第10話 魔女の家

戸を開くと中から鼻に甘い花と木草の香りが広がりました。


「今光を入れるよ」


ラミさんがガーテンを開くと薄暗い室内に光が入りました。

木の壁で覆われた室内。

壁棚には様々な色の液体が入ったビーカーが並べられてました。

また別の棚には古い書物や何に使うか分からない道具が置かれてました。

そして部屋の中央には大木をスライスし加工したテーブルが置かれ、その周りに座板が細木で編まれた椅子が並んでます。


(素敵な部屋。ご主人の話だと魔女の家ってもっと怖いイメージだったけど此処は全く違う)


「好きにくつろいで、今お茶を入れてくるから」


そう言うとラミさんは奥の部屋へ行きました。


「僕本当に此処に居ても良いのかな」

「大丈夫だよ君も今日から同居の友だ」


不安な気持ちの僕を察してセイラさんは優しい笑顔で答えを返してくれました。


「セイラ君の言うとりさ、階段を上ると寝室もある。自由に使うといいさ」


そう言いながらラミさんがお茶とお菓子を持ってきてくれました。


「甘い香り……それにお茶に花びらが浮いる。可愛い」

「この森で採れる花のフラワーティーさ」

「精神に作用して不安が消えて気持ち良くなれるよ。ふ、ふ、ふ」

「その言い方……本当に飲んでも大丈夫なんですか?」

「ラミ冗談でも不安を煽る言い方はやめろ」

「これは私も飲んだ事のあるものだ安心してくれ」

「セイラさんがそう言ってくれるなら」

「おやおや私の事はいまだ警戒中かね?」


僕は出されたフラワーティーを口に運びました。


「わぁ……美味しい」


優しい花の香りが鼻を抜け、柔らかな甘味が口に広がりました。

後に残る口当たりもとても良く、まるで体に染み込む様に飲み干してしまった。


「あ、もう飲んじゃった……」

「気に入ったかね?ほらおかわりもどうだい?」

「はい。いただきます」


カップに注がれたフラワーティーを今度はゆっくりと味わいながら飲みました。


「はぁ……気持ち良い……」


(はぁ、肩が抜けて頭がぼうっとする……やっぱり気をはってたんだ僕)


僕は二人がしゃべっている様子をぼうっしながら見つめてました。


(そういえば僕ご主人とツーリングする直前だったんだよな……)

(僕が居なくなって……寂しいって思ってるかな?……)

(僕は……ご主人と会えなくて……寂しいよ……)

(うぅ……視界がぼやけて……良く見えない)


ご主人の事を思うと、眼がしらが熱くなってきました。


「カウルさん大丈夫かい?」

「……あ、はい!?ごめんなさい……話を聞いてなくて」


僕ははっとしてゴシゴシと目を拭きなが答えました。


「いや良いんだ……カウルさんには負担をかけてしまったから」


「おやどうする?今日はもう休むかい?」

「それじゃ元の世界に戻る方法の話は別の日にするかね」


「!!!!」


その言葉に僕の心は覚醒した。


「聞かせて下さい!」


バン!と体が跳ね起き僕は食い入る様に前へ飛び出した。


「カウルさん……」

「ふふ、随分元気……いや健気じゃないか」


ラミさんは僕が一番知りたがってる事を話してくれました。


「カウル君が元の世界に帰る方法だけどね」

「結論を先に言うとセイラ君が仕える『モデラ王国第三王女』で通称『歩みの聖王女』と呼ばれてる『リフル』様を開放すれば元の世界に帰れるよ」

「何故なら君がこの世界に呼ばれた理由だからさ」

「開放と言う事は何処かに幽閉されてるのですか?」

「まぁ、ある意味合ってるよ」

「聖王女の魂は自身の肉体の奥深くに封印され、今は邪悪で身勝手な魂が彼女を乗っ取ってるのさ」

「そんな!他人の体を乗っ取るなんて……酷い」


(その方を助ける事が僕の役割。そしてセイラさんの願い)


「ラミさんお願いです。その方や悪い奴の事詳しく教えて下さい」

「ふふ、良い心がけだ。ではまず聖王女は……」


「待てラミ」


ラミさんの言葉をセイラさんはびっと遮りました。


「リフル様の事は私が話す」


話を遮ったセイラさんは痛い程ぐっと拳を握り締めてました。


「そうかい……ならよろしく」


どうぞと手を振りラミさんは会話のバトンをセイラさんに渡しました。


次回『セイラと聖王女』

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