのせむし男』である。ストーリーはよく知らないが、タイトルだけは子供の頃からよく知っている。『美女と野獣』のようなイメージがあった。

 ノートルダムはフランス語で "Notre-Dame" で私たちの貴婦人という意味らしい。勿論、マリア様の事である。全くの余談だが、フランスのトイレは、婦人用には "Dame" と記されている。間違わないよう、婦人用だから『 "Dame" に入っちゃダメ』と憶えていた。

 内部のステンドグラスは実に美しい。特に中央の『バラの窓』は素晴らしい。カナダでもヨーロッパ各国でも美しいステンドグラスは数多く見られたがここがナンバー1かな⁉ 聞きなれている所為か、教会と言うと何か庶民的に聞こえるが、寺院というともう少し格調高く感じ、聖堂と言うととても厳かに感じるのは自分だけかな⁉

 

 ホテルに戻り、共同のシャワーを使っていたらドアーのノックとともに女性の金切り声が聞こえてきた。これは『シャワー使用禁止』と言う意味なのか⁉ やむを得ず洗髪しないで出たのだが、このホテルでは全く英語が通じないので、ジェスチャーに頼るしかないようだ。

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