第130話 成美未果は教師である。
「本当にやりたいワケ、か」
俺はベットで天井のシミを眺めながら考える。
最近はどうも自分が自分でわからなくなってきている感じがする。
これも人と関わるようになった弊害なのだろうか。
そんな風に思っていると、俺の頭の隣に置いてあったスマホが震えた。
なんだろうと思ってスマホを手に取ると通知が3件。
その一番上には
静 『朝日からもらったよ。おやすみ』
どうやら井伊からのメッセージのようだ。
なんだろ、文字列だけでも王子様感が出てる。これがオーラか
・・・てかこれどう返せばいいんだ?
裏生徒会の奴らとかなら「おやすみ」って返せるけど、流石に井伊にはまだ気が引けると言うか・・・。でも向こうが言ってきてるワケだしな・・・。
俺は気付けばどうでもいい問題に意識が逸れていく。
そして俺はそのまましばらく悩み続け
「・・・って、初恋か!」
俺はどうにでもなれと「おやすみ」とだけ返信をしてため息をつく。
そういえばもう一つ通知が来てたな。と思い出して確認をする。
それは朝日からだった。
『静ちゃんに連絡先教えました!』
ご丁寧なことだ。俺は感心してもう一つ下のメッセージに目をやる。
『・・・なんで私は和樹くんに女子の連絡先をあげてるんでしょう・・・。というか静ちゃんとそんなすぐ仲良くなったんですか!どこまでいったんですか、どうなんですか!?』
・・・
「寝るか」
俺は今日の体力を使い切ったため、スマホを乱暴に投げ捨て眠りについた。
☆
放課後の自教室。
俺はまだ、自分がわからないでいた。
文芸同好会を存続させるためにはどうするべきかを考えていたせいで、井伊から言われた『自分の中にある、本当にやりたいワケ』がなんなのか正体が掴めない。
元々俺が言っていた『アイツらの居場所を守る』だなんてあからさまな嘘は、井伊には通用しない様だった。
俺は椅子を引いて重心をずらし、足を伸ばしたままに天井を仰いで目を瞑る。
しばらくその体勢のまま考え続けていると、急に顔面に何かが落とされた。
「痛っ」
なんだこれ、硬くてスベスベしてる。そのくせ顔に当たってる部分はひんやりとしてる・・。
ええいと俺はうんざりしながら顔面のそれを取る。
見ると数学の教科書が。
「は?」
「あぁ、悪い悪い。眠ってたからな、風邪をひいたらいかんと思って掛けといたぞ」
良い事しといたぞ!みたいに親指を立ててる成美先生。よく見ると何やらダンボールを抱えている。
「すいません、自分数学アレルギーなんでお返しします」
文系の俺は呪物を返すために先生のそばへと歩み寄る。
「おいおい、これを見ろよ。お前、今の私は両手が塞がったか弱い女子だぞ?そんな私には薄い教科書一つでも重いんだ。それもって着いてこい」
元からそのつもりだったのだろう。意地悪を言う時のニヤニヤした成美先生の表情を見て俺は確信する。
つまりこれは言い返すだけ時間の無駄と言うわけだ。
そう諦めて、俺は静かに成美先生の後を追った。
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