第9話 魔女の導き
「ラミ確認をしたいのだが私は試練を完遂したのか?」
「ふふ、君があそこで何かを得て戻って来れたと言うならそういう事になるね」
ラミさんはニヤニヤと笑みを浮かべならがヒョウヒョウと言葉を連ねます。
「さてと此処に居てもしょうがない」
「私の住処にいらっしゃいな」
ラミさんはそう言ってクイクイと手招きすると森の中へ歩き出したました。
僕はラミさんを後目にセイラさんに耳打ちしました。
「見た目の事を言うのは失礼ですけど……あの人は信頼できるのですか?」
「……彼女に対する風評や噂はあまり良い事は聞かない……でも」
「今の私では彼女の様なはぐれ者しか頼る事が出来なかったんだ……」
そう呟くセイラさんの顔は哀愁を滲みませた辛そうな表情でした。
「何してんのーー早く来なって」
話をしてると先に行ってしまったラミさんの声が遠くから聞こえてきました。
「ラミの言うとり此処に居てもしょうがない……行こうカウルさん」
そう言ってセイラさんはラミさんの後を追って行きました。
「セイラさんが言うなら……」
僕はセイラさんに引っ張られる様に歩幅を合わてました。
ラミさんの後ろを行く最中僕はある疑問が浮かびました。
「ラミさん聞きたい事があるのですが」
「なんだい?」
「僕ラミさんに対価を渡してないけどこのままついて行ってお世話になっても良いのですか?」
僕の問にラミさんはくるっと僕達に向き後ろ歩きで、へらへらと笑いながら当たり前の様に答えました。
「はは、おかしな事を言うね?」
「君はセイラ君の『物』だろ?」
「カウル君の世界じゃぁ主人の代わりに物が対価を支払うのかい?」
「おいラミ!!!」
森中にセイラさんの怒号が響きました。
「さっきからなんだそのもの言いはなんだ?!」
「彼女は物なんかじゃない!失礼な事を言うな!」
「おぉ、怖」
「でもまぁ、君に関してはセイラ君が責任を持ってもらうから気にする事は無いよ」
「ねぁ、セイラ君」
「分かってる!済まないカウルさん余計な心配をさせてしまって」
「そんな……気にしないでください」
「それとありがとうございます……セイラさん」
ダンジョンの時の発言が気がかりでしたが、セイラさんの事を思うと僕はこれ以上話を広げる事は出来ませんでした。
(それにラミさん……僕の世界の事を知ってる?)
(それなら元の世界に戻る方法も……)
「おや、おやカウル君。悩んじゃってそんなに気になる事があったのかい?」
「え!えっと……」
「例えば……元の世界に戻る方法でも考えてるとか?」
「知ってるの!?」
まるで見透かされた様に僕が聞きたい事が飛び出しました。
「当たりかい?でもまぁ、そりゃそうだろ」
「なんせ身勝手な願いで勝手に連れてこられたんだね」
「なぁ、セイラ君よ」
「…………」
それを聞いたセイラさんは苦虫をかみつぶしたような辛い表情を見せました。
「僕は……セイラさんの様な素敵な方に出会えてとても嬉しかったです」
「カウルさん……」
「ふふ、そうかい。なら彼女と一緒に世界に居つくのもありじゃないかい?」
「…………」
それについて僕は返答する事が出来ませんでした。
「……何だいもう少しで着くのに、暗い感じになっちゃたねぇ」
「それじゃ今度は私が話をふるよ」
「なぁセイラ君。君は気にならなかったのかい?」
「いきなり何だ?」
「いやさぁ、カウル君はずっと自身の事を『僕』って呼んでけどけど本人は女の子でしょ?」
(その話は?!)
「何でかなって思って。セイラ君はどう思う?」
はっとしてる僕の横でセイラさんは首をかしげ少しの間考えこんだ後、自身の考えを言いました。
「ダンジョンに居た時はその様な些細な事気にする余裕なんて無かった」
「それに自身をどう呼ぶかは本人の自由だし、それもカウルさんの個性だろう」
「カウル君どうなんだい?」
此方に答えを求めてきたラミさんに僕は胸をはってその真実を答えました。
「それはご主人が『君は僕の方が良いね』って言ってくれたからです!」
「たから僕はずっと『僕』なんです」
「はは!何だいそれ」
それを聞いたラミさんはゲラゲラと笑いました。
「もう個性と言うより癖って感じだね」
「ラミさん僕の大切な思い出を……それに今のご主人の事馬鹿にした」
僕の内からぷつぷつと怒りの火花が弾けました。
「僕の事は良いですけど、ご主人の事を悪く言うのは止めて下さい!」
「ごめん、ごめん、違うんだよ。でもまぁ……ふふ」
「あぁ、また笑った!やっぱり馬鹿にしてる!」
「愛されてるなって思っただけさ」
「え!?……」
「だってそうだろ?バイクにわざわざ名前を付けるなんて、持ち主は君に相当の愛着を持ってるはずさ」
「ま、まぁ……愛されてるのは本当ですけど……ラミさん嫌な感じです」
「は、は、は!」
「また笑った!」
「おいよせラミ!」
「おっと、ごめんよ。でも君は本当に素直で良い子みたいだね」
「そうだ良い事を考えた!」
ラミさんはぽんっと手を叩き閃いたって顔をしました。
「カウル君。セイラ君から乗り換えて私の物にならないか?」
「そして君の純真で捻くれたこのお心を癒してくれいないかね」
「お断りします」
「それは許さん」
「二人同時にそれかい。は、は、は、残念だ」
そう言ってラミさんは再びゲラゲラと笑いました。
「……おっとほら見えたぞ」
「我が根城が!」
ラミさんの示す先。
其処には木と一体化してる絶妙な形をしたツリーハウスがあった。
「すごい……ご主人が話してたゲーム世界の建物みたいだ」
「そうだろうすごいだろう。さぁ入った入った自分の家だと思ってゆっくりするといい」
ラミさんはそう言って僕達を家へ招き入れてくれました。
次回 『魔女の家』
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