第175話 白熱の中盤戦
「ふん!」
腕を組んで椅子に反り返るタイル公爵。
気分を害したみたいだ。
「それでは話を続けさせていただきます。もう一度言います。問題になっているのが、タイル公爵がオリビア・バラスをジョージ伯爵の側室にどうかと提案した事です。先程説明したとおり
物凄い勢いで立ち上がるタイル公爵。そのまま鬼のような形相でベルク宰相を睨む。
おぉ! 怖い怖い。
「そんな馬鹿な事があるか! エクス帝国の貴族として褒められこそすれ、非難される
「タイル公爵。エクス帝国政府は
「そんな馬鹿な事があるか! こいつは一伯爵だぞ! そんな扱いは公爵家より上、いや皇室より上の権威じゃないか!」
「何を言っているのです? 当然じゃないですか。ジョージ伯爵がその気になればエクス帝国の全国民が全滅しますよ」
鼻で笑うタイル公爵。
なんかムカつくな。
「誰がそんな金にもならん事をするんだ。それにコイツにそんな勇気があるわけないだろ。言っては悪いが宰相は人を見る目がないのではないのかね?」
「私は人を見る目には
「それならそんな危険人物を放置しておくのはどうなんだ? エクス帝国のためにも排除するべきじゃないのか?」
突然笑い出すベルク宰相。
笑い声が会議室に響いている。
「タイル公爵に私から質問をしますよ。どうやってやるのです? ジョージ伯爵は常時魔力ソナーを展開しております。通常の襲撃では上手くいかないでしょうね。可能性があるとすれば寝込みを襲うか、毒殺ですかね? 睡眠中のジョージ伯爵がどの程度魔力ソナーを展開しているかはわかりません。しかし睡眠中の襲撃でも対処されたらどうするのですか? 襲撃に失敗したら間違いなく手痛いしっぺ返しを食らいます。ジョージ伯爵を暗殺するならば、たった一回のチャンスしかありません。失敗が許されないのです。毒殺を仕掛けるのも難しそうです。悪意全開の人が周囲にいればジョージ伯爵は魔力の質で気が付くでしょう」
何か俺を暗殺する考察を始めたんだけど……。
あまり良い気分ではないな。ベルク宰相ってこんな事も考えているんだ……。
殺さないでね。お父さん。
「ジョージ伯爵を排除する事の困難さと危険性は理解した。しかしこんな事を認めていたら貴族制度の崩壊を招くぞ。ひいてはエクス皇室の権威が揺らぎかねない。その辺はどう考えているんだ」
「現在、ジョージ伯爵は国政に関与しておりません。そして過去においてエクス帝国政府に無茶な要求をした事がありません。また次期皇帝陛下になられるアリス皇女殿下との仲も良好です。ジョージ伯爵の存在でアリス皇女殿下の権威は一層高まるでしょうね」
「それはジョージ伯爵が
首輪プレイ!? 是非女王様でお願いします! オッサンでは困るわ。
飽きてきたのかな。どうしてもくだらん事を考えてしまう。それにしてもベルク宰相は随分とグラコート伯爵家に肩入れしているように感じる。
「首輪ですか。わかっていますよ。貴方がそれでオリビアをジョージ伯爵の側室にしようと画策した事は。ジョージ伯爵がオリビアに夢中になればいろんな事ができそうですからね。しかしそれはバラス公爵家の権益のための行動です。エクス帝国を考えての行動では無いですね。もしそうなったらエクス帝国政府としては注意しなくてはならない人物がジョージ伯爵から貴方に変わるだけです。そしてエクス帝国政府はそれを望んでいません」
タイル公爵は腕を組んで眼を瞑ってしまった。
不貞腐れたのかな? 何か嫌な空気だよ。止めて欲しいわ。
「それでは時間が限られておりますし、議題を進めさせていただきます。事前の聴き取りでジョージ伯爵からオリビアの側室の話は断りたいと伺っております。エクス帝国政府としても、この話は認めない方針です。オリビアを側室にする話は白紙としますがよろしいでしょうか?」
先程と同じ姿勢で微動だにしないタイル公爵。やっぱり
「特に反対意見もありませんので、オリビア・バラスがジョージ・グラコート伯爵の側室になる件は白紙に戻します」
ま、当たり前の結果だな。俺が嫌だと言えばオリビアが側室になる事はないか。
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