拾肆 二歳の分析
最初、青い顔で追いかけ回してきたメイドたちも見失うことに慣れてしまったのか、次第に必死さが削がれてきてしまったようだ。
いい機会なので無邪気な悪戯は飽きた
と言っても、メイドの面前で、それも図書室で魔法を使えばまた問題になるだろう。
日中は図書室で魔法書を読み込む座学。記憶の整理がてら気持ちたっぷり目に昼寝をし、夜は早々自室に引き上げて実践訓練をしたい。
余談だが、魔力操作による身体強化の応用で血管の拡縮や深部体温の調整ができ、これが比較的短時間で良質な睡眠を取るのに役立った。
しかし好き放題魔法を使えば例の探知網とやらで察知され、要らぬ追求を受けるかもしれない。
察知されないために何をすべきか。
そもそも探知網の仕組みは?
これは座学で得た知識で推察まではできた。
屋敷に張り巡らされているものは今世のセキュリティとしては定番に分類されているらしい、複数の機構を絡め常時発動型魔法として様式化された感知魔法だ。
恐らく動力源は魔石なる魔力供給物質。まぁ電源のようなものだろう。
やはりセキュリティ用だけあって詳細な構造までは書かれていなかったものの読み取れる情報から推察するに以下のような構造となっている。
①一定範囲を立法で指定する
恐らく屋敷の敷地内を一定の高度まで網羅していると思われる。
②範囲内の魔力の中から不自然な歪みや淀みを察知する
ベースになっているのは感知魔法という、魔力を感知・識別する系統魔法。
私は使えないので感覚は分からないが、レーダー探知機のようなものと仮定する。
③察知した魔力を識別する。
父の言を借りるのであれば、私の魔力は「不明の魔力反応」だったという。
つまり、まだ魔力を発現していない者を除き、屋敷に出入りする各個人の魔力は予め登録され識別できるようになっていると考えられる。生体認証のようなものだろう。
父の領主としての手際を考えるに、私の魔力はあの一件で登録され、識別できるようになっているはずだ。
一方で、あの日「不明の魔力反応」は私由来のものか曰く「禁書庫」由来のものかまでの区別はついていなかった。登録されたもの以外は何からどう生じたか詳細までは識別できないのだろう。
④異常を検知する。
あの日父は血相を変えて書庫にやってきた。書庫における「不明の魔力反応」を事前に異常と知った上であの慌てようだったのだ。
あの時は登録外の魔力だったから「禁書」とやらと区別がつかずそうなったようだが、登録済みの魔力でも量や質、使用する魔法の種類によってはひっかかる可能性がある。
考えられる機構としてはこんなところだろう。
広く魔力が普及しているからこそ、感知魔法という系統があるからこそ成り立つセキュリティである。
当初は理に適ったシステムだと思ったが、貴族家においてその館に導入されるほどに評価されているシステムにしては、魔力の隠匿によってそれを易々潜り抜けられているのが若干の気がかりではある。
これも調べている内に一つ収穫があった。
そもそも「魔力を隠匿する」という概念がどの書物においても触れられていないのだ。
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