第4話 デンマーク・オデンセ(アンデルセン出身地)

 タンペレからツルクへ列車で移動した後、ストックホルムへのヴァイキング・ラインの船旅もなかなか快適である。2人部屋に1人の優雅な夜の船旅であった。

 ところで日本語のパンフレットではこのヴァイキング・ラインがヴィキング・ラインになっている。 Viking Line だから、ヴァイキング・ラインで良いはずだ。Viking とは何世紀か以前にこのバルト海で活躍した海賊船か船長の名前だったと思う。

 日本の食事スタイルのヴァイキングの名前の由来になっているようだが、海賊どもの豪快な食べっぷりから食べ放題へと意味合いが少し変わっているようだ。


 ストックホルムでコペンハーゲン行きの列車に乗り換える時、少々あわてたがスウェーデン・クローネを残しておいたお陰でぎりぎり間に合った。途中ヘルシングボルグからエルシノアまでは列車ごとフェリーに乗船するが、船中での昼食に時間を取られあやうくフェリーの中に置いてけぼりを食いそうになって焦った。まあ仲間が10人ほどいたのだが、列車が一度駅から離れた時は肝を冷やした。列車はすぐ引き返してきたが、これは北欧式ジョークかな⁉

 

 日本を発った時にはデンマークでのオデンセ滞在は考えてなかった。現地で得られた情報からぜひ訪れなければと決心した。何と言っても日本でも有名なアンデルセンの故郷である。

 アンデルセンと言えば「人魚姫」や「みにくいアヒルの子」も有名だが、私は「マッチ売りの少女」が忘れられない。小学生時代に親から買ってもらった(親戚の伯父さんからのおみやげかもしれない)絵本を読んで、とてもとても可哀そうだったのが未だに脳裏に残っている。

 

 オデンセの駅に到着した後、観光案内所を訪ねたが閉まっていた。オフシーズンの精か、土曜日は案内所も両替所も閉店のようだ。当然明日も同じだろう。ならばユースホステルを利用する事にして、荷物をコインロッカーに預け、先ずはアンデルセン博物館に行ってみる。1時間半ほど見学したところで閉館となった。アンデルセン本人の勉強部屋やディケンズへ宛てた手紙など興味深いものが見学できた。

 又、付近の家々の可愛い事。まるで絵本に出てくる小人の国のようだ。


 ユースでカリフォルニアの大学で教鞭をとってる塚田さんにお逢いした。翌日には発つそうではあるが私同様両替のチャンスを逃してデンマーク・クローネを持ってないそうである。翌々日の予定の私が両替してから2人分払うことで一件落着。塚田さんからは日本円で貰った。

 このオデンセのユースホステルは会員またはパスポート携帯者を除いては、後払いでは泊めないようだ。パスポートを預けて月曜日に両替後支払う事で了承を得た。


 夜、同室の若者に誘われてTVでチャップリンを観てる途中で席を外し、塚田さんと付近を30分ほど散歩した。どの家も可愛く美しい。赤レンガ造りで周囲には樹々が植えられている。小さな窓が1階 (Ground Floor) から 3階 (Second Floor) までいくつもあり、カーテンがきれい。屋根はトンガリ屋根で煙突が太い。これならサンタさんは楽だろうと納得した。

 塚田さんには日本と各国における生活環境の違い、ユーゴスラビアからの旅のルートやお気に入りの街の話も聞かせて貰った。

 翌朝は快晴だった。朝食前に塚田さんとユースの裏の辺りを散歩してみる。小鳥の囀りを聴き、落葉を踏みながら林の中を歩く。街路樹がこれまた見事だ。

 朝食後、アンデルセン博物館で塚田さんとは別れた。男同士、特に感慨はない。

 通りすがりの素晴らしい家々や街路樹を観ながら、屋外博物館に行ってみた。各小屋はどれも似たような造りであったが、夫々一見の価値あり。風車はひときわ目立って堂々としていた。


 翌日月曜日、デンマーク・クローネに両替はできた。融通が利かないことに16時まで受付はできなく、もう1拍する事になった。ユースは宿泊費は安いし、まあ急ぐ旅でもない。

 再度アンデルセン博物館を訪れた後、アンデルセンが2~14歳のころ両親と住んでいたという家を訪ねてみた。今は博物館になっている。父親は貧しい靴修理職人で、わずか2間しかない部屋が寝室、居間、仕事部屋を兼ねていたようだ。

 

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