第二章 西欧
第5話 西ドイツ、オランダ
18日間の北欧の旅に別れを告げる。
何か北欧のおみやげを買いたく、一便遅らせ北欧らしい人形を2つ買った。まずは満足。オデンセを発った後、車窓からの風景は長閑で藁ぶき屋根の農家が時折見られた。
列車が国境を越え西ドイツに入ったところで、列車内で税関・入国管理があったが、同じ部屋にいた乗客の一人が税関駅で下車させられた。何を所持していたのだろう?
ハンブルクのユースホステルは地下鉄駅のすぐ側にあり港がよく見える。ここで愛嬌のある中国系の若者と親しくなった。インドネシアで生まれ育ち、現在はハンブルクから120㎞の地方都市の大学生らしい。誘われて卓球をしたがどちらも英会話同様下手で楽しかった。中国語、ドイツ語を話すようだ。
翌日、ユースの前からビスマルク記念像、歴史博物館、ミヒャエル教会、市庁舎、美術館、小アスター湖、中央駅とのんびり歩いてみる。教会には入れなかったが、近くにあったレストランで食べたハンバーガーは流石に本場の味だ。子供の食べ物のイメージがあったハンバーガーだったが本場物は違う。店のマスターに味について尋ねられたが、自信満々の表情だった。
アスター湖の水は汚かったが、夜には周囲の建物に灯がともり美しく見えた。
翌日はオランダへ向かう。アムステルダム行きの列車に乗ったのは良いが、途中の乗り換え駅も調べず飛び乗ったのでその都度乗務員に訊ねながら無事到着、やれやれだ。途中、オランダに入ると車窓から風車が4回ほど見られた。
観光案内所で紹介してもらった安いホテルに落ち着いた。ユースも良いがやはり個室が落ち着ける。部屋に案内してくれたのはホテルの娘で若くて美しい。てっきりオッサンが顔を出すものだとばかり思っていた。
このホテルは建物自体がホテルではなく、ビルの一室がホテルの部屋になっている。ムードは皆無だが部屋は小ざっぱりしている。共同のシャワー室も清潔であった。
オランダ風ビフテキはボリューム満点で美味しく満足した。北欧の料理とは雲泥の差があった。
私はオランダと言えば ”風車” であるが、アムステルダムと言えば、何と言っても ”アンネ・フランク” である。
アムステルダムの行動第1歩めは、 ”アンネの家” の訪問である。今は博物館になっているその家は思っていたより広い。1945年、16歳で亡くなったアンネ・フランク。生きていたらまだ51歳。私の母より3歳も若いのに…。写真のアンネはどれも微笑んでいる。明るい娘だったのだろう。
英和辞典を片手にじっくりと見て回ったら、2時間を要した。自分の後から入室してきた訪問客が次々と追い越していく。日本人らしき若い女性の2人連れも20分ぐらいでいなくなった。
アンネの家は運河に面しているが、家族が隠れていた部屋は後側にある。アンネの部屋には古い写真がいっぱい貼られている。運河に面した家はどれも幅が狭く奥行があり上に高く、隣家との間に隙間が殆ど無い。運河沿いは荷物の運搬に便利な為、地価が高かったのだ。
アンネの家の後、街をブラついてみる。北欧と比べると物価はずいぶん安いようだ。骨とう品を扱う店もありウィンドウ・ショッピングには良い。街自体はあまり美しいとは言えない。運河はかなり汚れている。
翌朝は雨だったので一日美術館見学をする事にした。
流石に国立美術館は広大なスケールで館内で迷子になりそう。16~17世紀の絵画が数多く展示されている。有名なレンブラントの ”夜警” は特別扱いでガラス張りにされていた。
ゴッホ美術館はすぐ近くにあった。1階から4階までゴッホの作品ばかり展示されている。何故か、日本人の国定豊国という人の浮世絵も随分展示されている。両美術館とも、日本人客もかなり入っていた。
翌日、曇り空の中、街中を歩き回った。
注目のマヘレの跳ね橋はなかなか面白い。道路や水路の交通規制のための橋の上げ下ろしであろうが、木造でもあり何か古風な感じ。真ん中に立っていると車が通るたびに橋が沈み、少々驚いた。すぐ近くに同じような跳ね橋があるが、側に面白い建物がある。古い船を改造して運河の縁に固定しているようだ。甲板が屋根になっており苔むしている。運河使用の許可を取っているのだろうか⁉ アムステルダムでは運河の他の場所でも、このような小さな船の家がたくさん見られた。街中では倒れかかって、つっかい棒でやっと建っている家も見られた。危なっかしくて側を通れない。
その後、レンブラントの家を探すのに随分時間を費やした。一軒の家ではなくビルの中の数部屋で立派な建物ではあった。
* 実は、レンブラントの『夜警』を今までずっと『警鐘』だと思ってました。当時の日記でも『警鐘』となっています。
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